本日、出題されました論文試験の問題は以下の通りです。
誤植があったら申し訳ありません。明日の特許庁HPをご確認下さい。
[特許・実用新案]
【問題Ⅰ】
甲は平成22年1月4日、明細書に発明a1を記載し、請求の範囲に発明a1の上位概念である「発明A」を記載した国際出願Xを、日本国を指定国から除外しないで外国語で行った(特許法第184条の3第1項の規定により特許出願とみなされた国際出願Xを「外国語特許出願X」という。なお、外国語特許出願Xは特許法上の記載要件をすべて満たしているものとする。)。国際出願Xは、平成23年7月15日、国際公開された。
そして、甲は、平成24年6月1日、外国語特許出願Xについて特許法の規定にしたがった翻訳文を提出し、適法に国内移行手続を完了した。さらに、甲は、平成24年7月2日、出願審査の請求をすると同時に、発明Aの下位概念である発明a2を明細書に追加する補正(「補正1」という。)をした。
一方、乙は、平成22年11月1日、明細書に発明a1及びa2を記載し、特許請求の範囲に、請求項1として「発明a1」を、請求項2として「発明a2」をそれぞれ記載した特許出願Yを行い、平成25年1月10日、出願審査の請求をした。
以上を前提とし、以下の各設問に答えよ。ただし、各設問はそれぞれ独立しているものとする。また、各設問で明示した場合を除き、いかなる補正も出願名義人の変更もされていないものとし、かつ、乙は甲と無関係に発明を完成させたものとする。
1.甲は国内法人である。甲の従業員イは、上司ロから電子部品の開発の指示を受け、発明Aに係る電子部品を単独で開発した。発明Aは職務発明であるとする。
(1) 上司ロが従業員イとともに発明Aの発明者となるか否かはどのような事項を考慮して判断されるか、説明せよ。
(2) 特許法第35条(職務発明)の規定の内容を簡潔に述べた上で、同条が設けられている趣旨について説明せよ。
2.特許法第29条の2の規定が設けられている趣旨について述べた上で、特許出願Yが、外国語特許出願Xを特許法第29条の2の「他の特許出願」として、同条の規定により拒絶されるべきものか、説明せよ。
3.乙は、平成24年4月頃から発明a2を業として実施しているものとする。
(1) 甲は、外国語特許出願Xについて、補正1がいわゆる新規事項の追加に当たるとの拒絶理由通知を受けたので、意見書を提出することなく、補正1により追加した発明a2を削除する補正(「補正2」という。)をした。特許請求の範囲は「発明A」のままで甲が特許権を取得したとき、発明a2を実施している乙に対し、甲は当該特許権を行使できるか述べよ。
(2) 甲は、乙の上記実施行為を知り、明細書に発明a2を追加する補正1を行ったという経緯があったものとする。甲による補正1にはどのような意図があったと考えられるか。なお、甲は、乙が特許出願Yをしていることを知らなかったものとする。
【100点】
【問題Ⅱ】
甲は、レーザー加工装置に係る発明イを特許請求の範囲に記載した特許出願Xを行い、特許権Pの設定の登録がされた。明細書、特許請求の範囲又は図面については、補正も訂正もされていない。一方、乙は、装置αを製造、販売している。当該行為は発明イの実施に該当する。
以上のことを前提として、以下の各設問に答えよ。ただし、設問1及び2はそれぞれ独立しているものとする。
1.乙は、装置αの製造、販売行為を特許出願Xの出願後に開始した。
(1) 特許権Pの設定の登録前になされた乙による装置αの製造、販売行為について、甲は乙に対してどのような請求をすることが考えられるか、説明せよ。
また、その請求は、乙が特許出願Xに係る発明イの内容を知らないで装置αを開発した場合も同様にすることができるか、説明せよ。
なお、乙は特許権Pについていかなる実施権も有していないものとする。
(2) 丙は、特許権Pの設定の登録前に乙から購入した装置αを、特許権Pの設定の登録後に業として使用している。乙が上記(1)における甲の請求に応じることによりその請求権が消滅していた場合、甲は、丙に対して装置αの使用行為の差止めを求めることができるか、説明せよ。
なお、乙及び丙は特許権Pについていかなる実施権も有していないものとする。
2.乙は、装置αの製造、販売行為を特許出願Xの出願前に開始し、特許権Pの設定の登録後も当該行為を継続して行っている。特許出願Xは、発明イが甲と丁との共同発明であるにもかかわらず、丁に無断でなされたものであり、乙はこの事実を知っていた。
(1) 甲は、特許権Pに基づき乙に対して装置αの製造、販売行為の差止めを求める訴えを提起した。この訴訟において、乙はどのような主張をすることが考えられるか、説明せよ。
