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旅する心-やまぼうし

やまぼうし(ヤマボウシ)→山法師→行雲流水。そんなことからの由無し語りです。

紫陽花、あじさゐ、あじさい、アジサイ

2017-07-12 21:48:33 | 花鳥風月
我が庭にもアジサイが次々に咲いた。
どれもみな1本の挿し木から育てたもの。

スッと伸びた柄の先の花弁、中央の小さな紙風船のような蕾に目を凝らすと、ここにも宇宙があるという感覚が湧きおこる。
やはり自分は、ガクアジサイ系が大好きだ。

    *

アジサイが咲くと思いだす詩がある。
この詩の中でのアジサイは、色合いの形容表現として使われているが、その後ろに続く情景を淡く澄んだ群青の光を通して感知させる。
「季節が空を渡る」ころ、この我が大好きな詩と庭のアジサイを思い重ね、過ぎ越し日々を振り返ってみようと思う。



乳母車
              三好達治

母よ――
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花(あぢさゐ)いろのもののふるなり
はてしなき並樹のかげを
そうそうと風のふくなり

時はたそがれ
母よ 私の乳母車を押せ
泣きぬれる夕陽にむかつて
轔々(りんりん)と私の乳母車を押せ

赤い総(ふさ)ある天鵞絨(びろおど)の帽子を
つめたき額(ひたひ)にかむらせよ
旅いそぐ鳥の列にも
季節は空を渡るなり

淡くかなしきもののふる
紫陽花いろのもののふる道
母よ 私は知つてゐる
この道は遠く遠くはてしない道

     『測量船』日本文学全集51 三好達治・中原中也・伊東静雄集(昭和43年5月12日発行)












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