この本の著者ジェフリー-ケインはIT系企業の発展史をレポートした著作で賞を取っている本格派ジャーナリストで、AIが邪悪な勢力によって悪用された場合、どんな悲劇がもたらされるかをリアルに伝えてくれています。
それはまるでSF物語のようですが現実になってしまっており、ウイグルでは無数の監視カメラがネットと繋がって、不気味なAIが人民を管理する社会になっています。
これはオーウェルが「1984年」で描いたディストピア(暗黒郷)とそっくりで、人々は家の中ですら監視カメラに怯えて暮らし、ネットの書き込みなどは当然好きに出来ず、サイトのアクセスや検索履歴ですら罪に問われるリスクがあります。
ならば中国国内限定の「イントラネット」など使わなければ良いと思われるかも知れませんが、中国ほどIT化が進んだ社会は他になく、あらゆる支払いから義務教育までネットに縛り付けられており、それらは全てAIによって分析されて国民一人一人に点数が付けられています。
これはもはや邪悪さを通り越して「巨悪」と言える次元の話ですが、「悪の陳腐さについての報告」というのも成されており、こうしたAIに頼り切りになった党(ドン)は思考停止となって、役人は誰もがただのロボットで罪の意識すら感じられず、唯一の正義はドンを崇めるコトとされています。
しかしウイグル人はドンよりも神を崇めて生きて来ており、これは民族的な伝統なのでいくら弾圧し思想教育を押し付けても、心の底までは改造できません。
ケイン氏の著作でもそのコトがインタビューによって綴られており、特に感動的なのは文学少女メイセム(仮名、英雄の名)が罪に問われるリスクを犯してモスクで祈るシーンです。
そこで彼女は「神の正義をこの目で見られますように」と祈っているので、「Sun」の物語でそれを描いて見せてあげたいと思います。