陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

猫の日に観たいアニメ映画「銀河鉄道の夜」

2020-02-19 | テレビドラマ・アニメ

宮沢賢治の詩は読んだことがあっても、児童文学はついぞ読んだことがなかった私は、「銀河鉄道の夜」がどういったお話なのかを知らないまま、うっかり大人になってしまいました。もし、それを子供の頃に読んでいたら、なにかが変わっていたでしょうか。いや、たぶん変わらない。なにせ、幼い時分の私は、こういった感傷的なものが大きらいだったからです。

さて、1985年作のアニメ版「銀河鉄道の夜」は、なんと主要登場人物を猫にしてしまったファンタジー。
猫といっても擬人化された猫ですから二本足歩行したり、服を着ていたりするのですが、どことなく腕の運びなどが猫のようにしなやかなのが、ふしぎな魅力。顔つきもほとんど表情のない吊り目の猫顔。

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病気の母と暮らす貧しい少年ジョバンニ。父親は北の漁に出かけたまま、行方知れず。
帰ってこない父のことを悪し様にいう級友たちのせいで、幼なじみのカムパネルラともなんとなく疎遠になっています。
星祭りの日、ジョバンニは母のために配達されなかった牛乳をとりに街を走る。カーニバル気分で歓喜に湧く広場を抜けてみると、いつのまにか、ジョバンニは夜空を走る列車に乗っていた。座席の目の前には、大好きなカムパネルラもいて、ふしぎな乗客達がつぎつぎに乗りあわせてくる。

乗客たちの大半も猫であるにもかかわらず、性格はひどく人間くさく描かれています。そして、最後に南十字星にむかう人間の子供ふたりと青年のくだりは、非常にもの悲しい。おそらくタイタニック号の悲劇に材を得たものと思われる。
そして、母親への懺悔を口にしていたカムパネルラ。ふたりっきりの親睦を温めなおし、このままどこまでもいっしょに旅ができると期待したジョバンニ。しかし、終局、友人に訪れた悲しい現実を知らされてしまいます。

銀河鉄道とはなんの隠喩だったのでしょう。銀河に敷かれたレールが人生そのものとするなら、どこかの駅に着くということは終わりを意味する。どこまでも行ける切符をもっていた者と、どこかで下車させざるをえない切符を持っていた者。カムパネルラを終わらせてしまったのは、自己犠牲。亡くした者と入れ替わりに、帰ってくる期待を手にしたことで、まだしもジョバンニの未来は救われています。

監督は杉井キサブロー。脚本は別役実。
声をあてているのは、田中真弓さんはじめベテランの声優陣です。

なお、「銀河鉄道の夜」に関わるアニメといえば松本零士原作の「銀河鉄道999」。
私は再放送でしか見たことがありませんが、メーテルさんて、今でも人気ですよね。都知事がコスプレしていたぐらいですから。

さらに忘れてはならないのは、「少女革命ウテナ」で知られる幾原邦彦監督作の「輪るピングラム」。「銀河鉄道の夜」オマージュのキャラクターがあり、地下鉄サリン事件が裏テーマの意欲的な作品です。

(初見は2009年8月25日)

銀河鉄道の夜(1985) - goo 映画

この記事は、gooブログの猫の日特集にちなんだ再録記事です。アマゾンギフト券が抽選で当たるようです。


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