陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

漫画『神無月の巫女』 其の弐

2006-10-09 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女
「月には朽ち果てた社があるの…全ては其処から始まった」

アニメの柳沢監督もお気に入りだと仰る冒頭の台詞。アニメでは穏やかな日常から徐々に物語ははじまるのですが。原作の第一巻ははじまりも終わりも絶句です。トラウマになりそう…。


動く映像が目で追いきれない。アニメの平板な塗りやデジタルな描画が苦手。
活字媒体の文化に慣れ親しんだ自分は、どちらかといえば神無月の漫画のほうが好きだったりします。
アニメと比べて展開が甘いとか辛辣に評されていますけれど…。

確かにコミックス二巻は、ムラクモ復活あたりがドタバタし過ぎとか、いきなり巫女服に着替えちゃってる姫子(魔法少女ですか?)とか、姫宮翁の存在って一体?とか、翁の前に窓を通り抜けて登場する千歌音ちゃん(すでに人間じゃない)、さらに見開きページで謎の「創世王」宣言までなさる千歌音ちゃん(改造されたんでしょうか?)とか…いろいろ思ったんですが…そもそも少年誌にある緊迫のバトルシーンを求めなければよいわけで。
それはストーリーじゃない醍醐味があるんじゃないかな?

藤井まきさんの表情豊かで美麗な作画も、柳沢テツヤ監督の描く少し凛々しげな千歌音ちゃん(アニメディア読者応募の年賀状や絵コンテ集表紙のイラスト)もとても良いのですけれど。
アニメーターって基本的に作品に合わせて絵柄を調整しなければいけないので、その人の個性が現れにくい。一方漫画家は多少デッサン狂っているなと思えても、その人の特性だと納得できます。今の少年少女雑誌の連載作家って、一様にアニメ絵みたいな淡白な絵柄が多くて、ちょっとうんざりします。

単行本やDVDリバジャケのカラーイラスト。
往年の美少女漫画や竹久夢二の美人画を思わせる、耽美さ。
髪や衣服の襞の硬質な感じと、繊細な陰影。
透明感のある色遣いは、まるで彼女達の人生の儚さをものしているようです。
アニメだとセル画と背景絵の彩色や描線の違いが出て、立体的に見えなかったり。

…というか、原作はもう素晴らしく退廃的というか、悦楽の窮みというか特定の読者の心をくすぐる姫子と千歌音の名艶技・恍惚な表情なのが、もうたまらないです(爆!…結局、それかよ)


たぶんプラトニックな百合愛の信奉者であったり、アニメ神無月の姫宮千歌音のファンの方は、原作には眉をひそめるのではないかと。
アニメだと文学的名台詞を吐くストイックな悲劇のヒロインなのですが、原作だと翳の悪役ぶりを発揮する煩悩の人にみえます。ま、私は黒い千歌音ちゃん大好きですけどねー(笑)

アニメ版とは異なったラストを用意して、二重に楽しませてくれたのも嬉しかったですね。

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