旅する心-やまぼうし

やまぼうし(ヤマボウシ)→山法師→行雲流水。そんなことからの由無し語りです。

アジサイ色の

2020-06-01 21:59:11 | 花鳥風月
パソコン作業が続いたので、目を休めるために外に出てみた。
いつもの緑道に、雨上がりのアジサイが咲いていた。







この花を見るたび思い出すのは、三好達治(1900年~ 1964年)の詩と我が亡き母。

乳母車
                     三好達治『測量船』から
                      出典:集英社 日本文学全集51 三好達治 中原中也 伊藤静雄 昭和43年5月12日発行

母よ――
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花(あじさい)いろのもののふるなり
はてしなき並樹のかげを
そうそうと風のふくなり

時はたそがれ
母よ 私の乳母車を押せ
泣きぬれる夕陽にむかって
轔轔(りんりん)と私の乳母車を押せ

赤い総(ふさ)ある天鵞絨(びろうど)の帽子を
つめたき額にかむらせよ
旅いそぐ鳥の列にも
季節は空を渡るなり

淡くかなしきもののふる
紫陽花いろのもののふる道
母よ 私は知っている
この道は遠く遠くはてしない道


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