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平成17年度短答試験[14]

2005-08-23 08:20:00 | 平成17年度(2005年度)過去ログ
[14]は補償金請求権でしたね。この問題は落としてはいけません。
【問題文】
〔14〕特許出願の出願公開の効果に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

1 特許出願人が、当該特許出願に係る発明を業として実施している第三者に対して、出願公開後に当該特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をし、その後、特許請求の範囲を減縮する補正を行った場合、その第三者の実施しているものが補正の前後を通じて当該発明の技術的範囲に属するときは、再度の警告をしなくとも、当該特許権の設定の登録後に補償金請求権を行使することができる。
2 出願公開に係る補償金請求権は、出願公開後に特許出願が放棄され、又は取り下げられた場合のみ、初めから生じなかったものとみなされる。
3 特許権者でない甲が、出願公開に係る補償金を当該特許権の設定の登録後に支払った場合、特許権者は、甲に対し、当該特許権の行使をすることができない。
4 特許権の設定の登録の日から3年を経過したときは、その特許権に係る特許出願の出願公開に係る補償金請求権を行使することができる場合はない。
5 出願公開に係る補償金の支払いを請求するための警告は、内容証明郵便でなされなければならない。

【コメント】
正しいものは1でした。圧倒的に高い正答率だったので、この問題を落として1点足りなかったという人はこれが敗着でしょう。

1 この枝自体が○となる根拠を問われれば最高裁の昭和63年7月19日第三小法廷判決ということになるかと思われますが(特許判例百選第三版 有斐閣 41番の判決参照)、判例を知っているかどうかというレベルではなくて、受験生としては、基本書記載事項にすぎない基本事項といえるでしょう(例えば吉藤13版 406頁、中山工業所有権法(上)204頁~205頁)。
 ここは、まず条文を見ておきましょう。65条1項によれば、特許出願人は出願公開があった後に「特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたとき」というのが補償金請求権の発生要件になっています。ここでは「出願公開に係る発明」でもなければ、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明でもなく、「特許出願に係る発明」の内容を提示した警告が必要であるということになっています。
 そうすると、途中で補正があった場合には、補正には遡及効があるため、「特許出願に係る発明」というのは当然に補正後のものを意味することになるので、基本的には、いくら補正前に警告をしていても、補正があった場合には内容が変わっているわけですから「特許出願に係る発明の内容を提示した警告」については遡及的に考えればしていなかったことになってしまう。これが原則です。
 ところが、上記最高裁判決を受けて、各基本書に掲載されるに至った内容は、「補正があった場合であっても、減縮補正の場合に、減縮後なお実施品が特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲に入っているのであれば再度の警告は不要である、という判断が最高裁で示された、ということで、ここが条文の理解にプラスして必要な基本的知識ということになりますね。

2 これは特許法65条4項の話ですね。出願の放棄、取り下げ、却下、拒絶査定審決確定、それから、猶予された特許料不納により特許権が遡及消滅したとき、無効審決確定により特許権が遡及消滅したとき
に、補償金請求権は「遡及消滅」します。よって誤り。
 勘違いしている人も多いですが、上記事由があったときに「遡及消滅する」という理屈である以上、出願がまだ審査係属中という状態では、補償金請求権自体は発生しています。拒絶が確定したり、出願が取り下げられたりしたらそのようなアクションがあったときに初めて「遡及消滅」する、です。

3 これは特許法65条3項の話ですね。補償金請求権の行使は、特許権の行使を妨げません。よって誤り。

4 これは特許法65条5項における民法724条の読替え規定の話ですね。民法724条の損害賠償請求権の時効の規定は、設定登録前に実施の事実及び実施者を知ったときには、「知って3年」を「設定登録の日から3年」と読み替えるという規定です。ということは、設定登録後に知ったときには読替えにはならず、知って3年で時効ということになります。この場合には、当然、設定登録の日から3年を過ぎている場合もあるわけです。よって誤り。

5 65条1項は、「発明の内容を提示して警告をしたとき」というのが補償金請求権の発生要件の一つである旨明確に規定しており、「提示」というのは、法的には水戸黄門の印籠のように「ひかえおろう」と相手に見せれば足ります。
 法律上はそうなのですが、後で争いになったときに、上様は確かに印籠を提示した、悪徳のききょう屋は、いや上様から印籠を提示された事実はない、見せた、いや見ていない・・・などという水掛け論になってしまっては面倒なので、現実には内容証明郵便にて郵送しておくことで後の立証を容易にする、というだけにすぎず、内容証明郵便での警告が義務づけられているわけではありませんね。誤り。











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