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平成27年度短答式試験〔46〕の解答について

2015-06-02 12:32:31 | 平成27年度(2015年度)過去ログ
平成27年度の弁理士試験短答式筆記試験が平成27年5月24日(日)に行われ、翌日に特許庁HPから問題及び解答が公表されました。
平成27年度弁理士試験短答式筆記試験問題及び解答(特許庁HP)

 このうち問題46の枝1は、「国際登録に基づく団体商標の商標登録出願人が、団体商標の登録主体として認められる法人(商標法第7条第1項に規定する法人)であることを証明する書面を特許庁長官に提出しない場合には、当該書面の提出についての手続の補正が命じられ、これを提出しないと当該団体商標登録出願は却下される。」というものです。
 この問題46は誤っているものはどれかという問題であり、正解が枝2ということになっています。このため、枝1は正しいと判断せざるを得ないのですが、枝1については、国際商標登録出願を対象としているのであれば、補正命令から出願却下とされることはありえないため、誤りとなるはずです。
 商標審査基準ニ、第3条第1項柱書6.には、「6.「団体商標」に相当する商標である旨の記載がなされた国際商標登録出願において、第7条第3項に規定する証明書(第7条第1項の法人であることを証する書面)の提出がされないときは、第3条第1項柱書の規定により商標登録を受けることができる商標に該当しないものとする。なお、団体商標の商標登録出願(国内出願)については、補正指令(方式)の対象となる。」とあり、商標審査基準第6の3.においても、「3.国際商標登録出願において「Collective mark,certification mark,or guarantee mark」(団体商標、証明商標又は保証商標)と記載されている場合であって、第7条第3項に規定する証明書(第7条第1項の法人であることを証する書面)の提出がない場合は、団体商標として第3条第1項柱書により登録を受けることができないものとする。なお、団体商標の商標登録出願(国内出願)については、補正指令(方式)の対象となる(本基準第1の二(第3条第1項柱書)6.参照)。」とあることからも、「手続の補正が命じられ、これを提出しないと当該団体商標登録出願は却下される」とする枝1が正しいとはいえないことは明らかかと思います。

 本問の出願が国内出願を意味するのであれば、上記審査基準にもあるとおり、枝1は正しいということになりますが、問題文にある「国際登録に基づく団体商標の商標登録出願人」という表現が、国内出願を意味すると考えなければならない理由は存在しないと思われます。

 なお、「国際登録に基づく」という表現は、商標法の全条文を検索しても、「登録商標」「商標権」「団体商標に係る商標権」を修飾する用語としてしか登場せず、商標登録出願を修飾する用語としては一切登場しませんが、特許庁が発行する逐条解説(青本)には、68条の16の趣旨欄に「国際商標登録出願は商標登録出願とみなされるが(68条の9)、それは国際登録に基づくものであり…」という説明があります。この説明から判断すると、「国際登録に基づく商標登録出願」という表現があれば、それは国際商標登録出願を意味すると理解すべきと思います。本枝にいう「国際登録に基づく団体商標の商標登録出願人」という表現の意味するところが、国際商標登録出願の出願人ではなく国内出願の出願人であると理解しなければならない合理的な理由はないと思われます。

 上記見解は私の個人的な見解であり、誤っている可能性もあります。ただ、仮に、もし誤っていないのであれば、この1問のために、1点足りずに不合格となってしまう受験者も多数いらっしゃると思われるため、試験主催者の方々による合否判定の際に何らかの配慮をぜひお願いしたく思います。
 すでに多くの方が指摘していることかもしれませんが、試験主催者の方々の検討材料の一つに挙げていただきたく思っております。
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21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2015-06-02 14:56:43
この問題は決して良い問題とは思えないのですが(寧ろ悪問かと)。

商68条の9では「商標登録出願とみなされた領域指定」が「国際商標登録出願」と規定されておりますので、単に「商標登録出願」とした場合には、通常の国内出願を表すと思います。
そのため、「国際登録に基づく・・・商標登録出願」とあるのは、「国際登録に基づく」との言葉を冠していても、通常の国内出願と考え「○」でいいのではないでしょうか。

