2006年のアメリカ映画「父親たちの星条旗」(原題 : FLAGS OF OUR FATHERS)は、太平洋戦争末期の硫黄島の激戦で英雄視された若者がたどる悲劇を描いた戦争ドラマ。クリント・イーストウッド監督が同年に発表した「硫黄島からの手紙」と二部作になっていることで有名ですね。「硫黄島…」とおなじく、あまり感動を覚えることのない作品でした。
1945年、硫黄島に上陸し勝利した米国軍が山の頂きに掲げた星条旗の写真が、アメリカ中を歓喜の渦にした。映っていた六人のうち、戦場から生還できたのは、衛生兵のジョン・ブラッドリー(通称ドク)、インディアンの血をひくアイラ・ヘインズ、そしてお調子者のレイニー・ギャグノンだけ。
三人は帰国早々、熱狂的に迎えられ英雄視されるが、戦時国債キャンペーンに担ぎ出されてしまう。
戦功をたてたというわけでなく、熾烈な激戦で戦死していった友の屍を多く見てきた三人にとって、祖国での凱旋は堪えがたいものになっていく。とくに悲惨なのはアイラで、英雄として振る舞いを強要されながらも、ねづよい人種差別の煽りをくらって酒に溺れていってしまいます。
いささかホラー色の強い凄惨な戦闘描写は「プライベートライアン」に引けを取らないものですが、実在の人物をモデルにした事実をベースにしているせいか、これといって驚くような展開のからくりがあるわけではありません。
最期をむかえた老人が過去を振り返るという手法もよくあるアプローチですが、本作の場合はけっして真相を明かそうとしない父に代わって、息子が真実に辿り着くんですね。この父と子の絡みを混ぜながらエピソードをふくらませると面白く感じはしたのですが。
余談ですが、私の祖父母も亡くなるすこし前に話してくれたのが、陸軍での訓練の厳しさや空襲の恐ろしさなど、戦争体験のことばかり。青春時代を戦争に奪われたのですから、人生のいちばんの想い出深い出来ごとには相違ないのですが。
この三人のように、戦争が終わってもプライバシーを侵されつづけ平穏な余生を送るに送れなかったというのも、ある意味、二次被害として悲しい犠牲者ではありますよね。もちろん、傷痍軍人や一家の大黒柱を戦争で失った哀しみのほうがより深いのですが。
本作は戦争の悲劇というよりは、メディアによって捏造されたスターが辿る悲劇という、より現代的なテーマを扱っているような気がします。
老年のドクことブッラドリー老人がいた部屋にあった日の丸は、きっと日本軍から奪った遺留品なんでしょうね。
出演は「クルーエル」「白い嵐」のライアン・フィリップ、「ロミオ&ジュリエット」のジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ。
原作はジェイムズ・ブラッドリー、ロン・パワーズ著『硫黄島の星条旗』
それにしても、「史上最大の作戦」がそうでしたが、第二次世界大戦に出兵した米国人青年たちは、狩りにでもいくような感覚で危機感がまったく感じられないんですよね。邦画で戦争を扱ったものが、必死の形相で悲愴感漂う若者を描いているのに比べると歴然の違い。これが国力の差か、と虚しくなります。
(2010年3月21日)
父親たちの星条旗(2006) - goo 映画
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1945年、硫黄島に上陸し勝利した米国軍が山の頂きに掲げた星条旗の写真が、アメリカ中を歓喜の渦にした。映っていた六人のうち、戦場から生還できたのは、衛生兵のジョン・ブラッドリー(通称ドク)、インディアンの血をひくアイラ・ヘインズ、そしてお調子者のレイニー・ギャグノンだけ。
三人は帰国早々、熱狂的に迎えられ英雄視されるが、戦時国債キャンペーンに担ぎ出されてしまう。
戦功をたてたというわけでなく、熾烈な激戦で戦死していった友の屍を多く見てきた三人にとって、祖国での凱旋は堪えがたいものになっていく。とくに悲惨なのはアイラで、英雄として振る舞いを強要されながらも、ねづよい人種差別の煽りをくらって酒に溺れていってしまいます。
いささかホラー色の強い凄惨な戦闘描写は「プライベートライアン」に引けを取らないものですが、実在の人物をモデルにした事実をベースにしているせいか、これといって驚くような展開のからくりがあるわけではありません。
最期をむかえた老人が過去を振り返るという手法もよくあるアプローチですが、本作の場合はけっして真相を明かそうとしない父に代わって、息子が真実に辿り着くんですね。この父と子の絡みを混ぜながらエピソードをふくらませると面白く感じはしたのですが。
余談ですが、私の祖父母も亡くなるすこし前に話してくれたのが、陸軍での訓練の厳しさや空襲の恐ろしさなど、戦争体験のことばかり。青春時代を戦争に奪われたのですから、人生のいちばんの想い出深い出来ごとには相違ないのですが。
この三人のように、戦争が終わってもプライバシーを侵されつづけ平穏な余生を送るに送れなかったというのも、ある意味、二次被害として悲しい犠牲者ではありますよね。もちろん、傷痍軍人や一家の大黒柱を戦争で失った哀しみのほうがより深いのですが。
本作は戦争の悲劇というよりは、メディアによって捏造されたスターが辿る悲劇という、より現代的なテーマを扱っているような気がします。
老年のドクことブッラドリー老人がいた部屋にあった日の丸は、きっと日本軍から奪った遺留品なんでしょうね。
出演は「クルーエル」「白い嵐」のライアン・フィリップ、「ロミオ&ジュリエット」のジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ。
原作はジェイムズ・ブラッドリー、ロン・パワーズ著『硫黄島の星条旗』
それにしても、「史上最大の作戦」がそうでしたが、第二次世界大戦に出兵した米国人青年たちは、狩りにでもいくような感覚で危機感がまったく感じられないんですよね。邦画で戦争を扱ったものが、必死の形相で悲愴感漂う若者を描いているのに比べると歴然の違い。これが国力の差か、と虚しくなります。
(2010年3月21日)
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