商標法第7章の2 (その12) 最後です。
第3節 商標登録出願等の例外
ここではセントラルアタックによって、国際登録が消滅した場合やマドプロをやめる国が出てきた場合等の扱いが決められています。
第68条の32(国際登録の取消し後の商標登録出願の特例) 議定書第6条(4)の規定により日本国を指定する国際登録の対象であつた商標について、当該国際登録において指定されていた商品又は役務の全部又は一部について当該国際登録が取り消されたときは、当該国際登録の名義人であつた者は、当該商品又は役務の全部又は一部について商標登録出願をすることができる。
2 前項の規定による商標登録出願は、次の各号のいずれにも該当するときは、同項の国際登録の国際登録の日(同項の国際登録が事後指定に係るものである場合は当該国際登録に係る事後指定の日)にされたものとみなす。
一 前項の商標登録出願が同項の国際登録が取り消された日から三月以内にされたものであること。
二 商標登録を受けようとする商標が前項の国際登録の対象であつた商標と同一であること。
三 前項の商標登録出願に係る指定商品又は指定役務が同項の国際登録において指定されていた商品又は役務の範囲に含まれていること。
3 第1項の国際登録に係る国際商標登録出願についてパリ条約第4条の規定による優先権が認められていたときは、同項の規定による商標登録出願に当該優先権が認められる。
4 第1項の国際登録に係る国際商標登録出願について第9条の3又は第13条第1項において読み替えて準用する特許法第43条の2第2項の規定による優先権が認められていたときも、前項と同様とする。
5 第1項の規定による商標登録出願についての第10条第1項の規定の適用については、同項中「商標登録出願の一部」とあるのは、「商標登録出願の一部(第68条の32第1項の国際登録において指定されていた商品又は役務の範囲に含まれているものに限る。)」とする。
★第1項では、いきなり「議定書6条(4)の規定により」となっていますが、これは有名なセントラルアタックのことです。
★★(参考:マドプロ6条(3)(4)→セントラルアタックは基本的に5年間)
6条
(3) 国際登録による標章の保護については、当該国際登録が移転の対象となったかどうかを問わず、その国際登録の日から五年の期間が満了する前に、基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が取り下げられ、消滅し、放棄され又は、確定的な決定により、拒絶され、抹消され、取り消され若しくは無効とされた場合には、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部について主張することができない。当該五年の期間の満了前に次の(i)、(ⅱ)又は(ⅲ)の手続が開始され、当該五年の期間の満了後に基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が確定的な決定により、拒絶され、抹消され、取り消され、無効とされ又は取下げを命ぜられた場合においても、同様とする。また、当該五年の期間の満了後に基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が取り下げられ又は放棄された場合であって、当該基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録がその取下げ又は放棄の時に次の(i)、(ⅱ)又は(ⅲ)の手続の対象であり、かつ、当該手続が当該五年の期間の満了前に開始された場合においても、同様とする。
(i) 基礎出願の効果を否認する決定に対する不服の申立て
(ⅱ) 基礎出願の取下げを求める申立て又は基礎出願による登録若しくは基礎登録の抹消、取消し若しくは無効を求める申立て
(ⅲ) 基礎出願に対する異議の申立て
(4) 本国官庁は、規則の定めるところにより、国際事務局に対し(3)の規定に関連する事実及び決定を通報するものとし、国際事務局は、規則の定めるところにより、当該事実及び決定を利害関係者に通報し、かつ、これを公表する。本国官庁は、該当する範囲について国際登録の取消しを国際事務局に請求するものとし、国際事務局は、当該範囲について国際登録を取り消す。
★セントラルアタック(本国官庁の基礎登録、基礎出願が最終的に拒絶無効となるようなアクション)によって国際登録が取り消されると領域指定(日本の商標登録出願や商標登録)の効果は失われてしまうわけで、そのような場合には、直接日本の特許庁に日本の商標登録出願をすることができますよ、というのが1項の規定です。
★2項では1項に基づく商標登録出願には国際登録の日まで遡及効を認めてあげますよ、という規定です。
条件としては国際登録の取消しの日から3箇月以内の出願であること、商標が同一、指定商品役務が国際登録のときのものの範囲内であること、です。
★3項では、日本の国際商標登録出願が優先権主張を伴っている場合には、そのまま援用できますという規定。