では、「国際登録に基づく商標登録出願」とはなんだ?と考えてみましたが、例えばセントラルアタック後の再出願とかはどうでしょうか。
当該再出願は、単なる「商標登録出願」であり(商68条の32)、かつ、もともとは「国際登録に基づくものであった」ということで、一応「国際登録に基づく商標登録出願」にはなると思います(かなり言葉足らずですが)。
ただし、これらの具体的には自信がありません。

先生も仰る通り、
「「国際登録に基づく団体商標の商標登録出願人」という表現が、国内出願を意味すると考えなければならない理由は存在しない」
というのは同感です。
ただ、46問目(2)が条文上明らかに「×」と導かれるので、(1)と(2)との対比で、「「国際登録に基づく団体商標の商標登録出願人」という表現が、国内出願を意味すると考える」のが良いのかな、と思いました。

最近の短答では「条文をちゃんと知っていますか?」という意向が顕著に表れている気がしますので、その点で、「言葉の定義を正確に知っていますか?」と問いたかったのではないかと思います。
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Unknown (Unknown)
2015-06-02 15:03:58
間違えました。すみません。

×もともとは「国際登録に基づくものであった」ということで
○もともとは「国際登録であった」ということで
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Unknown (吉田)
2015-06-02 16:52:54
コメントありがとうございます。
どうやって特許庁発表の正解を納得したらよいのか、という観点なら、相対的に考えれば、とか、条文や青本の記載からとか、私もプロですからいくらでも説明できます。
が、この問題で2は確かに×ですが、1を×と判断したことが不正解ということでよいのですか、1は○と判断すべき問題ですか、ということです。
条文にも青本にも登場しない表現である「国際登録に基づく商標登録出願」と書いてあれば、「国際登録に際しての我が国の領域指定」や「国際登録後の我が国への事後指定」という意味ではなく、「国際登録の取消後や条約廃棄後のトランスフォーメーションの国内出願」の意味であると解釈しなければならないのですか、ということです。(「旧国際登録」のような表現ではあれば紛れは少ないでしょうが。)
どっちの意味にもとれるということなら○にはできませんよね、ということを言いたいのです。
ご意見ある方は、ぜひ、コメント欄にどうぞ。
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Unknown (元受講生)
2015-06-02 21:52:54
この枝を○とする事に関して、多くの受験機関の色々な講師の方が結構、痛烈に批判されていますよね(吉田先生も含めて)。

しかし、先生のおっしゃるような、「試験主催者の方々による合否判定の際に何らかの配慮」という事は、残念ながらあり得ないでしょうね・・・。

私は、短答式試験というのは、そういった悪問や割れ問、明らかな出題ミスというような問題も1問か2問程度含まれている事もあるからこそ(勿論、含まれていない年もありますが)、最大18問、大半の年では最大21問まで、間違えて良い試験なのだと思っています。42点、すなわち7割取れば100%合格出来ますからね(大半の年では39点で合格出来ます)

最大18問、大半の年では21問まで間違える事が許される試験だからこそ、特許庁は出題ミスといえるような問題1問か2問があったとしても、それについての考慮、配慮は行わないのだと思います。

仮に、ほぼ満点を取らなければ合格出来ないような試験ならば、出題ミスについての配慮も行う様に思います。

勿論、これはただの一個人の意見です。
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半分冗談ですが (えむ)
2015-06-02 22:02:40
実際にやってみて、拒絶理由通知に対する意見書で
「H26問46枝1に照らし拒絶理由に該当しない」旨反論してみるとか。

