陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

神無月のちょこ巫女 2020年改訂版

2020-02-16 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女

新型コロナウイルスで日本列島大激震の今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
ストレスが溜まったりすると、糖分が摂取したくなったりしますよね。甘いものは食べるものとは限らない訳でして。私、年一回は「神無月の巫女」の漫画版を読み直します。憂さ晴らしに手持ちの漫画をあれこれ開くのですが、最後に楽しむデザートみたいなもので、必ず残しておくのがこの漫画ですね。なおアニメのDVDじゃないのは、全十二話ぶっ通しで観ると、休日丸つぶれで、1箇月ぐらい後をひいてしまうからです。

そして、ヲタクの楽しみ、妄想記事のお時間です。
十月だけが神無月祭りじゃないさがわが信条の拙ブログは、どこでも電波をキャッチしたら書きます、やります、神無月愛の駄日記を。

さて、このブログ記事画像。
いまからさかのぼること10年以上前のコラ画像です。元記事はコチラ

ここ最近アマゾンプライムの無料視聴、いやその前のSNS上でのクチコミ普及かいざ知らず、以前よりも巷間賑わしくなったこの作品。新規ファンにはうざったい思い出語りを古参がすれば。2008年ごろに、原作者先生がバレンタイン記念で描き下ろしイラストを発表していたりですね、そんなファンサ―ビスがあったりしました。(介錯日記2008年2月12日参照)。


バレンタインというのは、恰好の二次創作ネタなので、二次創作者たちがこぞって発表したラブいものがネットに転がっていたりもしました。チョコといっしょに私を召し上がれ❤とか、定番の展開なのですが…(艶笑)。うん、実にいいですね(←涎を拭け)。

この過去記事を読むと、当時は日本本土にバレンタインが根付いて半世紀ほど。
じつは、ここ近年はバレンタイン文化もややすたれ気味とかなんとか。恵方巻と並んで、もともと消費の落ち込みやすい二月の景気テコ入れ策として考案されたものなのだろうけど、アンチ義理チョコ派の声が大きくなったとか、男性のお返しを期待する女性のばら撒きがあざといとか、まあいろいろ非難されはじめているとか、いないとか。職場で女性陣が少ないときついですよね…、配るのがいやでわざわざ、その日に有休とる女性社員もいたりして。男性にしたって、好きでもない女性にお礼するのは大変だし、そもそも可処分所得の低下が背景にあるのかもしれませんね。数年前には、女性同士で贈りあう友チョコブームもあったけど、お菓子で懐柔しようとするあの人間関係が好きじゃないひともいますよね。現実味の濃いこと書きすぎて、気が滅入りそうです。

チョコレートではありませんが、アニメ「神無月の巫女」のなかにも、贈り物が登場します。
第一話では主人公・来栖川姫子が親友の姫宮千歌音のために誕生日プレゼントを用意し、千歌音は二人だけで祝うはずのお誕生日会を用意し、姫子を想う大神ソウマは告白の言葉を用意しています。オロチ襲撃に名乗り上げてヒーロー然となったソウマに惚れてデートにも誘われる姫子、ソウマから箱入りのプレゼントすらもらいます。肉親の悪の誘惑すら断ち切って命懸けで守るソウマに対し、姫子ときたら流れるままに恋人ごっこをしていますが、親友へのプレゼント選びにソウマを付き合わせてしまう始末です。別に姫子は悪意があってやってるわけではないのですが(笑)。

そのいっぽう、千歌音は姫子から贈られたペアのペンダントを捨て去って、驚くべき行動に出てしまいます。千歌音は、姫子からも、ソウマからも、大切で重大なものを奪ってしまう。こんなおままごとはもうたくさん、と叫びながら。姫子に与えた優しさを、恋敵ソウマにも与えた寛大さを、ここにきて千歌音は失ってしまいます。

そう、千歌音ちゃんにとって、恋人同士が行う定例的なイベントなんて望んでも得られないものだったわけですね。
千歌音が姫子に贈ってきたものは、オロチ襲撃で生活の場を失った姫子への衣食住の確保。お古のドレスをあげているのも、臣下に身に着けたものを下げ渡すかのようで。高級品にまみれている姫宮のお嬢さまからしたら、姫子のくれるプレゼントなんておもちゃみたいなもんだったでしょう。しかし、それを自分も金にあかせた品で贈り返そうとしないのは、姫子を傷つけないため、気後れさせないためにです。「ローマの休日」ではないけれど、富裕のお嬢さまが庶民層と遊ぶとなると、知らなかった日常の楽しさや些細な冒険に触れる、あるいはその逆に、平凡な女の子が高貴な世界に歓喜むせぶシンデレラストーリーなんてのがお約束ですが(「マリア様がみてる」の祐巳が勧めたジーンズに喜ぶ祥子はまさにそれ)、「神無月の巫女」ではまったくそんな格差恋愛的なイベントがおこらないわけですね。なぜかというと、千歌音は姫子とあくまで対等な関係でいたかったから。そして、これはただならぬ百合作品なのだから。

自分の本心をひた隠しにして姫子の笑顔をつくる努力をいとわない千歌音。
彼女があたえた熱愛のバースディプレゼントは、姫子には届いていませんでした。戦乱に乗じて何かの間違いと忘れ去られ、ソウマとの過ごした時間に上塗りされてしまう。千歌音が二度めに贈った夜のそれは、オロチの感化か感情の暴発めいたものと片付けられてもおかしくないものになる。姫子が千歌音に贈られたものの真意に気づき、同じものを、それを超える愛で贈り返したのは最終回の別れ間際。並の少女漫画ですと、純潔ヒロインにハラスメントめいた行為を働いた輩はたいがい成敗されるのが定石なのですが、この作品ではそうはなりません。ソウマのように雄々しく力強くはなくとも、魂かけて一人の女の子を守った千歌音の深い愛と勇気、それからその絶望への憐れみのために、救われてほしいと願ってしまうからなのです。

楽しくて甘い時間だけ過ごすのが、愛じゃないよ。
それは恋ではあるけれど、愛じゃない。一見、裏切りにも不義理にも思えた千歌音の行動の裏にあるものを信じて、ぶつかって、最後にふたりだけの愛にたどりついた姫子の勇気と健気さにも胸をうつものがあります。姫子がそこに至れたのは、苦しい時や悲しい時に側にいてくれた千歌音を忘れなかったからなのです。けっして、融けてなくなってしまうだけの、甘いお菓子を送りあうだけの仲では、ここまでの絆を紡ぐことはできなかったでしょう。贈った、貰ったものの数量では計られない愛の深さがそこにはあるわけで、きれいにラッピングされたできあいの贈り物の時節になるといつもいつも、私はその尊さを思い出すのです。



ところで、以上の考察がクソまじめすぎて、とっとと飛ばし読みされた方は。
最後にこちらで笑ってください。→「裏神無月の巫女 第五貝」。ソウマくんは女子人気が高いのでチョコ貰いなれているけれど、マニュアルからはみ出すのが嫌いだから、本命から貰うチョコは格別でとしっかり考えすぎていて、姫子が義理なのをうっかり渡し忘れたのを気に病んでいて、──と意外と乙女っぽいところがありそう…(笑)。


★★神無月の巫女&京四郎と永遠の空レビュー記事一覧★★
「神無月の巫女」と「京四郎と永遠の空」に関するレビュー記事の入口です。媒体ごとにジャンル分けしています。妄言多し。




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