◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

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松下電器の欧州財務戦略に思う

2006-03-29 | 会計・株式・財務
更新が大変遅くなって申し訳ありません。

今日は会計士受験時代からお世話になっている方で、現在は会計士協会の要職に
就かれている(≒疲れている)Ⅹ氏からお話を伺う機会を得ました。
会計士協会の舞台裏など、とてもここでは書けない上ネタばかりで大変勉強になりました。
また回らないお寿司、大変おいしゅうございました。
この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
Ⅹ氏の著書が上梓されましたら、このブログでも紹介させて頂きますので
(・・・・っていうと誰だかバレちゃいますが、まあいいでしょう)。


まずは、先日の記事のフォロー。今日の日経1面。
27日の私の記事で少し触れましたが、地方局への財務支援を通じて
テレビ局(キー局の)財務内容が悪化するシナリオが動き出しそうです。
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■民放に純粋持ち株会社・総務省、マスメディア集中排除に特例■
 総務省は28日、民間放送局が純粋持ち株会社を設立し、複数の放送局を傘下に置くことを解禁する方向で検討に入った。特定企業による複数放送局の株式保有を規制する「マスメディア集中排除原則」に特例を設ける。民放グループの経営力を高めるとともに、デジタル化に伴う投資負担が重い地方局の経営基盤を強化する。放送界の再編が進む可能性があり、国民的な議論になりそうだ。

 総務省は竹中平蔵総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」での議論を踏まえ、集中排除原則は維持しつつ、純粋持ち株会社に限って同原則を緩和する案を軸に検討する。早ければ来年の通常国会に関連法案を提出する方針。2011年7月の地上デジタル放送への完全移行を見据え07―08年の導入を目指す
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・・・ですので、現在のテレビ局が高現金比率・高株主資本比率っているのは、
中長期を展望する中では意外と合理性があるかもしれませんね。


で、本日のネタ。
これは28日付け日経記事と少し古いのですが、「何故そうなのか?」が
気になったのでご紹介。
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◆松下グループ、600社の資金を一括管理・オランダに子会社◆

 松下電器産業は27日、国内外のグループ会社約600社の資金を一括管理するシステムを導入すると発表した。日本、欧州、アジアなど地域単位で管理してきたが、オランダに金融の統括会社を設立し、600社の出入金や為替などの取引と情報を集約。金融取引のコストを減らすほか、不振事業の素早い見直しなど経営判断のスピードアップにつなげる。

 グループの金融取引を集約し資金効率を高める動きは広がっているが、600社に上る子会社を網羅するのは珍しい。

 金融統括会社「グローバルトレジャリーセンター」の資本金は5億米ドル(約580億円)。円と米ドル、ユーロによる出入金や預金残高、通貨保有高、グループ内の資金の貸し付けや借り入れ、出資状況の情報を集約。預金、借り入れ、為替予約などの取引も一元化する。
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(コメント)

①何故、オランダに設立するのか?
 薄々、税務上有利だからだろう、とは思っていましが、色々調べてみました。

 オランダは国際税務の観点から非常に重要な国だそうです。
 理由は、「資本参加免税」と「租税条約網」があるため。

 資本参加免税とは、
 オランダ持株会社が、他のオランダ会社又は外国会社に資本参加(投資)する場合、
 一定要件を満たす被投資会社からの配当所得、さらには当該会社の売却する際に実現
 するキャピタルゲインが非課税とされる税制。
 これは、オランダ中間持株会社に適した税制。
  (オランダの持株会社は、日本の親会社と各国の投資会社との中間に位置するので
   しばしば中間持株会社というそうです→今回の松下はまさにコレ)

 租税条約網のメリットは、
 日本の親会社に対する支払利子には源泉税は課せられない。
 一方、オランダ金融子会社がグループ会社に貸付を行った場合、借り手からの支払利子
 に対し、租税条約による軽減税率又はゼロ税率が適用されるケースが多いとのこと。

 こうした税務上の優位性を享受するため、オランダに金融子会社を設置している
 日系企業が多く、今回、松下がその仲間入りしたわけ。
 しかも600社を巻き込む大規模なスケールで。


②①のネタだけなら、「ふーん」で終わってしまいますが、そうさせないのが私の流儀。
 実は同じ28日付日経企業財務面にベタ記事で、こんなのがありました。

 「松下、欧州上場廃止へ」。
 ドイツ証券取引所(フランクフルト)、ユーロネクスト証券取引所(アムステルダム)
 の2証券取引所に上場廃止を申請すると発表。
 これで上場する市場は東京、大阪、名古屋、ニューヨークの4ヶ所となる。
 
 カンの鋭い方ならお分かりだと思いますが、いわゆる「会計の2007年問題」への
 対応だと思います。これは、欧州に株式上場している企業は国際会計基準を適用しない
 とダメだよ、っていう問題。
 
 松下は欧州での上場廃止によってこれによる会計リスク(=国際会計基準に準じた
 決算書を作らないといけないリスク)を回避しているんですね。
 
 ①②を繋げて見ますと、税務上のメリットを追求するためにオランダに金融子会社を
 設立する一方、会計リスクを回避するために欧州での上場廃止を決断。
 松下の欧州財務戦略の明快さ・したたかさが浮き彫りとなった2つの記事でした。

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