日本国内でも南北関係に劇的な変化がやってきた。在日大韓民国民団と在日朝鮮人総連合会との和解である。
《以下引用》
「17日、在日大韓民国民団(以下、民団。団長ハ・ビョンオク)と在日朝鮮人総連合会(以下、朝鮮総連。議長ソ・マンスル)が約50年ぶりに歴史的な代表会談を持ち、その間の対立関係を清算して和解の道を歩むことを公式発表した。(中略)民団が創設された1946年、朝鮮総連が組織された1955年以来、初めて迎える歴史的な瞬間だった。彼らは中央本部の庭園に移動して記念写真を撮影し、9階の会議室に移動して懇談した。
ソ議長が「本当に長い間でした。これから私たちが力を合わせて、子孫には和解と協力の時代を開いてあげましょう」と話した。ハ団長は「昨日、日本のマスコミに大きく報道されると、午後は電話がずっと鳴りっぱなしでした」「それほど同胞達は、今回の宣言を待っていたのではないかとあらためて思いました」と答えた。(中略)ソ議長はハ団長のこの言葉について「過去のことはもう忘れて、これから私達が同胞達の生活と民族教育などについて協力していくことが重要です」と話した」(5月18日『OhmyNews』)
和解したふたつの組織は、これまではいずれも本国政府の対北、対南政策に大きく左右されながら対立・対決してきた。普段の生活では食事を一緒にしたりといった仲の良さだが、分断にまつわる政治的な問題になると、極端に対決的となった。従って今回の和解は、当然ながら本国政府の意向を反映している、とみて間違いない。
では、この和解はどっちにとって「有利」に働くのだろうか?おそらく北朝鮮側ではないか、と私は推測する。核問題や偽札・麻薬問題、それに拉致問題をきっかけにした経済制裁など、孤立化を余儀なくされている金正日政権とすれば、ここは韓国をしっかりと味方につけておきたい、と思っているはずだからである。盧武鉉政権も、北朝鮮の孤立化は望んでいない。そのためには、まず両組織が拮抗してきた在日社会が、足並みを揃えたことはその一歩と私には映る。
もちろん今回の日本でのふたつの組織の和解は歓迎すべきことではある。在日のあり方をめぐって双方が対立していたのでは、その権利もおぼつかない。年に1万人もの在日韓国・朝鮮人日本に帰化するという現実の前で、自分たちのアイデンティティをしっかりと守ることは、大事なことである。
「これから私たちが力を合わせて、子孫には和解と協力の時代を開いてあげましょう」とソ・マンスル議長が語った言葉を純粋に理解したい。しかし、その言葉の背景に一抹の疑義を抱くのは、「陰」を感じるからである。
明日からその「陰」の姿をシリーズでお送りする。題して『黄長はかく語りき』。黄長とは、金日成・金正日親子の側近として使え、北朝鮮の「主体思想」を確立した人物で、1997年2月に韓国に亡命した。北朝鮮政治の裏側を知悉する大物側近の亡命とあって、彼が何をしゃべるのか、世界中が注目した人物でもあった。
私は黄長氏へのインタビューは、自分にとって欠かせない仕事だと思った。なぜならば、金正日総書記がいったい何を考えている人物なのか、北朝鮮という国家をどういう方向に向かわせようとしているのか、その実像はベールに包まれたままだからだった。
民団と朝総連という国内の在日組織が和解をした背景を理解する上でも、黄長氏が語る言葉は貴重だ。明日から連載です。
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