陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「史上最大の作戦」

2010-08-13 | 映画──SF・アクション・戦争
1962年のアメリカ映画「史上最大の作戦」(原題 : The Longest Day)は、ノルマンディー上陸作戦に参加した連合軍とドイツ軍との熾烈な攻防を克明に、しかしときにシニカルに描いた有名作。しかも、米英仏そして独の四カ国の実力派俳優を揃えたという、なかなか豪華なキャスティング。
モノクロのため軍服で判別がつきにくく、群像劇のために各自のエピソードが集散し、中途半端なところで終幕しているような感じもしますが、戦争の緊張感を伝える効果はありますし、訓戒じみたメッセージ色はありませんが、さりげなく戦争の虚しさを語るものでもあります。

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1944年の6月。
パリを占拠したドイツ軍は、英米軍を中心とする連合軍側の反攻作戦を予想してはいたが、折からの悪天候でないものと甘くみていました。
しかし、北部のカレーから侵入すると思われていた連合軍の大船団は、南下してノルマンディのオマハビーチに上陸。それに先駆けて、アメリカの空挺部隊がパラシュートで降下して陽動作戦に出ていたため、ドイツ軍の指揮系統は混乱し圧倒的な敗北をもたらす。

製作国の米国の軍事力を鼓舞するような描写はめだちますが、敵味方とも非常事態にかかわらず、どこかのんきに構えているフシが感じられもします。ドイツ軍がわは総統のヒトラーや元帥が休暇中で戦車も動かせない。いっぽう、連合軍側も物量作戦と奇襲で先制攻撃をかけたとはいえ、勝利は偶然の産物。落下傘部隊は予定降下地点が分散したために兵力としてはまとまりを失ってしまうのですが、逆にそれがドイツ軍の情報撹乱をおこすのに奏功してしまうのです。

のちに、このノルマンディ上陸作戦は、「プライベート・ライアン」の冒頭で流血夥しい激戦として描写されますが、本作はモノクロのせいか、口笛ふうのBGMのせいかどこかユーモアが漂う、ふしぎな戦争映画。
「プライベート・ライアン」のトム・ハンクスの顔つきは、どことなく西部劇の大スタージョン・ウェイン演じる空挺部隊の指揮官を意識していたように感じますね。

原作はコーネリアス・ライアンのベストセラー小説。
ベンハルト・ピッキィ、アンドリュー・マートン、ケン・アナキン、エルモ・ウィリアムスという四監督が演出を手がけていまして、作風の違いからか微妙なコラボレーションが生まれています。激しい戦闘シーンがあれば、間の抜けた日常のドラマもあって、緊張感が抜かれてしまうんですよね。
私がみごたえがあった部分は、フランスのレジスタンス活動家の暗躍。本作でデヴューした女優のイリナ・デミックはルポライターでたまたま取材にきていたらスカウトされたそうです。

しかし、こんなどでかいスケールの軍事力を抱える相手に日本はよく戦いを挑んだものだと思いますね。当時の日本海軍は最強と謳われていたというけれど、日露戦争での奢りが半世紀間くすぶっていたとしか思えません。

(2010年3月18日)

史上最大の作戦(1962) - goo 映画

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