前立腺がん、自覚症状乏しく 50歳すぎたら年1回の検査で早期発見・治療
前立腺は男性のみにある生殖器の一つ。前立腺の代表的な病気として、前立腺肥大症とともに前立腺がんがある。いずれも加齢とともに起こりやすくなる。両者の違いなどを知っておこう。 前立腺は膀胱(ぼうこう)のすぐ下に位置し、尿道を取り囲むようにある。精液の一部の前立腺液を分泌するのが主な役割で、射精や排尿コントロールにも関与する。
前立腺の代表的な病気といえば、前立腺肥大症と前立腺がん。いずれも男性ホルモンや加齢が関係し、50歳を超えると発症頻度が高まるといった共通点がある。 前立腺の肥大は高齢になれば程度の差こそあれ、多くの人に見られる。前立腺が肥大し尿道が圧迫されて狭くなると、尿が出にくくなる、トイレに行く回数が増える、排尿後もすっきりしないなどの症状が現れる。生活に支障を来すようなら治療の対象となる。ただ、前立腺肥大は良性の疾患で、強い症状がなければ治療不要のこともある。
一方、前立腺がんは悪性の腫瘍で、進行すると骨や臓器に転移する。男性のがんとしては2位の胃がんを上回り第1位。2018年には約9万人が罹患(りかん)している。早い段階で治療すれば他のがんより生存率が高く、早期発見・治療が何よりも重要となる。 もっとも、初期には症状が出にくく、自覚症状がきっかけで発見されることが少ない。「前立腺がんは、尿道から離れた外腺と呼ばれる部分に発生することが多く、症状が出る頃には進行していることが多い」と、明する。
がんが進行し、腫瘍が尿道や膀胱を圧迫するようになると、前立腺肥大症と同じような排尿時の症状や血尿などがみられるようになる。 前立腺がんの発見には腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の計測が有効だ。前立腺がんがあると血液中のPSAの量が増える。一般に1ミリリットル当たり4ナノグラムを超えると「PSAが高い」とされる。ただ、PSAは年齢とともに上昇するため、50~64歳は同3ナノグラム、65~69歳は同3.5ナノグラム、70歳以上は同4ナノグラムという目安がある。 PSA値は加齢以外に前立腺の肥大や炎症などによって上昇することもあり、高いだけでは前立腺がんとはいえないが「PSA検査は、初期の段階で前立腺がんの可能性をチェックできる有効な検査法。50歳を超えたら、1年に1回程度は検査を受けてほしい」と北里大学医学部泌尿器科学教室の田畑健一講師は強調する。前立腺がんは遺伝的関与も指摘されているため。
前立腺がんかどうかはPSA検査に加え、画像検査や前立腺の組織を採取して調べて診断する。がんと診断されればその広がりや悪性度、PSA値、本人の状態などによって治療方針を決める。 がんが前立腺内部にとどまっている場合は、手術で前立腺と精のうを全摘出し、膀胱と尿道をつなぐ治療が標準的。内視鏡手術支援ロボットを使う手術が主流となり、より短時間で負担が少ない手術が可能だ。放射線治療は前立腺の外から照射する外照射や、前立腺に放射線源を埋め込んで照射する内部照射がある。前立腺を覆う膜を越えて広がったがんや、他の臓器への転移がある場合は、薬物治療を施すことが多い。 前立腺がんの治療はロボット手術の発達や普及、治療薬の開発などによって選択肢が広がっている。望月院長は「自分に合った治療を納得して受けられるよう、医師とよく話し合ってほしい」と話す。