鏡に映る私の姿は
いつも本物よりも少し背が高く
本物より少し器用になんでもできた
わたしはそれに気づかず
もっと上手くできる
もう少しよくできる
そう思って背伸びして
虚勢を張って生きてきた
周りの人達も
鼻をへし折ることもせず
褒めて伸ばそうとする
大人になると失敗は個人差のせいにした
逃げることもおぼえた
マイナスやゼロにある自分を
認められなかった
100点でなくても満点でなくても
大丈夫なだけマシだった
いつも要求はそれほど高くはなかった
でも
マイナスやゼロである自分は
認められなかった
なんとなく上手にやってきた自分は
手に負えない事態には
向き不向きの問題だと自分の非を認めず
目を逸らして生きてきたが
どうしてなのだろう
ゼロやマイナスに在る自分の位置を
認めたくなくて苦しむことになる
できる子
そう言って育てられた
心配いらない子
そう言って育てられてきた
無力に手出しできず
他人に酷くやられて負けて
自分が上手くできないでいることを
真正面から向き合えず逃げた
良い売り上げ成績を出せない
隣人にストレスをかけられて対処できない
好意を抱いた相手に遠ざかられ
スパイラルにやることなすこと悪化した
自分が壊れていくのに気づかなかった
自死を求めてばかりになり
身体は重く辛くなり
病は知らずわたしを侵していた
何がいけなかったのか
できないことを認められなかったからか
できる自分と比較して責めていたのか
できる自分は幻想に過ぎなくて
空っぽの自分を見たくなかったのか
何が失敗の原因か
何が病気の理由なのか
30歳のころ
わたしはどんなだったのだろう
順風満帆に見えて
しかし何も持てずに手は空で
背伸びしたくも足元は沼地のようで
きっと焦りもがいていたのかな
25年前のわたしは他人に耳を傾けなかった
自分はやれると思い込み
失敗しても認めず
チャレンジもせず逃げてばかりで
泳ぎ方を知らないで溺れている様
足が着かない海に堕ち
もがきあがき溺れるように
自分が不安な状況にあったその頃に
こころの病に沈んでいった
55歳も半ば
いま頃になって
夜中の1時半に自分を振り返る作業
親のことばに縛られたからか
それとは関係なくストレス過多だったのか
自分を縛っている何かはある
自分も他人も許す寛容さが足りない
ほどほどでよく
失敗もしかたなく
失ってもどうにかなる
負けたのは昨日の自分で
今日の自分は昨日のわたしとは違う
わたしは不器用で
他人にくらべて特別ではなく
向き不向きのことで
出来不出来ではない
もう背伸びするのはやめたら
カッコつけるのはやめたら
鏡に映るその姿は
等身大なのかな
誰もわたしを気にしていないよ
意識しすぎなんだろうな
それに追いつかず疲れ果てて
足元を見ないで躓いて
重すぎる荷物に腰を壊し
たいへんな出来事でこころを潰した
もう死にたい
死ねないなら
背伸びはやめて
失敗を受け容れて
自分は地獄にいると観念しようよ
泳げなくていい
這い上がらなくてもいい
ただ
歩くのをやめず
足踏みはつづけて
飛べないのだから
跳べないのだから
ゆっくりでいいから
止まらなきゃいいから
ありがとう
周りに感謝して
自分の役割に気づいて
できることだけをするように