陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

妄想のすぎる二次創作者には、そこらへんの草でも食わせておけ!

2018-05-19 | 二次創作論・オタクの位相
最初に言っておきますね。
二次創作者というのは、原作者に対する対語です。説明するまでもないですが、他人さまのつくった土台に乗っかって創作をしている人間のことです。スーパーのできあいのお惣菜を買ってきて、ちょっとばかしこじゃれた皿に盛りつけて、自分を創作力あふれる料理人のように思っている者のことです。私もそんなしがない二次創作者のひとりです。

二次創作とは何か、みたいなことを追求しだすとキリがないですので、ここでは深入りはやめましょう。どうせ、後でぐちぐち書きますんで。

二次創作は、原作物に比べると、一段下に置かれた創作物ということができます。
その反論としてしばしば言われるのが、すべての創作は模倣(ミメーシス)からはじまるのだ、という高尚な芸術論であります。かような言説によって、二次創作者は創作をしている自分は尊いと思いたがるし、思わねばならない。

こうした虚栄心がときに、二次創作者をとんでもない自分語りへと走らせます。
制作した分量だとか、かけた時間数だとか、資料代にかけた金銭だとか、努力に見合う正しい評価だとか。この高尚な趣味を現実の社会労働と並ぶものだと考えなくては済まなくなります。結果よりもプロセス重視。ケーキの粉にまみれほっぺたにクリームをつけながら、黒焦げになったけど、がんばってケーキを焼いた自分を褒めてほしい、てへぺろ的な。ビジネスマンの考えではありません、残念ながら。

でもこれは疑似労働なので、りっぱな「お仕事」。更新が遅れたり、本として刊行できなかったりすれば、謝罪もせねばならないとまで考える。出来の悪いものが仕上がったりすれば、苦情を想定して先手打って頭を下げねばと気を揉む人までいます。

以前の私は、二次創作者がこんなふうに律儀に読者対応をするのを不思議に思っていました。
加筆修正しましたとか、リンク移動しましたとか、作品の状態に関わる連絡はすべきだけども、作者の進捗の報告はすべきなのだろうか、と。読者の感情は忖度すべきなのだろう、かと。

しかし、あるコミックスを読んでいて、ふと気づいたのです。
作者のあとがきとか、近況報告とか、ネタ漫画(しかも、自作のパロディだったりする)とか、漫画の単行本にはそれなりのオマケがありますよね。カバー外した本体にまで、描かれていたりする。取材旅行記とか、編集とのやりとりとか。これが、なんとも面白かったりして、下手したら、ストーリーの中身はすっかり忘れたのに、その余白の一コマだけ凄絶に覚えていたりするものです。

つまり、面白いものを描く人は上手に自分を見せるのがうまいのでしょう。
だいたいは道化じみているのですが、芸人のように、家族の恥部までうまくネタに昇華してしまえる。ファンタジーできらきらした恋愛を描いていた少女漫画家が、泥くさい育児漫画を描き出すとか。最近だと、介護漫画とか闘病日記漫画とかLGBT漫画などという、人生の見世物小屋的なジャンルもありますが、社会経験が重なってくると、夢物語を書いていた人ですら、脳がゆるゆるのエッセイストのようになっていくんです。若いころの見栄を張らなくなって、自分を隠さなくなってくるのかもしれない。まあ、これもそろそろ市場が飽和になっていますよね。数年後にブックオフで100円投げ売りされています。

創作って、自己慰めの孤独な作業だと考えていた自分には、この発見は驚きでした。
現実の世の中との関わり合いで満たされない自己セラピーの一種なので、二次創作者の妄言は、生あたたかい目で見守るか、目を逸らすかが賢明だと思っていたのです。好きで作ってんのに、苦しい言うんやったらやめたらよろしいやん(なぜか、突然京言葉)、ともうひとりの自分が言います。そもそも、創作はすでにあるものの模倣という論理をふりかざせば、二次創作は作者の独自性よりも、複製としての量販性が高いので、作り手の顔は見せてはいけないということになります。

このように考えるので、最近はあまり後書きとか前書きでだらだら書くのは控えようと思っていたのですね。でも、あんがい、本音をあからさまに語ってしまうのもいいか、と開き直りつつある今日この頃。ですので、この妄言、しばらく続きます。また、つまらないものを書いてしまった…(by石川五右衛門)。



【二次創作者、この厄介なディレッタント(まとめ)】
趣味で二次創作をしている人間が書いた、よしなしごとの目次頁です。
二次創作には旨みもあれば、毒もあるのですね…。



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