陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

姫子と千歌音の人生いろいろ、愛はもろもろ(前)

2020-10-16 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女

毎年10月になると色めき立つ。それは神なき月にも、お祭りが催されるからです。
今年2020年は神無月の巫女16周年、そう転生してから16歳の誕生日。そして、ウェブノベル「姫神の巫女」も漫画版が連載スタートして、盛り上がっています。ひめちか成分が足りなかったここ数年がうそのようです。世知辛い世の中で枯れた葉っぱも、みごとに生き返ります。

さて、今回のテーマは、姫子と千歌音のいろいろ形態。名付けて、ひめちか三昧。
神無月の巫女の原作者・介錯先生は、手塚治虫ばりにキャラを使いまわすことでも知られています。いわゆるスターシステムで顕著なのが、この姫子と千歌音のコンビ。神無月の巫女ファンには嬉しいからくりなのですが、では、彼女たちの歴史をここで振り返ってみることにしましょう。今回はひめちか尽くし! 時系列順に追ってみましょう。



「超絶対無敵美少女天使 エンゼル・ハート」(1997年)
2009年5月ごろ介錯先生のブログにあったものです。ピクシブに投稿された覚えがあります。後年描かれたので、掲載当時と絵柄が異なります。
実はこの作品、未確認なので、どんな役回りなのか、性格なのか、詳細不明です。現在絶版になっているし、電子書籍化もされていないので入手は厳しそうです。姫子は食いしんぼなのかな? ちなみに「姫子」は主人公の名前ですが、この外見ではないみたいですね。千歌音似も名前が違うようです。ネット上にはレビューがありますが、百合っぽいお話みたいですね。一巻で終わったらしい。 (参照「百合とオレンヂ城 2007/02/27」)。しかし、実は半世紀近くまえに、ひめちかの原型ができあがっていたなんて、もうびっくりです!!





「十字架トライアングル」(2001年~2002年)
神無月の巫女の前身作としてよく知られている作品です。黄金律の星のもとに生まれ変わった運命のヒロインが、闇の魔人たちと戦う。少女ふたり+少年の三角関係、しかも制服が乙橘学園そっくり。ペンタッチの繊細な絵柄で、姫子こと来栖守(くるす)はしっかり者ヒロイン。千歌音こときらはは、姉御肌なのですが、親友への秘めたる想いのために悪落ちします。そのあとの変貌ぶりが美しく惚れ惚れします。一巻のみで未完なのですが、世界観としては面白い。あまり強調されてはいないけれど、大神の前世からすれば、異世界転生ものだったんでしょうね。本作は電子化されていませんが、紙本は中古ではまだ販売されています。




「神無月の巫女」(2004年~2005年)
風光明媚な村で暮らす平凡で内気な女子高生・来栖川姫子。そして学園の人気者のお嬢様・姫宮千歌音。そして、恋に一途な勇気ある少年・大神ソウマ。ある日、学園を襲う巨大ロボットの出現で彼らの日常が壊れ、残酷な運命の輪が回りだす…。説明するまでもないですが、百合の黎明期ゼロ年代に革新的なストーリー展開と心理描写でファンの心を掴み、いまだなおマニアックな人気を誇る百合のレジェンド。海外人気も高く、SF雑誌の百合特集でも紹介されました。原作漫画は全二巻、アニメは1クール12話だけです。なお現在、紙本は絶版になっていて、電子版でのみ購入できます。できたら復刻してほしいものです。

じつは本作だけでも、ことなった姫子と千歌音が登場します。




・現世の姫子と千歌音
物語開始時点、16歳の誕生日からスタートした同級生。姫子は孤児でクラスではいじめられっ子の泣き虫、千歌音はカースト上位の才媛。かなりの格差カップルです。でも、最終回に見せる姫子の変貌と千歌音ちゃんの儚さは涙を誘うことまちがいなし!




・転生後の姫子と千歌音 その1
アニメ最終回Cパートに、都会の交差点で再会したふたり。姫子はセミロングで大人びていますが、千歌音ちゃんはやや若い? 二次創作SSでは姫子が大学生か社会人で、千歌音が中学生とかいう設定もありましたが、真相はどうなのでしょうか。さすがに16歳差とかちょっと…(笑)。なおこの絵柄はDVD-BOX新装版のブックレットですね。




・転生後の姫子と千歌音 その2
原作漫画ではラストが異なります。そしてコミックス最終巻には、連載時にはなかったおまけが。転生後のふたりは双子の姉妹。かなり仲睦まじいようです。お揃いのブレザーの制服もなかなかいいですね。この設定の原作者の同人誌もあったようです。この姉妹百合設定はのちにある作品でもくりかえされることに。あと、この双子の両親がソウマとマコちゃん(早乙女真琴)という設定の二次創作SSを読んだことがありますが、意外とありえる…?