★5項は、68条の32の規定に基づく出願についてはもとの国際登録の範囲にあった指定商品役務でしか分割できない、という規定です。
なお、本条は、以下のマドプロ9条の5に基づくものです。
★マドプロ条文 第九条の五 国際登録の国内出願又は広域出願への変更
国際登録が、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部につき第六条(4)の規定に基づく本国官庁の請求により取り消された場合において、当該国際登録に係る領域指定が行われていた締約国の官庁に対し当該国際登録の名義人であった者が同一の標章に係る標章登録出願をしたときは、当該標章登録出願は、一次の(i)から(ⅲ)までの条件を満たすことを条件として、第三条(4)に規定する国際登録の日又は第三条の三(2)に規定する領域指定の記録の日に行われたものとみなし、かつ、当該国際登録についてその名義人が優先権を有していた場合には、当該名義人であった者は、同一の優先権を有するものとする。
(i) 標章登録出願が国際登録の取り消された日から三箇月以内に行われること。
(ⅱ) 標章登録出願において指定された商品及びサービスが当該締約国に係る国際登録において指定されていた商品及びサービスに実際に含まれること。
(ⅲ) 標章登録出願が手数料の支払を含む関係法令上のすべての要件を満たしていること。
第68条の33(議定書の廃棄後の商標登録出願の特例) 議定書第15条(5)(b)の規定により、日本国を指定する国際登録の名義人が議定書第2条(1)の規定に基づく国際出願をする資格を有する者でなくなつたときは、当該国際登録の名義人であつた者は、当該国際登録において指定されていた商品又は役務について商標登録出願をすることができる。
2 前条第2項から第5項までの規定は、第1項の規定による商標登録出願に準用する。この場合において、前条第2項第一号中「同項の国際登録が取り消された日から三月以内」とあるのは、「議定書第15条(3)の規定による廃棄の効力が生じた日から二年以内」と読み替えるものとする。
★この規定は国際商標登録出願をした「原則として外国人」のその外国がマドプロをやめてしまった場合には、日本の国内出願への乗り換えを認めますよ、という規定です。2項で時期的に2年となっている点に注意しましょう。日本国がマドプロをやめてしまったらどうなるか?それは日本の商標法には規定がないです。日本はやめてないからやめた場合のことを法律で決めておく必要はないわけですな。ここはマドプロ15条との関係をおさえておきましょう。
★★参考マドプロ条文
第十五条 廃棄
(1) この議定書は、無期限に効力を有する。
(2) いずれの締約国も、事務局長にあてた通告によりこの議定書を廃棄することができる。
(3) 廃棄は、事務局長がその通告を受領した日の後一年で効力を生ずる。
(4) いずれの締約国も、この議定書が当該締約国について効力を生じた日から五年を経過するまでは、この条に定める廃棄の権利を行使することができない。
(5)(a) いずれかの標章が、廃棄が効力を生ずる日においても当該廃棄を行う国又は政府間機関に係る領域指定を行っていた国際登録の対象である場合には、当該国際登録の名義人は、当該廃棄を行う国又は政府間機関の官庁に対し同一の標章に係る標章登録出願をすることができる。当該標章登録出願は、次の(i)から(ⅲ)までの条件を満たすことを条件として、第三条(4)に規定する国際登録の日又は第三条の三(2)に規定する領域指定の記録の日に行われたものとみなし、かつ、当該国際登録についてその名義人が優先権を有していた場合には、当該名義人であった者は、同一の優先権を有するものとする。
(i) 標章登録出願が、廃棄が効力を生じた日から二年以内に行われること。
(ⅱ) 標章登録出願において指定された商品及ぴサービスが当該廃棄を行う国又は政府間機関に係る国際登録において指定されていた商品及びサービスに実際に含まれること。
(ⅲ) 標章登録出願が手数料の支払を含む関係法令上のすべての要件を満たしていること。
(b) (a)の規定は、廃棄が効力を生ずる日においても当該廃棄を行う国又は政府間機関以外の締約国に係る領域指定を行っていた国際登録の対象である標章につき当該国際登録の名義人が当該廃棄のために第二条(1)の規定に基づき国際出願をする資格を有する者でなくなつた場合に準用する。
第68条の34(拒絶理由の特例) 第68条の32第1項又は前条第1項の規定による商標登録出願についての第15条の規定の適用については、同条中「次の各号の一に該当するとき」とあるのは、「次の各号の一に該当するとき又は第68条の32第1項若しくは第68条の33第1項の規定による商標登録出願が第68条の32第1項若しくは第68条の33第1項若しくは第68条の32第2項各号(第68条の33第2項において読み替えて準用する場合を含む。)に規定する要件を満たしていないとき」とする。
