好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

幻想短編集・備忘録。

2024-04-05 | 物語全般
『十月の旅人』(byレイ・ブラッドベリ)、読了。

全10話収録の短編集。
1940~1950年代の幻想小説。
物語のジャンルが未分化の時代。

『十月のゲーム』:この本の初出時(1974年)の日本にはハロウィンが普及してないため注釈がある。

『休日』:『火星年代記』の系列。
火星に先住民がフツーに生活してる。

『対象』:本来は何物でもないが、他者に規定されると、定型の概念に固着してしまうナニカ。

『永遠と地球』:1938年の病死寸前の作家トマス・ウルフを遠い未来へ連れてきて、新作を書いてもらうというムチャぶり。

『昼下がりの死』:二人称で一貫しているため恐怖倍増。

『灰の怒り』:死体視点の一人称。乙一氏にこういう作品あったな。

『過ぎ去りし日々』:時系列が混線しまくってる主人公の一生。求む解説。

『ドゥーダッド』:何にでもなれる道具の話。一番好き。でも人は死ぬ。

『夢魔』:眠ると精神体に殺されてしまう異星。

『すると岩が叫んだ』:1963年で欧米全滅。植民されていたメキシコが代わって天下をとる。
アジアがん無視なのが時代を感じる。

それでは。また次回。

「時系列シャッフル」の祖。

2024-04-03 | 物語全般
映画『パルプ・フィクション』を配信で見る。

1994年作。
映画好きなら必ず見るべしという世評を、幾度となく見かけてきた。
いわゆる「時系列シャッフル」を効果的に用いているなど。

配信元のPC画面には、R18指定と表示されていたから、見る前、大いに不安だった。
実際のところ、私が恐れていたほどの残酷描写はなかったが、扱われているモチーフは確かに過激。
薬物のOD、銃の虐殺、そして強姦。
こうした内容をフィクションとして割りきれるタイプなら、興味深い構造を堪能できると思う。
私はちょっと無理だった。

時系列シャッフルについても、私はあまり入り込めず、混乱する方が先に立った。
小説やTVドラマ(&アニメ)なら慣れてるが、そういう媒体の時も毎度こまめにさかのぼって確かめてるからなあ、私。

それでは。また次回。

異世界探索SFの祖。

2024-03-29 | 物語全般
『猿の惑星』(byピエール・ブール)、読了。

1963年初出。
1968年作の映画(と、そのオチの場面)があまりにも有名な作品の原作小説。

映画版は何作も続いているシリーズもののため敬遠していたが、小説なら読みやすいと思って手に取った。

そんな私だから、映画と小説の比較は基本的にできないが、「映画版のオチの場面は、小説版にはない」という点は挙げておこう。

以下、小説版の感想。
全体的に展開が早くテンポが良く、読んでいて飽きさせない。
宇宙旅行者が星の海から拾い上げたボトルメールに記された物語。

異星に着陸!→
野蛮な住人に襲われる!→
服を着た猿たちに捕まる!→
生態実験を繰り返される!→
自我と意志のある事を証明する!→
猿たちと意志疎通!→
演説で世論を味方に!

……ここから先もどんどんハイスピードで、話は終幕まで盛り上がり続ける。

かつて通し読みした『ガリバー旅行記』を思い出させる雰囲気だった。

それでは。また次回。

「自由の国」での不自由。

2024-03-20 | 物語全般
映画『イージーライダー』を配信で見る。

以前「午前10時の映画祭」でタイトルを見かけてから気にかかっていた。

いざ見た結果。
確かに、知らないままでいるべき作品ではなかった。
使われている楽曲はテレビなどで何度も聞き親しんでいる物だった。

一方、ストーリーの方は、語るのが難しい。
そもそも筋書きってあるんだろうかコレ。
風来坊のバイク乗り達が何となく旅をしている。
(当時は合法だった)マリファナを使いまくって。

が、旅が進むにつれ、地域の閉鎖性がどんどん強くなるのか、余所者というだけで襲われる。
三人の内の一人が闇討ちされた後は、半ば義務感で眺めた。
ラスト数分になっても話が終わる気配はなかった。
そうしたら、現地人に撃ち殺されて終わった。
後で調べると、この映画は「アメリカは自由の国というわけでもない」というようなテーマを描いているそうだが。
いきなり死ぬオチは、考えさせる気持ちすら持てなくなるから好みじゃない。残念だった。

それでは。また次回。

男と女と、破滅への旅路。

2024-02-18 | 物語全般
映画『俺たちに明日はない』を配信で見る。

古典名作を100円で見られるのが今の時代。
因みに1967年作。

かつて、悪さする男女コンビは、ほぼ必ず、この映画の名前で呼ばれていたはずだ。
故に私としては、てっきり映画では、さぞ狡猾でスマートな完全犯罪をこなしているのだろうと思っていた。

実際に見た映画は非情だった。
ボニーとクライドの二人は、そもそも旅の最初の時点から関係が破綻している。

女は男と二人きりでロマンチックに過ごして(セックスして)いたい。
退屈すぎる生活に刺激が欲しい。

男はいつも大勢でにぎやかに過ごしていたい。
働かずに楽して金が欲しい。

この通り価値観が食い違いすぎている。
そんな彼らは出会った勢いに任せて強盗を始め、少年院帰りの少年を仲間に入れた辺りからますます事態は袋小路。
そこに更に、男の兄とその妻まで混ざり、兄嫁は小姑化。

