陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

経理さんは会社の嫌われ者なのか問題

2024-09-03 | 仕事・雇用・会社・労働衛生

ひとり事務職の私は勤め先で総務兼経理をしています。
私個人の感覚としては、日本年金機構での勤務経験や総務事務経験もあるので、経理よりも、労務管理のほうが得意です。

ところで、先日、会計ソフト開発企業から定期送付される冊子に目を通していたら。
「経理にとっての幸せとは何か?」という問いがありました。いわく、経理は社内で嫌われがちなポジションで、現場から煙たがられやすいと。たしかにひとり事務職の私は他部門の方々とは距離を感じることがしばしばです。

それは、経理が陥りやすい思考の癖があるからなのでしょう。
今回はそのゆがみを書き記して、今後の業務改善に活かしたく記事にした次第。

・締切重視のスピード姿勢
経理は月次業務として入出金処理があり、間違いが許されません。請求書の発行部数が多い日の朝がたに限って、従業員のトラブル対応に重なると疲弊してしまいます。また、年末調整の提出書類がいい例ですが、期限までに出せない人や書類に不備がある人にもイライラ。波風が立たないように注意するものの、マイペースな人に振り回されてしまうものです。

・オフィスで書類作業が楽ちんだと思われている
パソコンの前でしがな一日中入力だけしていると思われがちな事務職。実際は、急な来客があったり、荷物の発着があったり、電話どころかメール、FAX対応も頻繁で息つく暇もないほど。事務職の経験がないといいますか、そもそも電話対応をしたことがない職種の方はこの大変さを理解していただけないのです。私も電話の受付、苦手なんですけどね。

・各部門の社内情報を握っている
経理は会社の重要な数字を扱う仕事。毎月どころか毎事業年度の売上額も利益も把握していますし、借入高や、経営者の給与まで知っています。部門ごとの成績も見えてしまうので、社内の揉め事も耳に入ってきやすいのです。そのため、経理に近づくと便宜を図ってもらえるだろうと甘く考えてこられたりする。秘密保持上、こちらが距離をおくと態度を変える人もいたりします。

・経費削減のために浪費を許さない姿勢
従業員が私的な使用目的である物品の購入には目を光らせねばならないのが、経理の務め。トイレットペーパー1個にしても無駄遣いは許されず。私自身は自分の文具は持ち込みしていますけどね。勤め先はとある備品を部門長からの支給にしているのですが、上長と折り合いの悪い社員が私から直接融通してもらおうとして、組織構造上の問題があったので、お願いして改めさせたことがあります。

・備品を自由に使っていると思われている
先述しましたが、経理だからといいまして、自在に経費を使い込んでいいわけではありません。経営者の承認の得られない買い物は、たとえボールペン一本でもできない。しかも、なるべく安い価格の調査もせねばならないこともあって。なじみの文具屋や印刷会社があっても、価格据え置きで品質を落とされると、物品のクオリティにクレームがくることもあります。その納品先に直接言ってよ、と言いたくもなります。

・人の価値を数字で判断しやすくなる
これが一番恐ろしいところでしょう。給与計算業務で昇給や賞与の額が丸見えなので、全従業員のお金事情を知っているわけです。誰それは距離のわりに通勤手当が多過ぎるだとか、同期生なのに月給に格差があるとか、業務量のわりには給与が低めにされているとか。逆にもらいすぎじゃないか、とか。人事評価をするのはあくまで経営者であって、経理はただその数字を入力するだけなのですが、個人の主観が入るとどうもやりきれない気持ちが募ります。給与額に関しては、私自身もかなり不満がありますね。サビ残が多いので。実労働時間で割ったら、最低賃金を下回る月もありますから。

・取引先重視で従業員のケアを後回しにしやすい
有休取得や各種の申請について問い合わせがあっても、まずは取引先からの電話優先。まずは会社の利益になる仕事が第一番になり、そこで社員の抱えた不満の話し相手になるとか、福利厚生の充実だとかが二の次で。こうした事情を汲んでくれる方ならばいのですが、自己都合ばかり考えるわがままな方だと悪感情をもたれやすくなりますね。

・効率重視のあまり、現場の管理に口出しをする
これは、私はあまりやらないようにしていますが。過去のベテラン経理さんが仕事熱心すぎて、各部署の問題点に注意勧告をしすぎたらしくて、かなり敬遠されていたとのことです。経理は会社の数字を見るので経営者と同じ目線には立てますが、経営者と同じ口の利き方をすれば、古株社員には疎まれてしまいやすくなります。


とにかくお金を扱う職種なので、どうしても人間をきちんと見ないことがあります。
個々人の労働成果を記録していく作業によって、各自の貢献度を数値化して考えるようになります。たとえば長時間労働者がありがたいとか、サビ残者を応援してしまうとか。これでは、会社の健康経営の理念からは遠のくでしょう。

そこで、私がふだん心がけていますのは。労働環境の安全衛生対策と称して、掃除をしつつコミュニケーションをとったり、お手洗いタイムのときにさりげなくヒアリングしたりすることですね。同じ部門同士、あるいは他部門への不平不満も、独立した立場である私には話しやすいこともあって、打ち明けてくださる方もあり。そうしたトラブルの芽が小さいうちに、経営者層に問題提起して解決の糸口を探る仲介をするのも、私の務めだと思っています。数字に神経質になりすぎずに、従業員個々人の人柄を愛する総務事務職としての義務を前面化することで、経理特有の生ぐささをやわらげることができるのです。

とにかく経理に限らず社内でのスペシャリストを気取る職種は、その特別感を醸し出すと溝ができやすくなります。なるべく親しみやすさを演出して、日々、働いていただいている従業員の皆様に惜しみない謝意を示していくべきなのです。これは、経営者と労働者がわとの確執がある場合には、なおさら事務系職種に求められる調整力なのでありましょう。私がその域に達しているかは、社員さんからのとらえ方次第なのです。

(2023.09.02)



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