2 国際登録に係る商標権であつたものについての第68条の32第1項又は前条第1項の規定による商標登録出願(第68条の37及び第68条の39において「旧国際登録に係る商標権の再出願」という。)については、第15条(第一号及び第二号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。
★68条の32、68条の33の規定による「乗り換え出願」については、各条文に規定している要件を満たさない場合には拒絶にしますよ、という規定です。
2項は、すでに日本で商標権となっていたものについては、一般的な3条4条はクリアしているからこそ拒絶の通報がされなかったわけですから、「乗り換え出願」についてはそれらの一般的な拒絶理由についてはもはや審査しませんよ、という規定です。
第68条の35(商標権の設定の登録の特例) 第68条の32第1項又は第68条の33第1項の規定による商標登録出願については、当該出願に係る国際登録の国際登録の日(国際登録の存続期間の更新がされているときは、直近の更新の日)から十年以内に商標登録をすべき旨の査定又は審決があつた場合であつて、当該出願に係る国際登録が議定書第6条(4)の規定により取り消された日前又は議定書第15条(3)の規定による廃棄の効力が生じた日前に第68条の30第1項第二号に掲げる額の個別手数料が国際事務局に納付されているときは、第18条第2項の規定にかかわらず、商標権の設定の登録をする。
★この規定は68条の32や68条の33のような「乗り換え出願」については、個別手数料がすでに支払われているのであれば、料金納付を不要として設定登録をしますよ。そうでなければ二重取りになってしまいますからね、という規定です。
個別手数料が支払われていない場合には、登録料の納付(18条2項)を条件に設定登録します、ということになります。そうすると、一律な扱いというわけではないですね。これも平成14年に改正されました。
第68条の36(存続期間の特例) 前条に規定する商標権の存続期間は、当該出願に係る国際登録の国際登録の日(当該国際登録の存続期間の更新がされているときは、直近の更新の日)から十年をもつて終了する。
2 前項に規定する商標権の存続期間については、第19条第1項の規定は、適用しない。
★この規定は68条の32や68条の33のような「乗り換え出願」については、存続期間はあくまでも国際登録の日からカウントしますよ、という規定です。
第68条の37(登録異議の申立ての特例) 旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録についての第43条の2の規定の適用については、同条中「、商標登録」とあるのは、「、商標登録(旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録にあつては、もとの国際登録に係る商標登録について登録異議の申立てがされることなくこの条に規定する期間を経過したものを除く。)」とする。
★68条の32や68条の33のような「乗り換え出願」については、すでに拒絶の通報がされることなく日本で登録査定が出ていたような状態で、登録異議申立もなく正式に権利として認められた状態だったのだとしたら、「乗り換え出願」についても登録異議申立ての対象にはしませんよ、というのがかっこ書の意味です。
第68条の38(商標登録の無効の審判の特例) 第68条の32第1項又は第68条の33第1項の規定による商標登録出願に係る商標登録についての第46条第1項の審判については、第46条中「次の各号の一に該当するとき」とあるのは、「次の各号の一に該当するとき又は第68条の32第1項若しくは第68条の33第1項若しくは第68条の32第2項各号(第68条の33第2項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定に違反してされたとき」とする。
★「乗り換え出願」について、無効理由には68条の32や68条の33で規定している要件も無効理由となる旨を規定しています。
第68条の39(同前) 旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録についての第47条の規定の適用については、同条中「請求することができない。」とあるのは、「請求することができない。商標権の設定の登録の日から五年を経過する前であつても、旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録については、もとの国際登録に係る商標登録について本条の規定により第46条第1項の審判の請求ができなくなつているときも、同様とする。」とする。
★さらに乗り換える前に除斥期間が過ぎていたのであれば、乗り換え出願について登録がされてももう除斥期間は経過したものとして扱いますよ、という規定です。
これで(最後は簡単になってしまいましたが)、商標法第7章の2を終わります。マドプロは以前説明したので、マドプロをわかっている人は簡単でしたね。
