概要
過敏性肺炎とは、有機物の粉塵ふんじんや化学物質といった抗原によって引き起こされるアレルギー性の肺炎です。原因となる抗原を繰り返し吸い込むことでアレルギー反応が生じ、肺胞(肺にある小さな袋)や細気管支(細い気管支)の中や周囲に炎症が起こります。
その結果、咳や息切れ、発熱などの症状が現れます。軽度であれば抗原を回避することで回復しますが、重症の場合には薬物療法や酸素療法が必要になることがあります。
過敏性肺炎の発症者は特に30~50歳代といわれています。また、年間を通して発症しますが、なかでも春から秋にかけて多く見られ、特に高温多湿になる夏に多発します。
種類
過敏性肺炎は、症状が発現する速さに応じて急性、亜急性、慢性に分類されます。
急性過敏性肺炎は原因となる抗原を吸い込んでから通常4~8時間後に症状が現れ、亜急性過敏性肺炎では数日から数週間かけて発症します。
慢性過敏性肺炎においては数か月から数年かけて繰り返し抗原を吸い込むことで発症し、徐々に進行していきます。また、慢性的な炎症に伴って肺が厚く硬くなっていき(線維化)、呼吸不全に陥ることがあります。
原因
過敏性肺炎の原因となる抗原は300以上あるとされています。頻度の高いものとしてカビが挙げられ、特にトリコスポロンという真菌が原因になることが多く、これは主に木造の古い家に生息します。また、カビの生えた穀物や干し草の中にいる菌や、エアコンや加湿器に生じた菌など、さまざまな菌が抗原となりえます。菌は一般的に高温多湿の環境を好むため、過敏性肺炎は夏に頻発し、夏型過敏性肺炎と呼ばれています。
そのほかの抗原として、きのこの胞子、鳥類の糞または羽に含まれるタンパク質、ポリウレタンの原料の1つであるイソシアネートなどが挙げられます。
このような抗原を吸い込むことで、リンパ球が抗原に対して反応し、肺内にリンパ球が増えることによって炎症が起こると考えられています。一般的に急性過敏性肺炎は高濃度の抗原にさらされることで生じ、慢性過敏性肺炎は低濃度の抗原に長期間さらされることで起こります。
症状
過敏性肺炎の典型的な症状は、乾いた咳(多くは痰を伴わない)、運動時の息切れ、発熱などです。ただし、発症の仕方や症状については急性、亜急性、慢性で異なります。
急性過敏性肺炎
急性過敏性肺炎では、高濃度の抗原を吸い込んでから通常4~8時間後に咳や息切れ、発熱、悪寒、胸痛などが現れます。吐き気・嘔吐、食欲不振が見られることもあります。このような症状は、抗原を回避することで通常1~2日程度で改善しますが、場合によっては完治するまでに数週間を要することもあります。
亜急性過敏性肺炎
亜急性過敏性肺炎では、数日から数週間にわたって咳や息切れ、疲労、食欲不振などの症状が現れます。
慢性過敏性肺炎
慢性過敏性肺炎では、低濃度の抗原に長期間さらされることで、数か月から数年かけて咳や息切れ、疲労、体重減少の症状が現れます。また、慢性的な炎症によって肺の線維化が徐々に進行していき、一度線維化した部分は元には戻りません。進行すると呼吸不全に陥ることがあり、適切な処置を行わなければ呼吸不全はさらに進み、酸素を取り入れるために酸素供給器が必要になることもあります。
検査・診断
問診と身体診察の後、胸部X線検査や胸部CT検査、呼吸機能検査、血液検査などを行います。まず胸部X線検査を行うのが一般的で、検査の結果から過敏性肺炎が疑われる場合に胸部CT検査を実施します。過敏性肺炎があると、これらの画像検査でスリガラス陰影と呼ばれる淡い陰影が認められます。また、呼吸機能検査によって肺活量や酸素を取り込む能力などを調べ、肺がどのくらい機能しているかを評価します。血液検査は、原因となる抗原の手がかりを探すためや、ほかの原因を除外する目的で行います。
このような検査を基に診断しますが、それでも診断がつかない場合には気管支肺胞洗浄検査や肺生検が必要になることがあります。気管支肺胞洗浄検査では、気管支鏡を用いて肺を生理食塩水で洗浄し、回収した液に含まれる細胞を調べます。肺生検は肺の一部の組織を採取して顕微鏡で調べる検査で、方法として経気管支肺生検や胸腔鏡を用いて組織を採取する場合と開胸して採取する場合の3通りがあります。
治療
過敏性肺炎の治療は抗原を避けることが基本で、軽度の急性過敏性肺炎であれば一般的に抗原を避けるだけで改善します。再発予防としても抗原の回避が重要となるため、原因となる抗原が家や職場環境にある場合には転居や大掃除、転職など環境を変える対策が必要になるでしょう。
中等度以上の過敏性肺炎ではステロイド薬を使用することがあります。また、肺の酸素を取り込む能力が大きく低下している場合には、自宅で酸素を投与する在宅酸素療法を行います。