
「自分の感受性くらい」 茨木のり子
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
****************************************
(茨木のり子さん談 より抜粋)
実は、この詩の種子は戦争中にまでさかのぼるんです。
美しいものを楽しむってことが禁じられていた時代でしたね。
でも、その頃はちょうど美しいものを欲する年ごろじゃありませんか。
音楽も敵国のものはみんなだめだから、
ジャズなんかを ふとんかぶって蓄音機で聞いたりしてたんです。
隣近所をはばかって。
それに、一億玉砕で、みんな死ね死ねという時でしたね。
それに対して、おかしいんじゃないか、
死ぬことが忠義だったら、
生まれてこないことが 一番の忠義になるんじゃないかという疑問は
子供心にあったんです。
ただ、それを押し込めてたわけですよね。
こんなこと考えるのは非国民だからって。
そうして戦争が終わって初めて、
あのときの疑問は正しかったんだなって わかったわけなんです。
だから、今になっても、自分の抱いた疑問が不安になることがあるでしょ。
そうしたときに、
自分の感受性から まちがえたんだったら まちがえたって言えるけれども、
人からそう思わされてまちがえたんだったら、
取り返しのつかない いやな思いをするっていう、戦争時代からの思いがあって。
だから「自分の感受性ぐらい自分で守れ」なんですけどね。
一篇の詩ができるまで、何十年もかかるってこともあるんです。
*****************************************
時代に翻弄されながらも、自分の足で立ち続け、
自分の言葉で語り続けた人なのだと思う。
******************************************
3月4日・5日のお料理教室のお席が1席ずつあります。
良かったらこちらをご覧ください。
それから、「ぶきっちょワークショップ」のお知らせも是非ご覧ください!
本当に楽しいです。
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
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(茨木のり子さん談 より抜粋)
実は、この詩の種子は戦争中にまでさかのぼるんです。
美しいものを楽しむってことが禁じられていた時代でしたね。
でも、その頃はちょうど美しいものを欲する年ごろじゃありませんか。
音楽も敵国のものはみんなだめだから、
ジャズなんかを ふとんかぶって蓄音機で聞いたりしてたんです。
隣近所をはばかって。
それに、一億玉砕で、みんな死ね死ねという時でしたね。
それに対して、おかしいんじゃないか、
死ぬことが忠義だったら、
生まれてこないことが 一番の忠義になるんじゃないかという疑問は
子供心にあったんです。
ただ、それを押し込めてたわけですよね。
こんなこと考えるのは非国民だからって。
そうして戦争が終わって初めて、
あのときの疑問は正しかったんだなって わかったわけなんです。
だから、今になっても、自分の抱いた疑問が不安になることがあるでしょ。
そうしたときに、
自分の感受性から まちがえたんだったら まちがえたって言えるけれども、
人からそう思わされてまちがえたんだったら、
取り返しのつかない いやな思いをするっていう、戦争時代からの思いがあって。
だから「自分の感受性ぐらい自分で守れ」なんですけどね。
一篇の詩ができるまで、何十年もかかるってこともあるんです。
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時代に翻弄されながらも、自分の足で立ち続け、
自分の言葉で語り続けた人なのだと思う。
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3月4日・5日のお料理教室のお席が1席ずつあります。
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