第3節 商標登録出願等の例外
ここではセントラルアタックによって、国際登録が消滅した場合やマドプロをやめる国が出てきた場合等の扱いが決められています。
第68条の32(国際登録の取消し後の商標登録出願の特例) 議定書第6条(4)の規定により日本国を指定する国際登録の対象であつた商標について、当該国際登録において指定されていた商品又は役務の全部又は一部について当該国際登録が取り消されたときは、当該国際登録の名義人であつた者は、当該商品又は役務の全部又は一部について商標登録出願をすることができる。
2 前項の規定による商標登録出願は、次の各号のいずれにも該当するときは、同項の国際登録の国際登録の日(同項の国際登録が事後指定に係るものである場合は当該国際登録に係る事後指定の日)にされたものとみなす。
一 前項の商標登録出願が同項の国際登録が取り消された日から三月以内にされたものであること。
二 商標登録を受けようとする商標が前項の国際登録の対象であつた商標と同一であること。
三 前項の商標登録出願に係る指定商品又は指定役務が同項の国際登録において指定されていた商品又は役務の範囲に含まれていること。
3 第1項の国際登録に係る国際商標登録出願についてパリ条約第4条の規定による優先権が認められていたときは、同項の規定による商標登録出願に当該優先権が認められる。
4 第1項の国際登録に係る国際商標登録出願について第9条の3又は第13条第1項において読み替えて準用する特許法第43条の2第2項の規定による優先権が認められていたときも、前項と同様とする。
5 第1項の規定による商標登録出願についての第10条第1項の規定の適用については、同項中「商標登録出願の一部」とあるのは、「商標登録出願の一部(第68条の32第1項の国際登録において指定されていた商品又は役務の範囲に含まれているものに限る。)」とする。
★第1項では、いきなり「議定書6条(4)の規定により」となっていますが、これは有名なセントラルアタックのことです。
★★(参考:マドプロ6条(3)(4)→セントラルアタックは基本的に5年間)
6条
(3) 国際登録による標章の保護については、当該国際登録が移転の対象となったかどうかを問わず、その国際登録の日から五年の期間が満了する前に、基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が取り下げられ、消滅し、放棄され又は、確定的な決定により、拒絶され、抹消され、取り消され若しくは無効とされた場合には、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部について主張することができない。当該五年の期間の満了前に次の(i)、(ⅱ)又は(ⅲ)の手続が開始され、当該五年の期間の満了後に基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が確定的な決定により、拒絶され、抹消され、取り消され、無効とされ又は取下げを命ぜられた場合においても、同様とする。また、当該五年の期間の満了後に基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が取り下げられ又は放棄された場合であって、当該基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録がその取下げ又は放棄の時に次の(i)、(ⅱ)又は(ⅲ)の手続の対象であり、かつ、当該手続が当該五年の期間の満了前に開始された場合においても、同様とする。
(i) 基礎出願の効果を否認する決定に対する不服の申立て
(ⅱ) 基礎出願の取下げを求める申立て又は基礎出願による登録若しくは基礎登録の抹消、取消し若しくは無効を求める申立て
(ⅲ) 基礎出願に対する異議の申立て
(4) 本国官庁は、規則の定めるところにより、国際事務局に対し(3)の規定に関連する事実及び決定を通報するものとし、国際事務局は、規則の定めるところにより、当該事実及び決定を利害関係者に通報し、かつ、これを公表する。本国官庁は、該当する範囲について国際登録の取消しを国際事務局に請求するものとし、国際事務局は、当該範囲について国際登録を取り消す。
★セントラルアタック(本国官庁の基礎登録、基礎出願が最終的に拒絶無効となるようなアクション)によって国際登録が取り消されると領域指定(日本の商標登録出願や商標登録)の効果は失われてしまうわけで、そのような場合には、直接日本の特許庁に日本の商標登録出願をすることができますよ、というのが1項の規定です。
★2項では1項に基づく商標登録出願には国際登録の日まで遡及効を認めてあげますよ、という規定です。
条件としては国際登録の取消しの日から3箇月以内の出願であること、商標が同一、指定商品役務が国際登録のときのものの範囲内であること、です。
★3項では、日本の国際商標登録出願が優先権主張を伴っている場合には、そのまま援用できますという規定。
