米国発の黒人系にして女性副大統領が誕生したのは昨年のこと。
いっぽう、日本では女性全体の社会進出はすすんだものの、リーダーとして抜擢される例は少なく、いまだガラスの天井があるとされています。しかし、世界には、女性が自由に肌を見せるような服を着ることもできなければ、嫁いだ男性の言いなりで人権を侵害されてしまう国もあります。
1994年の映画「女盗賊プーラン」は、「盗賊の女王」と世間を震え上がらせた実在の人物プーラン・デヴィの半生を映像化したもの。
幼少時からの差別と虐待への復讐を胸に秘め、社会を変えるべく決起した女性闘士のお話と聞いて楽しみにしていましたが、期待はずれでした。
事実に基づいているんでしょうけど、とにかくヒロイン、プーランの過去が悲惨の極みとしか言い様がないです。
11歳で中年男に嫁がされて以来の度重なる性暴力、辱めを受ける。彼女は低いカーストの家に生まれたため、村でも味方がいない。
盗賊団に入って恋人をみつけるも、殺され、また暴力の嵐。
憎悪を糧にして金持ちの家を襲う暴徒と化してしまう。
とにかくほとんどのシーンが、ヒロインへの暴力的描写、女性蔑視の発言に満ちていて痛々しい。そして、ヒロインもなぜだか自分のことを女神と称していて、自伝らしい自己賛美も感じられるのであまりいい気はしない。
原作は世界的なベストセラーだそうですが、ゴシップ好き、スキャンダル好きの先進国の人を楽しませただけではという気がします。
当時のインドをふくむ途上国の女性が身分制度、女性差別の二重の差別に苦しめられたことはわかるのですが、何十人もを私怨からとはいえ、虐殺した殺人犯で政治家になった人の伝記。なんというか、もっと信念みたいなものが描かれていればよかったのですが、まったくそうでもない。
なお、この映画本人自身から、真実に反するとして訴えられ、インド国内では上映禁止にされたらしい。
プーラン・デヴィはニ度来日したことがあるが、2001年に暗殺されたという。
監督は「エリザベス」「サハラに舞う羽根」のシェーカル・カプール監督。そういえば、「サハラ~」もあまり面白くなかった。
インド映画は「ディル・セ 心から」「ムトゥ踊るマハラジャ」のような、明るいミュージカル風のものが好みですね。
(〇九年八月二十八日視聴)
女盗賊プーラン(1994) - goo 映画