日ごろ漫画をあまり読むほうではない私は、図書館勤めだったときに驚いたことがあります。
『ベルサイユのばら』など古典とされる漫画が辞書のような分厚さで刊行されていたことです。人気作の少年少女漫画は人気作ならば、のちに文庫版が出ることぐらいは知っていましたが、普通のハードカバー小説並みのサイズと装本には驚きました。愛蔵版っていうんですかね、あれ。しかも、表紙からして漫画に見えず、文学全集に見える。
そして、いちばん驚いたのは手塚治虫の『火の鳥』シリーズがかなり大きなサイズで刊行されていたことです。ご年配の方向けなのでしょうか。たしかに字が密で繊細なペンタッチの劇画は文庫で読むのが忍びないのかも。
漫画の単行本の値段はサイズによって変わります。
子どもの頃、大手の少年少女漫画雑誌の出版社のコミックスは税込400円ほど。なので、はじめてカドカワ系のB6サイズのコミックスを買った時は驚きました。当時600円近くだったはず。現在は、消費税10パーセントに伴い値上げされたので、もうすこし高めでしょう。しかし、子どもの頃の古いジャンプ漫画のコミックスなんか300円台だったのは驚きです。その頃より、日本人の可処分所得は減っているのに…。
また、アニメ化もされたある高名な百合漫画のコミックスも買ったことがありますが、青年誌だったせいか、さらに大きめサイズなうえに、お値段が1000円近くするのにびっくりしました。たしかに絵はきれいめで整っているのだけれど、日常もので心理を掘り下げるタイプはどうしたって展開が遅く、コマにどアップの顔など漫画の表現として見劣りがするものが多いです。デッサン崩れてないけれど、個性がない絵ばかりというか、飽きるんですよね。
絵はきれいだけど、舞台が日常だけに、どこかで見た都会の風景とか、海のある田舎とか、学校とか、どこかで見た画像を下敷きに描いたようにも見えて、どれも同じに見えます。私の年齢だと、それこそ見飽きてるんです。一度読んだらいいやと思ってしまうこともしばしば。ライトノベルでいうと一冊分ぐらいの話を、漫画で数冊かけて続けられたりする。
正直、週刊漫画で動きが豊かで、話にも起伏があって、キャラがそれぞれ立っていて、おもしろいものが安く買えるのに比べたら、どうしても比較してしまいますよね。ロボットやメカが出てきたり、歴史ものだったりしたら、資料をそろえるのもアシスタントに任せるも大変。背景が白くて陰影があまりなさそうな日常ものや四コマ漫画は、一人でも描けそうだし、重厚な画面づくりをしている漫画家と単行本の印税を同じのするのはおかしいのではないかとも。
そもそも大判サイズの単行本は要らない。
出版社によって、コミックスのサイズがばらばらになるのをやめてほしいです。失礼なのですが、中小の出版社で、しかもマニアックなジャンルほど、サイズを大きくして利ざやを稼ごうとしているふしがあります。いまの漫画でも電子書籍の売れゆきがいいですし、本のサイズごとに値段を変えられるのは納得がゆきません。
漫画の本は内容やジャンルごとに値段を決めるべきではないでしょうか。
高い画力や構想力が試される歴史ものやSFもの、戦争やバトル、スポーツ、医療など取材が必要なお堅い社会派テーマを扱ったものの漫画は値段を高くして、作家さんへの還元を増やさなければ、難しいテーマに挑戦しようとする意欲ある作家が育たないのではないでしょうか。
読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。