★5項は、68条の32の規定に基づく出願についてはもとの国際登録の範囲にあった指定商品役務でしか分割できない、という規定です。
なお、本条は、以下のマドプロ9条の5に基づくものです。
★マドプロ条文 第九条の五 国際登録の国内出願又は広域出願への変更
国際登録が、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部につき第六条(4)の規定に基づく本国官庁の請求により取り消された場合において、当該国際登録に係る領域指定が行われていた締約国の官庁に対し当該国際登録の名義人であった者が同一の標章に係る標章登録出願をしたときは、当該標章登録出願は、一次の(i)から(ⅲ)までの条件を満たすことを条件として、第三条(4)に規定する国際登録の日又は第三条の三(2)に規定する領域指定の記録の日に行われたものとみなし、かつ、当該国際登録についてその名義人が優先権を有していた場合には、当該名義人であった者は、同一の優先権を有するものとする。
(i) 標章登録出願が国際登録の取り消された日から三箇月以内に行われること。
(ⅱ) 標章登録出願において指定された商品及びサービスが当該締約国に係る国際登録において指定されていた商品及びサービスに実際に含まれること。
(ⅲ) 標章登録出願が手数料の支払を含む関係法令上のすべての要件を満たしていること。
第68条の33(議定書の廃棄後の商標登録出願の特例) 議定書第15条(5)(b)の規定により、日本国を指定する国際登録の名義人が議定書第2条(1)の規定に基づく国際出願をする資格を有する者でなくなつたときは、当該国際登録の名義人であつた者は、当該国際登録において指定されていた商品又は役務について商標登録出願をすることができる。
2 前条第2項から第5項までの規定は、第1項の規定による商標登録出願に準用する。この場合において、前条第2項第一号中「同項の国際登録が取り消された日から三月以内」とあるのは、「議定書第15条(3)の規定による廃棄の効力が生じた日から二年以内」と読み替えるものとする。
★この規定は国際商標登録出願をした「原則として外国人」のその外国がマドプロをやめてしまった場合には、日本の国内出願への乗り換えを認めますよ、という規定です。2項で時期的に2年となっている点に注意しましょう。日本国がマドプロをやめてしまったらどうなるか?それは日本の商標法には規定がないです。日本はやめてないからやめた場合のことを法律で決めておく必要はないわけですな。ここはマドプロ15条との関係をおさえておきましょう。
★★参考マドプロ条文
第十五条 廃棄
(1) この議定書は、無期限に効力を有する。
(2) いずれの締約国も、事務局長にあてた通告によりこの議定書を廃棄することができる。
(3) 廃棄は、事務局長がその通告を受領した日の後一年で効力を生ずる。
(4) いずれの締約国も、この議定書が当該締約国について効力を生じた日から五年を経過するまでは、この条に定める廃棄の権利を行使することができない。
(5)(a) いずれかの標章が、廃棄が効力を生ずる日においても当該廃棄を行う国又は政府間機関に係る領域指定を行っていた国際登録の対象である場合には、当該国際登録の名義人は、当該廃棄を行う国又は政府間機関の官庁に対し同一の標章に係る標章登録出願をすることができる。当該標章登録出願は、次の(i)から(ⅲ)までの条件を満たすことを条件として、第三条(4)に規定する国際登録の日又は第三条の三(2)に規定する領域指定の記録の日に行われたものとみなし、かつ、当該国際登録についてその名義人が優先権を有していた場合には、当該名義人であった者は、同一の優先権を有するものとする。
(i) 標章登録出願が、廃棄が効力を生じた日から二年以内に行われること。
(ⅱ) 標章登録出願において指定された商品及ぴサービスが当該廃棄を行う国又は政府間機関に係る国際登録において指定されていた商品及びサービスに実際に含まれること。
(ⅲ) 標章登録出願が手数料の支払を含む関係法令上のすべての要件を満たしていること。
(b) (a)の規定は、廃棄が効力を生ずる日においても当該廃棄を行う国又は政府間機関以外の締約国に係る領域指定を行っていた国際登録の対象である標章につき当該国際登録の名義人が当該廃棄のために第二条(1)の規定に基づき国際出願をする資格を有する者でなくなつた場合に準用する。
第68条の34(拒絶理由の特例) 第68条の32第1項又は前条第1項の規定による商標登録出願についての第15条の規定の適用については、同条中「次の各号の一に該当するとき」とあるのは、「次の各号の一に該当するとき又は第68条の32第1項若しくは第68条の33第1項の規定による商標登録出願が第68条の32第1項若しくは第68条の33第1項若しくは第68条の32第2項各号(第68条の33第2項において読み替えて準用する場合を含む。)に規定する要件を満たしていないとき」とする。
