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平成18年度短答式試験[7]

2007-02-18 09:55:00 | 平成18年度(2006年度)過去ログ
[7]は意匠法でした。平成18年度の問題は意匠法が比較的難しかったようです。法学書院の弁理士受験新報の3月号に意匠法について記事を載せますのでそちらもご参考に。(問題文が載っていなかったので追記しました。)


〔7〕意匠登録を受けることができる意匠に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
1 著作物である写真を印刷したカレンダーについて、意匠に係る物品を「カレンダー」として、その写真部分に係る部分意匠の意匠登録を受けることができる場合はない。
2 携帯電話機の液晶表示部に表示される初期画面の図形は、意匠に係る物品を「携帯電話機」として、その図形に係る部分意匠の意匠登録を受けることができる場合がある。
3 登録商標と同一の図形を一部に表した包装紙の意匠について、意匠登録を受けることができる場合はない。
4 外観からは見えないスキーの内部構造について、販売時にカタログで内部構造を視覚的に認識できるように図示することを予定しているときは、意匠に係る物品を「スキー」として、その内部構造の形状に係る部分意匠の意匠登録を受けることができる場合がある。
5 比重と色の異なる2種類の液体を注ぎ重ねて二層状にしたカクテルについて、意匠登録を受けることができる場合がある。

【解説】
1 誤り。ひっかかるとすれば、写真が著作物である点と、「写真部分」が部分意匠の成立要件を満たすかという点です。意匠法が著作物を取り込んで創作される場合があることは、意匠法26条から当然に予定されていることではありますので、写真が著作物であるということだけでは登録を拒否する理由にはなりません。また、写真部分というのは具体的な態様としてどのようなものを想定しているのかは問題文だけからは何ともいえないので、部分意匠の成立要件、すなわち、「一定の形状を占める部分であること」「対比可能な部分であること」の要件を満たす限り、登録を受けることができる場合はありますね。よって誤り。
2 正しい。携帯電話機の液晶表示部に表示される初期画面の図形は、一定の形状を占める部分であり、対比可能であるため部分意匠の成立要件を満たします。よって正しい。本問は改正予定部分であることを知った上で、「改正後であれば登録を受けることができるが、今はできない」と当時考えた人もいたようです。しかし、単純に考えれば、審査基準で携帯電話機のボタン部分のようなものは実例として挙がっていることを考えると本問が登録を受けられない理由はないと思います。
3 誤り。包装紙というのは物品ですし、しかも、模様が描かれているということで意匠登録録の対象となりますね。よって誤り。
4 誤り。「外観からは見えないスキーの内部構造」とあるのがポイントで、意匠は「視覚を通じて美感を起こさせるもの」である以上、外観からは見えない内部構造は、意匠として成立しません。「販売時にカタログで内部構造を視覚的に認識できるように図示することを予定している」というフレーズに惑わされた人もいたようですが、出願人がどのようなカタログを作成するかということと、意匠の成立要件とは全く関係がないですね。ちなみに、問題文は「外観からは見えないスキーの内部構造」という条件なので、「カタログによって内部を見えるようにし、それが需要を喚起することだってあるのではないか。」という反論は成立しません。意匠とは、物品の形状等であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいい、カタログが視覚を通じて美感を起こさせるものであったとしても、それで意匠は成立しないし、そのような考えは、スキーの内部構造が「外観からは見えない」という問題文の条件から外れて考えていることになってしまいます。
5 誤り。気体、液体など、そのもの固有の形態を有していないものは物品と認められませんね(審査基準21.1.1.1(2)②)

本問の正答率は3分の2程度で比較的外した人が多く出た問題でした。

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