陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

敬老の日にオススメしたい映画「黄色いリボン」

2023-09-15 | 映画──SF・アクション・戦争

1949年の映画「黄色いリボン」は、インディアンに脅かされたアメリカ西部に駐屯する小隊を描いた西部劇。タイトルからして、「ひまわり」のように戦争で生き別れになったうら若き男女の悲恋を想定していたのですが、じつは、なかなか骨太な西部劇。主人公は渋い老軍人です。「敬老の日」にお勧めしたい映画ですね。

1876年、インディアンの部族が結託して、合衆国各地の駐屯地を襲っていた。
スターク砦を守る、歴戦の猛者ネイサン・ブリトルズ大尉は、あと六日でお役御免の身の上。最後の任務はシャイアン族の掃討作戦の指揮だったが、将軍の妻と姪オリビアを東部行きの駅馬車に乗せるまで護衛することになってしまう。
美しく気が強いオリビアがアプローチしていたのは、赴任したばかりのペネル少尉。しかし、オリビアに秘かに惹かれているコーヒル中尉は、少尉が恋に溺れて士気を失っていることを口実にオリビアにけしかける始末。

インディアンの襲撃でオリビアたちを予定の駅馬車に乗せることもかなわず、また婦人の護衛が足枷となって、インディアン監察官の不正を発見しても取り締まるチャンスを失ってしまうネイサン大尉。しかもオリビアを巡って、中尉とネイル少尉があわや決闘に。ネイサン大尉が仲裁にはいって、ふたりの矛は収まりますが、大尉はオリビアの想いがすでにコーヒル中尉のほうに傾いているのを知っています。

ネイサン大尉は、退役が明日に迫ったところで、オリビアたちを安全地帯に届けるべく、コーヒル中尉に前線で敵の注意を引きつけるように進言。その後、コーヒルたちに合流してインディアンとの本格戦に挑むつもりでした。しかし、上司からは
未熟者のネイルやコーヒルが統率力を発揮できないから引退を早めるようにとお達しが下ります。
コーヒルを待つオリビアのためにもコーヒル中尉を援護したいネイサン大尉は、おとなしく隠居するわけにはいかない。いち民間人として、インディアンの酋長と対話に臨むなど老練らしい戦い方で打開を図ろうとします。

インディアン対戦とはいっても、血みどろの殺戮を演じるわけでもなく、ネイサン大尉が一滴の血も流さず知略で勝利。インディアンの迷信を利用して追い払うことに成功します。しかも、軍からは規律違反どころでなく、昇格で迎えられることに。

力づくではなく勇気と知略で切り抜け、血気に逸る若者をなだめ、戦功を危ぶまれそうなったにもかかわらずご婦人には当たり散らさない。そして、なにより部下思い。ネイサン大尉のかっこよさに惚れ惚れしますね。

主演は、1939年の「駅馬車」以来、ジョン・フォード作品に登場が多い、アメリカの英雄的俳優ジョン・ウェイン。
「赤い河」「アパッチ砦」「静かなる男」が有名ですね。ネイサン大尉とインディアンの酋長がキセルを飲みあって旧交をあたためるシーンは、ベトナム戦争を描いた「プラトーン」で主人公がライフルでマリファナを吸うシーンを思い起こしました。
ヒロインのオリビアは、「赤い河」のジョアン・ドリュー。コーヒル中尉役には、ジョン・エイガー。

監督は「男の敵」「怒りの葡萄」「我が谷は緑なりき」「静かなる男」で四度のアカデミー監督賞を受賞した西部劇の巨匠ジョン・フォード。
息子のハリー・ケリー・ジュニアも俳優で、本作では頼りないおぼっちゃま少尉のペネルを演じています。

(2010年1月1日)



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