先日専門学校でやったワークに「お願いします」と言う台詞を用いて、相手役に椅子からたちあがってもらう、というペアワークをやりました。
このワークのポイントは、戦略をもって戦術をたくさん試していくことです。
例えば、ストレートに行くなら「ごめんなさい」と弱弱しい声で言ってみたり、土下座したり、足にすがりついたりして、懇願してみたりします。
この戦略は、相手役に「同情させる」ということです。
例えば、コブシを握り締め、恐ろしい形相で、言葉としては「お願いします」だけれど、根底に「立たんかコラ!!」という音色が聞こえてくる。そんな場合もあります。
この場合の戦略は「恐怖を感じさせる」です。
日本語の場合はあまり気にしませんが、この戦略はどれも「させる」という他動詞なんですね。
英語で例えば驚く、と言う場合は「be surprised at」と受身に表現します。
つまり英語で「suraprise」は驚かせるです。
「興味を持つ」も「be interested in」と表現します。
interestは、興味を持たせる、です。
戦略を持って、いろんな戦術を試す。これはそのまま演劇の稽古の過程です。
そして、この戦略を立てるときに考えるべきなのが、factorつまり要因です。
数学で因数分解、というのがありますが『たちあがる』という行為には、
「お願いします」という台詞と演技を通して何らかの働きかけが相手役にあり、その働きかけに呼応して何らかの感情が相手役の中に湧き
上がり、それが相手役を立ち上がらせるわけです。
それは先週やったなんらかの立ち上がらせるエネルギーが相手役の中でほとばしるというわけです。
ですから、かれを「立ち上がらせる」には、そのエネルギーの出所となる要因を見つけ出す、考え出さなければなりません。
それは、恐怖からなのか、同情からなのか、もっと近くに寄って見てみたいという興味なのか。
いずれにせよ、そのシーンが成立するためには、その動き、台詞が生まれる要因を見出さなければならないのです。
そして、それは多くの場合、共演者の働きかけから生まれるのです。
最近の「演出家の眼」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事