選挙で敗北したからといって、じゃ、サヨナラというわけにはいかない。そのイラクを見れば、シーア派、スンニ派、そしてクルド族を含めた宗教・民族の対立はますます血なまぐさくなるばかりで、肝心の治安は一向に改善しない。
本来、介入すべき事柄ではないことに首を突っ込んだツケが、いまブッシュ政権の首を絞めている。ボブ・ウッドワード氏の著書『攻撃計画~ブッシュのイラク戦争~』を読むまでもなく、誠に権力者というものは、奢るもの久しからず、である。
と、対岸の火事か、と思っているうちに、ゆゆしき問題が起きている。意図は奈辺にあるのか定かではないが、命令を出した側の幹事長でさえ、懸念の発言をした。
《以下引用》
「自民党の片山虎之助参院幹事長は10日の記者会見で、菅義偉総務相がNHKの短波ラジオ国際放送で拉致問題を重点的に放送するよう命令したことに関し「『命令』という名前が良くない。他の表現にするか、仕組みを直さないと」と述べ、放送法見直しが必要との考えを示した。さらに「来週から委員会で議論する」と語った」(11月10日『毎日新聞』)
命令という言葉を他の言葉に置き換えたとしても、また仕組みを直す、にしても、政府という権力が放送内容に立ち入ることは許されない、いわば大原則である。『拉致問題』という重大な人権侵害事件であるから、いいだろうとか、当然だ、という考えも、世論的にはあるにしても、政府という国家を具現する大臣が、NHKという一部財源を負担している機関だからといって、内容にまで立ち入った命令を出すなどということは、過去の歴史を持ち出すまでもなく、断じてあってはならないことである。
管総務相は、命令は民放にまで及ぼすものではない、などといっているそうだが、そういう問題ではない。民放の代表者たちは、これまでのいきさつでいえば、総務相の命令に一様に反発、批判をしてきた。当たり前である。NHKは自身の立場をもっと明確にするべきではないか。
『更迭』で、権力の内側が透け、『命令』で権力の姿が浮き彫りになる。期せずして、日米の権力者のありようが垣間見える数日間だった。
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