[13]です。正しいものの組み合わせを求める問題でした。
【問題文】
〔13〕商標登録出願の不登録事由に関し、次の(イ)~(ホ)の記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1~5のうち、どれか。
ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。
(イ) 商品又は商品の包装の形状であって、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものについては、商標登録を受けることができる場合がある。
(ロ) 商標登録の無効の審判において商標登録を無効にすべき旨の審決が確定し、その商標権が初めから存在しなかったものとみなされた場合には、その無効にされた商標登録を理由として、他人の商標登録出願が拒絶されることはない。
(ハ) 商標法第4条第1項第15号における他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標とは、その商標を指定商品に使用したときに、当該商品がその他人との間にいわゆる親子関係や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがある商標を意味するので、その営業主の業務に係る個別の商品の商標であるいわゆるペットマークは、含まれない。
(ニ) 商標法第4条第1項第8号にいう「他人」には、法人格のない社団も含まれる。
(ホ) 商標法第4条第1項第10号にいう「需要者の間に広く認識されている商標」には、主として外国で商標として使用され、それがわが国において報道され又は紹介された結果、わが国において広く認識されるに至った商標も含まれる。
1 (イ)と(ロ)
2 (イ)と(ホ)
3 (ロ)と(ハ)
4 (ハ)と(ニ)
5 (ニ)と(ホ)
【コメント】
(イ) 問題文前半は4条1項18号で、問題文後半は3条2項です。
商品又は商品の包装の形状は通常は3条1項3号で登録を受けられないわけですが、3条2項の適用を受けることができる場合には、登録を受けることができます。
しかし、商標権は、存続期間の更新(19条2項)により半永久的に存続する権利であるため、商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標について商標登録を認めると、その商品自体又は商品の包装自体についての生産・販売の独占を事実上半永久的に許し自由競争を制限するおそれがあります。
そこで規定されたのが4条1項18号なわけですから、問題文は話が逆ですね。誤り。
識別力と4条1項各号は話が違いますので、いくら識別力があっても、4条1項各号に該当する場合には登録を受けることができない、という基本が理解できていれば、外すことはないはずですね。
これで(イ)は誤りですから、選択枝1と2はもう選ぶ余地はありません。1又は2を選んだ人は問題文を読み間違えたとしても完全な実力不足です。
(ロ) 4条1項11号だけを考えると無効審決が確定した商標登録を理由に出願が拒絶されることはないですが、4条1項13号の存在があるため、そのほかの条文を考えるまでもなく誤りです。
これで3も選択の余地はありません。
(ハ) 前半は広義の混同の話をしていますね。問題文後半では、個別の商品の商標が4条1項15号の対象としては含まれないという話はありませんね。「混同」は狭義の混同と広義の混同とがあるという基本事項の話にすぎず、これも誤り。
そうすると、4も選択の余地はないので、正解は5ということになります。(イ)から(ホ)までの五つの枝のうち、三つ判断できれば正解に至れるという問題であるという点では、簡単な問題といえることになります。
念のため、(二)と(ホ)も見ておきましょう。
(二) 「他人」の意味としては審査基準では、「本号でいう「他人」とは、現存する者とし、また、外国人を含むものとする。 」という話しかなく、青本にも本問の解答に関する直接的な言及はありません。しかし、網野 商標(第6版) 334頁には、「名称とは、法人、組合、法人格のない社団等の名称であって商号も含まれる。」との記載があり、この記載は、受験界のテキストにも広く説明がされているところですので、これは正しい。
(ホ) 4条1項10号の周知というのはわが国での周知を意味するところ、審査基準には、「6.外国の商標の我が国内における周知性の認定にあたっては、当該商標について外国で周知なこと、数カ国に商品が輸出されていること又は数カ国で役務の提供が行われていることを証する資料の提出があったときは、当該資料を充分勘案するものとする。」とあり、外国で周知であることは、日本における周知性の判断の際に「勘案される」となっています。この基準は外国で周知であれば日本でも周知であると自動的に判断するということではなく、外国での周知度も勘案して日本での周知性を判断するということです。
本問では、わが国において広く認識されるに至っていることは問題文に示されていますので、そのまま「正しい」と判断してよいとも思われます。ただ、この問題は、使用されたのは主として外国であり、日本においてはあまり使用自体はされていないという状況にあるとしても、「日本において周知である」と認定してよいのか、というところにあります。
この点、網野同書352頁には、「使用の方法・態様としては、必ずしも直接商品あるいは役務の提供の用に供する物等に使用されることを要しない。商標を付した商品が現実に市場に出回らず、役務が市場において提供されていなくても、その商標が新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどにおいて広告され、その結果、何人かの一定の商品(役務)の商標であることが広く需要者・取引者間に知られるに至った場合には周知商標であるといえよう。」とあります。すなわち、周知か否かの認定については、わが国で実際に「使用」されていることは必ずしも条件にはならない、ということを理解しておきましょう。
なぜこれが問題になるのかというと、過去、わが国で使用されていないような商標について、それを理由に周知商標と認定しなかった判例があるためです。宣伝広告が発達した現代においては、そのような考え方は妥当ではなくなっているということです。
なお、周知商標の保護について定めたTRIPS協定16条2かっこ書きでは周知の決定については「商標の普及の結果として獲得された当該加盟国における知識」も考慮するとありますが、これは、商品等の普及の結果ではなく、商標の普及の結果、ということですなわち宣伝広告の結果という意味です。TRIPS協定においては、必ずしも商品の普及がなくても周知の認定にはついては考慮しなければならない旨規定されていることも実はこの判断には関係しているのです。
☆この問題は比較的高正答率でした。○か×かの判断の問題としては、簡単な問題だといえるでしょう。この問題は落としたくないところです。
【問題文】