・前世の姫子と千歌音
アニメや原作漫画でちら見せだった姿。原作者によれば、80年前の大正時代とされています。作中では姫子と千歌音と呼んでいますが、前世時もその名前だったのでしょうか。介錯先生のHPで公開された同人誌ラフ絵によれば、姫宮邸のあのベッドがあるので、千歌音は病弱ながらも相当のお嬢様。姫子はやや明るく行動力のある性格。あの巫女服は、代々の陽の巫女、月の巫女が着ていたものなのでしょうか。なお、その同人誌は昨年リファインされてツイッターで公開されています。




「京四郎と永遠の空」(2007年)
タイトルからは想像できませんが、神無月の巫女の正当な続編と目されている作品。ただし、姫子と千歌音は脇役でしかも敵方。画家のひみこと、絶対天使ムラクモのかおん。最初から相思相愛なのだけれども、キスをするほど相手を滅ぼすという制約に悶絶します。しかも、二人の仲をひきさくミカという女主にも悲恋があるという。コミックスにあるアトリエ話は、DVDの特典映像(「逢瀬」)になっておりひめちかファンは必見! くれぐれも言っておきますが、このふたりはあくまでサブキャラです。メインは少年×少女2名の、ファンタジックなラブロマンスです(たぶん)。他にも過去の同作者の有名作品キャラが出てきますので、往年のファンには嬉しい。全三巻。アニメDVDは全六巻。




「絶対少女聖域アムネシアン」(2009年~2012年)
日本内外で世紀の日蝕ショーが見られたあの2009年に連載開始した、姫子と千歌音のアナザーストーリー。事故で両親と最愛の姉を亡くした来栖守姫子はシスター見習い。ある日、姉に生き写しの謎の美少女・千歌音と出逢い、世界の滅亡をかけた戦闘に巻き込まれていく。少年漫画らしいバトルやお色気要素たっぷりです。純度の高い百合を期待すると裏切られますが、ありうるべき姫子と千歌音の人生としては、まあ、こんなのもありかも。なおこの作品は、残念ながらアニメ化していません。なおこの作にも「複数の」ひめちがいますが、未読の方は確認してみてくださいね。「京四郎」のあのキャラも登場して、楽しめます。なんという私得! コミックスは全四巻。




「姫神の巫女~千ノ華万華鏡」(2009年~2014年)
アニメ神無月の巫女の脚本・植竹須美男が書き、介錯が挿絵をつけ、監督・柳沢テツヤが監修した、ウェブ無料公開のノベル。絶海の孤島に生れ落ち、命を捧げる儀式のために宿命の巫女であるふたり・皇月千華音と日乃宮媛子。ふたりの数奇な恋模様をつづった物語。神無月の巫女のふたりと比較して、倍増しになった愛憎劇ドロドロ展開に悶絶。嬉しくなったり、肝が冷えたり、いろいろ味わえます。一種の百合サイコホラーです。アニメ神無月の巫女10周年の2014年10月末に終了するという粋なフィナーレで話題になりましたね。美麗イラストが眼福ものです。




「姫神の巫女」(2020年~現在連載中)
ウェブノベルと原案として今年雑誌連載(「電撃マオウ」2020年5月号より)がはじまった漫画版。発表当時、サブカルニュースでもかなり話題を呼びました。ウェブノベルでも挿絵が多かったのですが、この漫画版ではよりアニメ神無月の巫女に近づくように工夫がされています。媛子の甘えとしたたかさ、千華音の生真面目さと脆さ。そして、いちばんの驚きは「あの彼」! なかなか不気味な役どころ。そろそろコミックス一巻が出そうですね。できるだけ長く連載してほしいです。


それにしても、ひめちかの原型がかなり前から生まれていて、何度も何度も転生し、やっと日の目をみたのが神無月の巫女だったというのが驚きです。原作者先生は、よほど、彼女たちを再生したかったのでしょうか。いまでは、海外にも知られ、百合ジャンルを代表するカップルになりました。いくらスターシステムだからと言いまして、ここまで何度も描きあげたのは真実すごいとしか言いようがありません。絵柄も現代風に進化してきました。

さて、じつは上記以外にも。
私が知る限りでは、「もうひとつ別の」姫子と千歌音がいます。
次回は、それについてフィーチャーしてみましょう。



【関連記事】
『神無月の巫女を探せ!コレクション~姫子と千歌音ちゃん総出演~』(アニメソング綺譚(きたん)~レビューの覇道~ 2007/02/15)

黒髪ロング×茶髪のペアを見ると神無月の巫女病が発症します。近作だと「Citrus」(姫子というキャラがいる)とか「やがて君になる」(どちらかというとマリみての祥子×祐巳か?)ですね。ぜったい狙ってキャラデザしていると私は思いました。百合学園ものの生徒会設定は、「少女革命ウテナ」もとい「お兄さまへ…」からの流れなのか。

*漫画「絶対少女聖域アムネシアン」&ウェブノベル「姫神の巫女」、そのほか関連作レヴュー一覧*
漫画「絶対少女聖域アムネシアン」および、ウェブノベル「姫神の巫女」、そのほかの漫画などに関する記事です。

★★神無月の巫女&京四郎と永遠の空レビュー記事一覧★★
「神無月の巫女」と「京四郎と永遠の空」に関するレビュー記事の入口です。媒体ごとにジャンル分けしています。妄言多し。


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