正直、制度改正やらこういう不手際で受験生を振り回さんで欲しいです。
返信する
問46-1の解釈 (通りすがりの受験生)
2015-06-02 22:46:19
はじめまして。受験生なのですが、興味深い記事でしたので私の見解を述べさせてください。
この記事中にある審査基準の最後に審査便覧27.71がリンクされています。そこにはこう書かれています。
>1.基本的な考え方
(1)出願の種類の特定
国際商標登録出願において、collective mark(団体商標)、certification mark(証明商標)又は guarantee mark(保証商標)のいずれかの商標 に該当する場合には、「Collective mark, certification mark, or guarantee mark」の一括表示がなされ、指定国に通報される。
このため、指定国では、この表示があった場合、上記のいずれの商標
について保護を求めているのかが特定できず、出願人から提出された意
見書・証明書等によりその種類を確認する必要がある。ココマデ

つまり、これを踏まえて審査基準に書かれている意味は、「団体商標、証明商標、保証商標はどれも3U+2460柱で拒絶する」ではなく
「団体商標か証明商標か保証商標のいずれか、と英語で記載されている出願は、その3つのどれで保護を求めているのかわからないため、3U+2460柱で拒絶する」ではないでしょうか。

そして、団体商標であることが明示されている国際商標登録出願(本問のもの)は、審査便覧の2.(3)に書かれているように、団体商標に係る出願として取り扱われます。
(本問のケースは審査便覧の2.(3)U+2462のように、意見書(上申書)で団体商標であると明示したにも関わらず、証明書面を提出していない場合だと思われます。)
そのため、国内出願と同じように補正命令→出願却下になるのだと思います。
返信する
Unknown (吉田)
2015-06-02 23:09:11
 いろいろな方がいろいろなご意見を寄せていただいて、ありがとうございます。
 直前の方の記載に興味があって、再度、商標審査便覧も見てみましたが(記事に一部文字化けがあるようでしたが、3条1項柱書の意味であることは明らかなので、わかります。)、いずれの出願であっても、不明であっても補正命令から出願却下の流れにはなっていないと思います。
 国際商標登録出願は、料金不納以外、方式違反を理由に補正命令から出願却下という流れはないので、本枝が○と言えるのであれば、それは本枝の対象が、純粋な国内出願の場合に限られると思います。
 私に何か勘違いがありますかねえ。
返信する
Unknown (通りすがりの受験生)
2015-06-03 00:14:05
吉田先生へ
>いずれの出願であっても、不明であっても補正命令から出願却下の流れにはなっていないと思います。

私の解釈では、審査基準に書かれていることは、不明であるからこそ3条1項柱書で拒絶なのだと思います。
(いずれの形式で日本国の保護を求めるかが)明確であれば、そのように取り扱うと審査便覧に書かれているのではないでしょうか。はっきりと補正命令が出るとは書かれていませんが、審査便覧の2.(3)、及び2.(3)まるU+2462において、こう書かれています。

>(3)なお、団体商標又は地域団体商標による保護に必要な証明書が提出され、 団体商標又は地域団体商標のいずれかにより保護を求めていることが明ら かな場合は、当該商標として取り扱う。
(ここで必要な証明書が提出されていない場合でも保護を求めているのが明らかになる場合として、)
>まる3 意見書(上申書)において、明示的に団体商標又は地域団体商標いずれ かが選択されている場合には、上記1、2に関わらず、その意思表示に より保護を求めたものと判断する。

このケースが本問にあたり、団体商標として保護を求めたものと判断され、「当該商標として取り扱われる」のではないでしょうか。
つまり、国内の団体商標登録出願において証明書面が未提出の場合の取り扱いと同様になると思いました。

受験生の身で変な解釈をして先生のお時間を取らせてしまっていたらすみません...
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Unknown (吉田)
2015-06-03 01:31:53
はい。おっしゃりたいことはわかりますが、その場合でも補正命令から出願却下はあり得ないですよ。マドプロですから拒絶の通報、すなわち拒絶理由通知です。それらが一貫して審査基準で述べられていることでもありますね。
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失礼致しました (通りすがりの受験生)
2015-06-03 03:52:10
そういうことなのですね。拒絶の通報によって対処するので補正命令はありえない、と。
根本的に誤解、誤理解していたようです。
ありがとうございました。
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