〔13〕商標登録出願の不登録事由に関し、次の(イ)~(ホ)の記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1~5のうち、どれか。
ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。
(イ) 商品又は商品の包装の形状であって、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものについては、商標登録を受けることができる場合がある。
(ロ) 商標登録の無効の審判において商標登録を無効にすべき旨の審決が確定し、その商標権が初めから存在しなかったものとみなされた場合には、その無効にされた商標登録を理由として、他人の商標登録出願が拒絶されることはない。
(ハ) 商標法第4条第1項第15号における他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標とは、その商標を指定商品に使用したときに、当該商品がその他人との間にいわゆる親子関係や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがある商標を意味するので、その営業主の業務に係る個別の商品の商標であるいわゆるペットマークは、含まれない。
(ニ) 商標法第4条第1項第8号にいう「他人」には、法人格のない社団も含まれる。
(ホ) 商標法第4条第1項第10号にいう「需要者の間に広く認識されている商標」には、主として外国で商標として使用され、それがわが国において報道され又は紹介された結果、わが国において広く認識されるに至った商標も含まれる。
1 (イ)と(ロ)
2 (イ)と(ホ)
3 (ロ)と(ハ)
4 (ハ)と(ニ)
5 (ニ)と(ホ)
【コメント】
(イ) 問題文前半は4条1項18号で、問題文後半は3条2項です。
商品又は商品の包装の形状は通常は3条1項3号で登録を受けられないわけですが、3条2項の適用を受けることができる場合には、登録を受けることができます。
しかし、商標権は、存続期間の更新(19条2項)により半永久的に存続する権利であるため、商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標について商標登録を認めると、その商品自体又は商品の包装自体についての生産・販売の独占を事実上半永久的に許し自由競争を制限するおそれがあります。
そこで規定されたのが4条1項18号なわけですから、問題文は話が逆ですね。誤り。
識別力と4条1項各号は話が違いますので、いくら識別力があっても、4条1項各号に該当する場合には登録を受けることができない、という基本が理解できていれば、外すことはないはずですね。
これで(イ)は誤りですから、選択枝1と2はもう選ぶ余地はありません。1又は2を選んだ人は問題文を読み間違えたとしても完全な実力不足です。
(ロ) 4条1項11号だけを考えると無効審決が確定した商標登録を理由に出願が拒絶されることはないですが、4条1項13号の存在があるため、そのほかの条文を考えるまでもなく誤りです。
これで3も選択の余地はありません。
(ハ) 前半は広義の混同の話をしていますね。問題文後半では、個別の商品の商標が4条1項15号の対象としては含まれないという話はありませんね。「混同」は狭義の混同と広義の混同とがあるという基本事項の話にすぎず、これも誤り。
そうすると、4も選択の余地はないので、正解は5ということになります。(イ)から(ホ)までの五つの枝のうち、三つ判断できれば正解に至れるという問題であるという点では、簡単な問題といえることになります。
念のため、(二)と(ホ)も見ておきましょう。
(二) 「他人」の意味としては審査基準では、「本号でいう「他人」とは、現存する者とし、また、外国人を含むものとする。 」という話しかなく、青本にも本問の解答に関する直接的な言及はありません。しかし、網野 商標(第6版) 334頁には、「名称とは、法人、組合、法人格のない社団等の名称であって商号も含まれる。」との記載があり、この記載は、受験界のテキストにも広く説明がされているところですので、これは正しい。
(ホ) 4条1項10号の周知というのはわが国での周知を意味するところ、審査基準には、「6.外国の商標の我が国内における周知性の認定にあたっては、当該商標について外国で周知なこと、数カ国に商品が輸出されていること又は数カ国で役務の提供が行われていることを証する資料の提出があったときは、当該資料を充分勘案するものとする。」とあり、外国で周知であることは、日本における周知性の判断の際に「勘案される」となっています。この基準は外国で周知であれば日本でも周知であると自動的に判断するということではなく、外国での周知度も勘案して日本での周知性を判断するということです。
本問では、わが国において広く認識されるに至っていることは問題文に示されていますので、そのまま「正しい」と判断してよいとも思われます。ただ、この問題は、使用されたのは主として外国であり、日本においてはあまり使用自体はされていないという状況にあるとしても、「日本において周知である」と認定してよいのか、というところにあります。
この点、網野同書352頁には、「使用の方法・態様としては、必ずしも直接商品あるいは役務の提供の用に供する物等に使用されることを要しない。商標を付した商品が現実に市場に出回らず、役務が市場において提供されていなくても、その商標が新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどにおいて広告され、その結果、何人かの一定の商品(役務)の商標であることが広く需要者・取引者間に知られるに至った場合には周知商標であるといえよう。」とあります。すなわち、周知か否かの認定については、わが国で実際に「使用」されていることは必ずしも条件にはならない、ということを理解しておきましょう。
なぜこれが問題になるのかというと、過去、わが国で使用されていないような商標について、それを理由に周知商標と認定しなかった判例があるためです。宣伝広告が発達した現代においては、そのような考え方は妥当ではなくなっているということです。
なお、周知商標の保護について定めたTRIPS協定16条2かっこ書きでは周知の決定については「商標の普及の結果として獲得された当該加盟国における知識」も考慮するとありますが、これは、商品等の普及の結果ではなく、商標の普及の結果、ということですなわち宣伝広告の結果という意味です。TRIPS協定においては、必ずしも商品の普及がなくても周知の認定にはついては考慮しなければならない旨規定されていることも実はこの判断には関係しているのです。
☆この問題は比較的高正答率でした。○か×かの判断の問題としては、簡単な問題だといえるでしょう。この問題は落としたくないところです。
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