若者向けの服を売るショップに勤めていたブラジル人の友人がその会社を辞めた。
彼は大学在学中からいろいろなお店に短期間勤めては辞めるということを繰り返していた。そして、経営学部を卒業後、父親のコネを使ってこの服の会社に就職し、正職員として店内で服の販売に当たっていた。
彼の話によれば、給料は安い基本給があって、あとは歩合制。売れば売っただけ給料が増えるという仕組みである。彼以外の店員はみな高卒で、彼が唯一の大卒。アメリカ人の客が来店した時には、店員で唯一英語が話せる彼がお客に対応したそうである。
初めて1年間同じ会社に勤められたわけだが、元々輸出・輸入関係の会社に勤めたいだけでなく、安い給料で拘束時間も長い仕事に疲れたためにやめることにしたそうである。これからは彼本来の希望である輸出・輸入関係の仕事を探すそうだ。
日本もそうだが、ブラジルでは高卒ではなかなか給料のいい仕事に就くことはできない。販売員などはその代表格で、疲れるわりには給料は良くない。彼以外の店員がすべて高卒であったということからもお分かりいただけるかと思う。
ただ、大学を出たからといって高い給料の仕事が保証されているわけではない。日本では大学を卒業した翌月の4月から会社の新入社員として働けるが、ブラジルで卒業後にすぐ就職できる人は少ない。ブラジルの会社は即戦力を希望しているため、新卒などというのは使い物にならないのだ。だから、若年者の失業率は他の年齢層より高い。
従って、賢い学生は大学3年生あたりから、希望する業界の会社に研修生として入る。そして、雀の涙ほどの安い給料で働いて経験を積み、その働き振りが上層部に気に入られると大学卒業後にそのままその企業に就職するというパターンが多い。
ブラジルの多くの国民は最低給料420レアル(時価230ドル)を月給としてもらっている人がほとんどである。しかし、この給料でははっきり言って生活はできない。従って、家族が少ない給料を出し合って一つ屋根の下に住んでいるという人が実に多い。
でも、不思議なことに超リッチな生活をしている富裕層もいる。そういう家庭は高級車を乗り回し、休みは海外旅行したりと、贅沢三昧である。最低給料をもらっている人と超高給をもらっている人、その差には愕然とする。
日本は資本主義国家であるにも関わらず、つい10年程前までは最も社会主義的な国で一億総中流とも言われていたのである。それがバブルがはじけて日本の会社がリストラが必要なために、派遣法を改正した。その結果社会における非正社員の割合が多くなり、階級差が生まれ、働いても報われないワーキングプアなる労働者を創出してしまった。そして、未来に希望を持てない若者が、キレて無差別大量殺人などの事件を起こしている。
貧富の差が大きくなると治安は概して悪くなるのはこの日本の例を見れば明らかであろう。ブラジル政府にはその逆の流れ、社会格差の是正を通じた治安の改善を望みたい。
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