A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

元亭主との共演を、15年ぶりに突然ロンドンで行う事に・・・

2015-12-15 | MY FAVORITE ALBUM
November Girl / Carmen McRae & Kenny Clarke・Francy Boland Big Band

40年代の初めモダンジャズの発祥の地で有名なミントンズプレイハウスには、パーカー、モンク、クリスチャン、ケニークラークなど、後のジャズの巨人達が集っていた。カーメンマクレーも最初はそこでピアノを弾く一人であったが、そこのハウスドラマーであったケニークラークと恋仲になり1946年結婚した。旦那の方は人気絶頂のドラマー、一方のマクレーの方はピアニストとしては芽が出なかった、歌手としてもまだ駆け出しであった。

そんな夫婦であったが、ケニークラークが1949年に浮気に走る。相手は何とイギリス出身の、後にランバードヘンドリックス&ロスで有名なアニーロス。2人の間には子供までできるが、結局は破局に。

マクレーはじっと我慢の夫婦生活を続け、その間歌手としての実力をつけベツレヘムでリーダーアルバム”East to Love”を出すまでに成長した。続くアルバム”By Special Request”では夫君ケニークラークをバックに従え、2人の仲も元の鞘に戻ったかと思われたが、翌年の1956年には正式に離婚する。

以後2人の間は友人関係が続いた様だが、仲良く一緒に演奏することは無かったようだ。というのも、マクレーが歌手として益々存在感を高めていった一方で、クラークの方は離婚後すぐにフランスに活動拠点を移していた。

マクレーもヨーロッパに行くことは多かったが、1970年11月にもロンドンを訪れていた。ちょうどその時、ケニークラーク・フランシーボラーンのビッグバンド(CBBB)も地元の有名なクラブ「ロニースコットクラブ」に出演していた。CBBBの実質的なディレクター&スポンサーといえば、まさにこのCBBBを誕生させたGigi Campiだが、このロンドン公演も彼が段取りをしていた。そして、彼がまた活躍をする。

マクレーがイギリスに居るのを知ると、カンピは早速カーメンマクレーとCBBBの共演を思いついた。マクレーとクラークにとっては、バイスペシャルリクエストから15年ぶりの共演アルバムとなる。

とはいってもCBBBはビッグバンド、共演のためには譜面が要る。マクレーもその頃のレコーディングはアトランティックで大編成をバックにしたものが多かったが、これはいわゆるビッグバンド編成ではなく、その譜面を持っている訳でもなかった。共演といってもジャムセッションとは違ってゼロからのスタートとなった。

早速フランシーボラーンがアレンジを行う事になった。普通であれば「無難に歌い慣れている何かスタンダード曲でも」と思うが、ここではメンバー達が書いたオリジナルが中心となった。 特に、ベースのジミーウッズが大活躍。サドジョーンズがモニカゼタールンドのために書いたアレンジはバスの中で書いたと言われているが、そこまで突貫工事ではないにしても、連日クラブ出演をしている中でのアレンジの用意となった。マクレーにしても全くの新曲、歌詞を覚える所からの準備が必要だ。結局、リハーサルの時間もたいしてとれない中でのレコーディングとなった。

ボラーンのアレンジは歌伴だからといって手抜きは無い。いつもの重厚なアンサンブルに、名手揃いのメンバー達のソロも適度にまぶされている。もちろんマクレーも、この迫力に負けない歌いっぷりだ。一点、エイトビートがある訳でもなくいつものCBBBのサウンドなのに、ボラーンのピアノが全編エレキピアノであるのが気になるが。

マクレーは、東京では、思いもしない弾き語りのライブアルバムを作ることになったが、ロンドンではこれも思いがけずに昔の旦那との共演に加え、新曲をビッグバンドの伴奏でという難問に、リハもそこそこでレコーディングとなった。
難解なビッグバンドの譜面を初見でこなしているプロの姿を見ていつも感心しているが、どのような状況でもアルバムまで作り上げてしまうマクレーのプロ根性には恐れ入る。
また、このようなマッチメイクをするプロデューサーの眼力と熱意も凄いものだと思う。

1. November Girl
2. Just Give Me Time
3. 'Tis Autumn
4. A handful Of Soul
5. Dear Death
6. I Don't Want Nothin' From Nobody
7. You're Getting To Be A Habit With Me
8. My Kinda World

Carmen McRae (vo)
Kenny Clarke-Francy Boland Big Band
Benny Bailey, Dusko Gojkovic, Idris Suleiman, Art Farmer (tp)
Ake Persson, Nat Peck, Eric van Lier (tb)
Derek Humble, Billy Mitchell, Ronnie Scott, Tony Coe, Sahib Shihab (reeds),
Francy Boland (p,key)
Jimmy Woode (b)
Kenny Clare, Kenny Clarke (ds)
Dizzy Gillespie (snare d)

Produced by Gigi Campi
Recorded in London November 3, 1970



November Girl
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