7発のミサイル(スカッド、ノドン、テポドン)発射と、日本人記者団をピョンヤンに招いて、キム・ヨンナム氏への会見インタビュー。このふたつは別々の事柄ではない、と断言してもいいと思う。
先日、離散家族再会事業の一環として、実母と姉に再会したキム・ヨンナム氏が、金剛山のホテルで記者会見を開いたとき、妻だった横田めぐみさんの「死」や遺骨問題に関した発言には、本当に夫婦だったの?と疑わせるほど、愛情というものがひとかけらもない冷淡なものだった。その〈反省〉があったのだろう。というか、当局に注意されたのだろうと思う。
今日の会見では一転、感情を込めたものに変わった。だがその一方で、「妻の死」をなんとしてでも認めさせよう、という意図も見え見えだった。つまり、拉致問題への幕引きをキム・ヨンナム氏は一心不乱に演じた、ということだ。当局の意図が今日も透けて見える会見だった。
金正日政権は、自ら蒔いた(矛盾に満ちた)タネだったとはいえ、めぐみさん拉致問題で相当いらついていることは事実だ。横田さん夫妻始め日本側は、死亡したという日時や火葬したという日時、他人の骨が混じったかも知れない、といったキム・ヨンナム氏の発言に対して、火葬場管理人が否定した発言など、あまりにも杜撰な結果から、めぐみさんが死亡した、ということすら全く疑わしいと考えている。
そういう日本側の疑惑を一挙に覆したい、ということも今日の会見の目的だったに違いない。その意味では、拉致問題解決を狙った一種の瀬戸際外交であり、キム・ヨンナム氏は、日本に向けて発射された〈ノドン〉だった。〈ノドン〉である以上、これは記者会見に名を借りた「恫喝外交」そのものである。
ところで本物のミサイル発射である。いったいなぜこの時期に発射したのだろうか。私の結論はこうである。核やミサイル問題をめぐる6カ国協議での日米と韓・中・ロの間を引き裂くことを狙ったものだった。
「拉致問題に執拗にこだわる日本」、「2カ国会議には絶対乗ってこないアメリカ」。この2カ国と韓・中・ロを引き離すことができれば、外交の勝利だ、と思っているに違いない。
ミサイル7発という数字は、分断を狙うに十分だったのかどうか、そこに疑念が生じれば、北朝鮮はあと2~3発発射するかもしれない。そして発射したときに、北朝鮮の分断計画は成功するのか否か、がもっとはっきりする。
「恫喝外交」は成功しない、と誰もが思う。しかし、北朝鮮はこの「恫喝外交」で生き延びてきた。ミサイル発射といい、キム・ヨンナム氏会見といい、同じ日に生じたふたつの出来事は、決して偶然ではない。そのことは十分認識しておいたほうがいい。
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