2 国際登録に係る商標権であつたものについての第68条の32第1項又は前条第1項の規定による商標登録出願(第68条の37及び第68条の39において「旧国際登録に係る商標権の再出願」という。)については、第15条(第一号及び第二号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。
★68条の32、68条の33の規定による「乗り換え出願」については、各条文に規定している要件を満たさない場合には拒絶にしますよ、という規定です。
2項は、すでに日本で商標権となっていたものについては、一般的な3条4条はクリアしているからこそ拒絶の通報がされなかったわけですから、「乗り換え出願」についてはそれらの一般的な拒絶理由についてはもはや審査しませんよ、という規定です。
第68条の35(商標権の設定の登録の特例) 第68条の32第1項又は第68条の33第1項の規定による商標登録出願については、当該出願に係る国際登録の国際登録の日(国際登録の存続期間の更新がされているときは、直近の更新の日)から十年以内に商標登録をすべき旨の査定又は審決があつた場合であつて、当該出願に係る国際登録が議定書第6条(4)の規定により取り消された日前又は議定書第15条(3)の規定による廃棄の効力が生じた日前に第68条の30第1項第二号に掲げる額の個別手数料が国際事務局に納付されているときは、第18条第2項の規定にかかわらず、商標権の設定の登録をする。
★この規定は68条の32や68条の33のような「乗り換え出願」については、個別手数料がすでに支払われているのであれば、料金納付を不要として設定登録をしますよ。そうでなければ二重取りになってしまいますからね、という規定です。
個別手数料が支払われていない場合には、登録料の納付(18条2項)を条件に設定登録します、ということになります。そうすると、一律な扱いというわけではないですね。これも平成14年に改正されました。
第68条の36(存続期間の特例) 前条に規定する商標権の存続期間は、当該出願に係る国際登録の国際登録の日(当該国際登録の存続期間の更新がされているときは、直近の更新の日)から十年をもつて終了する。
2 前項に規定する商標権の存続期間については、第19条第1項の規定は、適用しない。
★この規定は68条の32や68条の33のような「乗り換え出願」については、存続期間はあくまでも国際登録の日からカウントしますよ、という規定です。
第68条の37(登録異議の申立ての特例) 旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録についての第43条の2の規定の適用については、同条中「、商標登録」とあるのは、「、商標登録(旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録にあつては、もとの国際登録に係る商標登録について登録異議の申立てがされることなくこの条に規定する期間を経過したものを除く。)」とする。
★68条の32や68条の33のような「乗り換え出願」については、すでに拒絶の通報がされることなく日本で登録査定が出ていたような状態で、登録異議申立もなく正式に権利として認められた状態だったのだとしたら、「乗り換え出願」についても登録異議申立ての対象にはしませんよ、というのがかっこ書の意味です。
第68条の38(商標登録の無効の審判の特例) 第68条の32第1項又は第68条の33第1項の規定による商標登録出願に係る商標登録についての第46条第1項の審判については、第46条中「次の各号の一に該当するとき」とあるのは、「次の各号の一に該当するとき又は第68条の32第1項若しくは第68条の33第1項若しくは第68条の32第2項各号(第68条の33第2項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定に違反してされたとき」とする。
★「乗り換え出願」について、無効理由には68条の32や68条の33で規定している要件も無効理由となる旨を規定しています。
第68条の39(同前) 旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録についての第47条の規定の適用については、同条中「請求することができない。」とあるのは、「請求することができない。商標権の設定の登録の日から五年を経過する前であつても、旧国際登録に係る商標権の再出願に係る商標登録については、もとの国際登録に係る商標登録について本条の規定により第46条第1項の審判の請求ができなくなつているときも、同様とする。」とする。
★さらに乗り換える前に除斥期間が過ぎていたのであれば、乗り換え出願について登録がされてももう除斥期間は経過したものとして扱いますよ、という規定です。
これで(最後は簡単になってしまいましたが)、商標法第7章の2を終わります。マドプロは以前説明したので、マドプロをわかっている人は簡単でしたね。
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