(2) 丁は、特許権Pに係る自己の持分に基づき、乙に対して単独で装置αの製造、販売行為の差止めを求めることを検討している。この差止めを求めるにあたり必要な特許法上の手続としてどのようなものが考えられるか、説明せよ。
【100点】
[意匠]
【問題】
意匠法における部分意匠制度について、以下の各設問に答えよ。
1.部分意匠制度の概要について、制度趣旨及び公知の意匠と意匠登録出願に係る部分意匠との類否判断に言及しつつ、説明せよ。
2.甲は、平成25年1月25日に意匠に係る物品を「ゲーム機用コントローラ」とし、コントローラスティックの形状を「意匠登録を受けようとする部分」とする部分意匠イを出願した。乙は、同年6月10日に自ら創作したゲーム機用コントローラの物品全体の形状に係る意匠ロを出願した。部分意匠イのコントローラスティックの形状は、意匠ロのコントローラスティックの形状と同一であった。
ただし、いずれの出願も、優先権の主張を伴うものではなく、秘密意匠に係るものでもないものとする。
(1) 部分意匠イが意匠登録を受け、平成25年5月30日に意匠公報が発行された場合、意匠ロは、意匠登録を受けることができるか、関係する条文を挙げつつ、説明せよ。
(2) 部分意匠イが意匠登録を受け、平成25年7月1日に意匠公報が発行された場合、意匠ロは、意匠登録を受けることができるか、関係する条文を挙げつつ、説明せよ。
(3) (2)において、部分意匠イ及び意匠ロがともに意匠登録を受けたと仮定した場合、乙が業として登録意匠ロに類似する意匠の実施をしようとするときに留意すべきことを説明せよ。
3.パリ条約の同盟国に住所を有する丙は、平成25年1月25日にパリ条約の同盟国であるX国において椅子の全体形状に係る意匠ハの出願Aをした。丁は、同年3月5日に我が国に意匠に係る物品を「椅子」とし、自ら創作した背もたれの形状を「意匠登録を受けようとする部分」とする部分意匠ニを出願し、丙は、意匠ハについて、同年7月5日に我が国に出願Aを基礎としたパリ条約に基づく優先権の主張を伴う出願をした。部分意匠ニは、意匠ハの一部と類似するものであった。
ただし、いずれの出願も、特に示した場合を除き、優先権の主張を伴うものではなく、秘密意匠に係るものでもないものとする。
(1) 丙が我が国で意匠ハについて意匠登録を受け、意匠公報が発行された場合、部分意匠ニは、意匠登録を受けることができるか、関係する条文を挙げつつ、説明せよ。
(2) (1)において、意匠ハ及び部分意匠ニがともに意匠登録を受けたと仮定した場合、丁は、丙による登録意匠ハの業としての実施に対し、意匠権の行使をすることができるか、説明せよ。
【100点】
[商標]
【問題Ⅰ】
商標法第1条の趣旨を簡潔に述べた上で、同条から導き出される商標権者の義務について説明し、それらの義務が果たされていない場合の商標権者が受ける可能性のある不利益について述べよ。
解答に際して、マドリッド協定の議定書に基づく特例は、考慮しなくてよい。
【50点】
【問題Ⅱ】
日本国内の地域ABC(注:ABCは地域の名称である)の多くの飲食店では、地元特産の牛肉を使った牛丼を「ABC牛丼」の名称で提供しており、また、「ABC牛丼」をパック入りにしてインターネットで販売したところ、好調な売れ行きである。地域ABCにおいて、「ABC牛丼」の提供及び販売促進のための団体甲が結成された。そこで、甲は、「ABC牛丼」の名称について、団体商標又は地域団体商標の商標登録を行いたいと考え、弁理士乙に商標登録出願の代理を依頼した。
この場合において、以下の各設問について答えよ。
解答に際して、マドリッド協定の議定書に基づく特例は、考慮しなくてよい。
1.団体商標及び地域団体商標のそれぞれの制度趣旨について説明せよ。
2.「ABC牛丼」の名称について、地域団体商標の商標登録出願を行うことにした場合、出願手続前に、乙が確認すべき事項について説明せよ。
3.地域団体商標の商標登録出願をするにあたり、乙が「ABC牛丼」に関し事前に調査したところ、飲食店主の丙が所有する「牛丼の提供」を指定役務とするゴシック体の「ABC牛丼」の文字と図形からなる登録商標イがあることがわかった。役務「牛丼の提供」及び商品「牛丼」を指定役務・指定商品とする甲の地域団体商標「ABC牛丼」は、商標登録を受けることができるか否かについて理由を付して述べよ。
なお、丙の登録商標イには、無効の理由は存在しないものとする。また、役務「牛丼の提供」及び商品「牛丼」は類似しないものとする。
【50点】
自分史上最大の山、後悔はねぇ!
本当にありがとうございました!
今年は特に、吉田先生の青本条文ゼミを何度も聞き返していた効果が表れたと思いました!趣旨問題でも先生の講義音声を思い出し、何とか対処出来ました。また、酒井先生のワンポイント講座で、184や利用など理解が曖昧だった箇所に不安がなくなっていたのも良かったと思います。