9月10日から一週間ほどは自殺予防週間とされています。
この時期、夏休み明けでクラスになじめずに不登校になる子や、夏バテ気味から回復できずに仕事で不調をきたす社会人も多いからです。
かくいう私も16歳で高校を不登校になり、2年留年したのち復学した経緯があります。
大学在籍時でも身内が急逝して授業に出られなくなり、卒業が危ういときもありましたし、院進学してからも研究生活で引きこもり気質に拍車がかかり。さらに社会人デビューしてからも紆余曲折のキャリアを歩んで、挫折、絶望、の連続でもありました。そのわりには、ブログ日記でも書いている通り、オタク活動などで楽しんではいたわけですが。
誰にでも人生の迷いがあり、たちどまってしまう時があります。
そんなとき、長い夏休みをもらったものとして、息抜きに体を動かしたり、読書をしてみたりしてみるのがいいでしょう。他人の考え方に触れることで、新しい人生が開けることがあります。
私は現在、個人事業および兼業会社員として暮らしていますが。
そこに至るまでにトラブルが重なり、30歳前後のときは、もういっそ…と思い詰めた時が何度もありました。早くに亡くなった家族を怨み、付き合っては裏切られた相手を呪い、同居の家族ともギクシャクした日々もあります。職場の人間関係で仕事は何度も失い、コロナ以前に月次決算で赤字になったときは生きた心地がしませんでした。
私が慰めになったのは、ブログ上でのアウトプット活動。そして、読書でのインプットです。
じっさい、現在の勤め先の総務経理事務職につけたのも、図書館で出会ったビジネス本などがきっかけでした。時間が有り余っているのならば、本を読み漁って、自分の思考をアップデートしておくことです。
これまでの読書遍歴のなかで、この本に救われたということが何度かありました。
「死にたくなったら読みたい本」のような記事をネット上で書かれる読書ソムリエの方は多いものですが。各自の読書傾向により選書の好みが違ってきますよね。
私は個人的には、ダイレクトに「気持ちが軽くなる」「うつ病になったら」みたいなことがタイトルに掲げてあるような本は、効能によしあしがあるので、あまり参考にしません。
原則的に、疲れてしまったら、たとえおちゃらけ漫画だとか、オタク向け同人誌のような、なんでもいいので、自分の気分が明るくなるものを読むべきで、それは自作したものでも構わないのでは、と思っています。
以下に、私が「死にたくなったら読んでみたい本」をピックアップしていますので、ご参照までに。
・ヴィクトール・フランクル『夜と霧』
言わずと知れた名著です。ナチスのアウシュビッツ収容所送りにされた著者がその日々を切々とつづったもの。全編しっかり読むと、収容所内の悲惨さに精神がやられますが。フランクルが悟りを開いたような部分は何度読み返しても感動します。
・吉川英治『宮本武蔵』
ただの剣豪チャンバラ時代劇小説と侮るなかれ。無職無益の牢人で粗忽者だった武蔵(たけぞう)少年が、様々な師との出会いや武者たちとの格闘を通じ、人間として成長していく様をみごとに描き切った、吉川英治畢生の大作。芸術家としての素質も開花させながら、求道者として剣技を磨き、人格を養う武蔵と、高慢なエリート美剣士小次郎。さらには、彼の幼馴染であった又八のダメンズぶりや、仇討ちに、恋に猛進する女性陣などなど、群像劇としてもすこぶる面白い。
・手塚治虫『どろろ』
生まれながら五体不満足な主人公と、彼につきそう生意気小僧との旅路。手塚作品は「火の鳥」シリーズや「ブラックジャック」「ブッダ」など名作が多いのですが。和風ファンタジーが好きな私はあえてこれを推したい。次点で『アドルフに告ぐ』ですね。
・遠藤周作『悲しみの歌』『深い河』『沈黙』
敬虔なキリスト教信者でもあった遠藤の作品には、イエスの再来かと匂わせる不思議な人物が登場します。明確に悪人になりきれないが人間としての迷妄に苦しむひとたち。イエス・キリストの足跡を追った小説や、渡欧したものの江戸期の鎖国政策の犠牲になってしまった武士の悲劇を描いたものなど、言い知れぬ哀愁が漂う作風が持ち味。近年発見され刊行された自伝的小説は、母への鬱屈した愛情を吐露したものですが、私には合いませんでした。
・トルストイ『戦争と平和』
この夏、超速読みで挑戦してみた古典文学の大作。フランスのナポレオンによる侵攻により、戦争のただなかで階級が崩れ優雅な暮らしを失う帝国ロシアの貴族たち。主人公格のピエールがかつて心酔したナポレオンですら暗殺未遂をはたらき、捕虜になったあとで、愛と平和に満ちた妻と結ばれ、「命あればこそ、幸せもある」と語るあたりは、胸に迫るものがあります。妻を愛せなかった青年将校の死に際の悟り、爵位を捨て農場主として逞しく生きる貴族など、戦争を機に生き方を変えた人など、複数の人生が錯綜する読みごたえある大長編。ロシアのウクライナ侵攻を契機に挑戦したものでしたが、多くの為政者がこの本を読めば、戦争が引き起こす結果が貧富問わずに国を破壊する愚行なのだと気づくでしょうに。
・アランの『幸福論』
幸せとはなにかを追求した名文家アランの随筆を、ディスカバリー社のコンパクトな抜粋版で読んでみました。同じ版元の「超訳ニーチェの言葉」もおすすめです。好きなページから読める手軽さがよい。
・デール・カーネギー『人を動かす』『道は開ける』
現在、書店にならぶほとんどの自己啓発本の源流にあるのは、カーネギーか、スマイルズの『自助論』か。ナポレオン・ヒルの本とか、コヴィーの『七つの習慣』とかいろいろありますが、うさんくさいビジネスセミナーに通うぐらいなら、この本を図書館で借りて読んだ方が気が楽になります。人間関係でお悩みの方向けに。
・上橋菜穂子『精霊の守り人』シリーズ他
最新作もよいのですが、やはり上橋ファンタジーの原点といいましたら、これ。おなじく女性が主人公の『獣の奏者』もそうですが、不思議な能力の持ち主ながらも、その力によって運命を乱されつつ、切り開いていく姿は勇気をもらえます。児童文学ですから、あまり同人っぽさがないのがよいですね。
・荒川弘『鋼の錬金術師』
漫画でおススメするなら、やはりこの作品ですね。世界的な人気作ですから、もう説明は不要でしょう。私は連載中に追うのを飽きてしまい、再度のテレビアニメ化でラストを知って完結して十年以上になってから読破したのですが。もっと早くに読み終えておけば!と後悔したものです。少年漫画なので陰惨なバトル描写もあるけれど、ラストのお話がとても爽やかですね。時間があればまとめ読みしたい名作です。
ほかにもまだまだ紹介したい本はあるにせよ、レビューが苦手なので。
この年になると、あまり冒険せずに、読書時間も貴重なので、古典と呼ばれるものに押さえておきたい意欲が高まってきました。けっして教養ぶったりするわけではなく、人生の支えになるような言葉を自分の胸に刻みたいからなのです。
(2022/09/03)