ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

タクシー運転手と鳥獣保護法

2023-12-12 10:49:19 | 日記
あのサンデル教授なら、次のニュースをどう受けとめただろうか。


都内の路上でタクシーを急発進させてハトの群れに突っ込み、1羽をひいて殺したとして、50歳の運転手が逮捕されました。
調べに対し、『道路は人間のもので、よけるのはハトのほうだ』と供述しているということです。

(NHK 首都圏NEWS WEB 12月5日配信)


このタクシー運転手が逮捕されたのは、「鳥獣保護法」に違反した容疑だということだが、環境省のHPによれば、この法律の目的は


鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資すること


だという。


さて、サンデル教授だが、この人は(日本ではテレビ番組の「ハーバード白熱教室」で有名になった)知る人ぞ知る倫理学者である。
教授なら「白熱教室」の学生たちに対して、こういう問いを投げかけるのではないだろうか。


「はい、そこのきみ、きみはこのタクシー運転手はなぜ逮捕されたと思う?」


「ハトをひき殺したからではないでしょうか。『鳥獣の保護』という『鳥獣保護法』の規定に違反していますから」


「『鳥獣保護法』からすれば、『鳥獣は保護しなければならない』というわけだね。でも、それは何のためなのだ?鳥獣を保護する目的は何か、ということだ」


「『鳥獣保護法』には、『生物の多様性を確保するため』とか、『生活環境を保全するため』とか、『農林水産業の健全な発展のため』とか、いろいろ書いてあります」


「では訊くが、ハトを1羽ひき殺すことで、生物の多様性は損なわれるだろうか? 我々の生活環境は悪化するだろうか? むしろハトの糞害によって、我々の生活環境は悪化している。それが現実ではないだろうか?」


「先生、質問があるのですが」


「何だね?」


「先生は『鳥獣保護法』をどう思っているのでしょうか? 悪法とでも?」


「うむ、良い質問だ。きみは『鳥獣保護法』を悪法だとは思わないかね?」


「はい、ぼくはそう思います」


「私もそう思う。タクシー運転手を逮捕したのは、とんでもない誤りだと思っている」


サンデル教授がホントにそう答えるかどうか、私は知らない。だが、この倫理学者ならたぶんそう答えると思う。私もそう思うから。

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