「うん? おふたりさん、周囲から浮き上がるほど、なかなかいい雰囲気やからカマかけてみたんやけど?」
「いえ。おそらく、そのご想像はハズレかと」
「あれ、ちゃうの?」
シグナムとヴァイスの顔を見比べっこしつつ、はやてときたら、左右の人さし指をつつきあっているしぐさ。ふたり、デキてたんでしょ、という問いかけだ。
だとすれば、このふたり、なにをこそこそと広間の隅っこに座り込んで密談していたというのだろうか。
「そのご想像、いつか現実になるのを希望しているのが、ここに一名」
「ヴァイス、ふざけるな!」
ヴァイスがおどけて挙手したところ、背中回りで強烈な張り手が飛んできた。衝撃で、前へつんのめったヴァイスの首根っこを掴んで、シグナムが引き戻してやった。
――五分後。
かくかくしかじかと説明するヴァイスに、はやてが、ほほぉと相づちを打っていた。
「──ってことで、シグナム姐さんは俺の妹のプレゼント選びに付き合ってもらってたんスよ」
「なんや、そういう事情なんか。納得したで」
「主に要らぬ誤解を与えてしまったことは、お詫びします。それと僭越ながら、主への贈り物は用意しておりますので、ご心配なく」
「そうか。ほな、楽しみにしとくわ」
両脇にあるシグナムとヴァイスの腕を組み、はやてはすっかりご満悦の態だ。ほくほく顔で、ヴァイスの横顔にささやいた。
「ま、ヴァイスくんの方は大目にみといたるわ。なんせ、私の計画に協力してもらったんやしな。感謝、感謝♪」
「あれ、はやてさんが言い出しっぺなんスか? てっきり姐さんの発案かと。だって、姐さん、いきなり俺の胸ぐらつかんで『ヴァイス、お前の頼まれごとをしてやろう』って詰め寄られたんですぜ」
「こちらから一方的に請うのはフェアではないだろう。先に恩を売っておきたかっただけだ」
「ほな、ラグナのプレゼントの件も交換条件だったわけや」
「そのとおりです」
「酷いなぁ、本心から協力してくれたもんだとばかり」
「お前が言い出しにくそうだったから、こちらから切り出してやったまでだ」
ヴァイスをたしなめておいてから、シグナムははやての腕組みからそっと腕を抜く。
「しかし、主はやてが発案者だったのですか? 今回の件、私はそもそもテスタロッサから耳にしたのです」
「うん、なのはちゃんから相談されて。ヴィヴィオの父親参観日に、代理パパ派遣プロジェクトを練ったんは私やけど。そっか、フェイトちゃんも…。てことは、保険をかけといたんやな」
「…俺、保険だったんスか」
「そうだな、さしづめ、貴様は四輪駆動の予備タイヤということだ。主役が活躍している限りは、お前は車を動かすこともない。ただの飾りだ」
「五番目のタイヤって、…ひどい言い草っすね」
自分の顔を指さしたヴァイスに、隣の女ふたりがさも当然というふうに頷く。
【目次】魔法少女リリカルなのは二次創作小説「Fの必要」シリーズ