銀行を襲うなどの華やかな描写よりも、追いつめられていく絶望感の方が印象に残った。
ラストシーンは呆気ない。
もし今時の映画だったら、死に際に延々と喋ったりしそうな気がする。
人生を踏み外したら、殺されるか死ぬしかないってのは、悲しい。

それでは。また次回。

アクセサリでも世界は滅ぶ。SFでは。

2024-02-14 | 物語全般
『物体O(オー)』(by小松左京)、読了。

全10話収録の短編集。

小松作品の作風は、自分にはあまり合わない。読んでいて毎回気持ちが沈む。
けれど読書好きを名乗るなら知っておくべき作品が多いのも事実。
作品の総数自体、非常に多いし。

表題作もそういった有名な作の一つ。
日本列島の上に突然現れた、オーでありゼロである“何か”の話。
基本設定こそ荒唐無稽だが、その“何か”のもたらす厄災はあまりに凄惨であり、正視に耐えない。
ところで、私はてっきり指輪と思って読んでいたが、確かにそれだと(楕円じゃなく)正円になってしまうから間違い。
アクセサリーに詳しい知人に尋ねたら、昔あったバネ式タイプなら楕円になるし、外れて落ちても輪が閉じるだろうとの事。

以下、感想の列挙。
『ダブル三角』 性別不定の三角関係。今時のジェンダー論に通じる。
『返還』 移民2世以降の立場がない。もっと言えば、昆虫とかに返すのが先かも。
『先取りの時代』 今、ランドセルとか1年以上前から探し始めるよね。
『イッヒッヒ作戦』 食事前後には絶対に読むべからず!
『仁科氏の装置』 自己肯定感の低い一方、承認欲求の高かった人なんだと思う。
『骨』 時間の逆転した世界。死にオチ。ホラー。
『墓標かえりぬ』 ドタバタ調なんだが、根本的にグロい。
『あれ』 高度経済成長時代でも、世の閉塞を嘆くのは変わらないと知る。

それでは。また次回。

表題作は、ジョジョ第四部のアレの元ネタです。

2024-02-04 | 物語全般
『薬菜飯店』(by筒井康隆)、読了。

全7話収録の短編集。

するする読める、私にとってある種の癒やし。
どの話も印象に残り、思い返すのも悪くない。

表題の『薬菜飯店』は、有り体に言えば、あの漫画と状況が少し似ている。
トニオさんの店とはまた違ったベクトルで過激。

『法子と雲界』は、中国の架空の(!)思想家たちの物語。
なお、「法子」と書いて「ほっす」と読む。史実の元ネタがない事に未だに驚いてる。

『秒読み』はファンタジー風味のSF。
破滅の歴史を回避しようとした主人公が時間をさかのぼった際、身体のみならず、その心の中まで刻々と子供時代に戻っていく様が自然に描かれている。

『ヨッパ谷への降下』
謎めいた蜘蛛が浸透しているどこかの話。
平和に終わるから好き。

『イチゴの日』と『偽魔王』は既読。
グロテスクなスプラッタ。
悪魔が召喚される展開が共通。

そして最後の『カラダ記念日』。
本作発表当時に大流行した『サラダ記念日』の壮大なるパロディ。
元ネタを相当に読みこんでなければ作れないだろう珠玉。
『偽魔王』と合わせて読むのも乙。

それでは。また次回。

「タイムパトロールもの」の祖。

2024-01-28 | 物語全般
『永遠の終り』(byアイザック・アシモフ)、読了。

1955年作。(コレ重要)
時間移動ものが好きなら必須という触れ込みに、遅まきながら読んでみた。
アシモフ作品と言えばまずはロボット、それから宇宙。
一方、時間移動を扱った作品は、本作と、もう1作の短編があるだけだという。

それで、いざ読んでみて、まず独特の専門用語に目がくらんだ。
物語の舞台は、いわゆるタイムパトロール(時間管理)の組織なのだが、本作発表当時はには、そういった類の単語がまだ無い。
「コンピューター」という言葉が、そういった職業(算定士)を差すほど。
タイトルの「永遠(エターニティ)」というのが、その組織名なのである。

しかも、メインの舞台となるのは「482世紀」。
それどころか「111394世紀」なんて時代がキーポイントになってたりする。

そういったヤヤコシイ世界設定を飲み込むまでは大変だったが、冴えないタイプの主人公が恋人を得た辺りから、謎が謎呼ぶ展開に、ページをめくる手が早まった。

全部読み終えて振り返ると、この話はアシモフの「ファウンデーション」シリーズの前日譚である事が明らかになる。

時間管理者たちは、「現実矯正」と称して異常を排除し続け、多様性を失ったために他の星々に遅れを取って自滅する。
よって、人類は歴史の必要悪として──核兵器を使わなければならない。
この時代はまだ、放射能の問題が考えられていなかったとは言え、原爆を必然と断じられる終幕には、釈然としない感覚が残った。
ポール・アンダースンの『タイム・パトロール』も早く読みたいと覚書。

それでは。また次回。

小説版『弟切草』を読んだ。

2024-01-02 | 物語全般
『弟切草』(by長坂秀佳)、読了。

PS版『弟切草 蘇生編』と合わせて発売されていた作品との事。
作者はあとがきで、ゲーム版を知らない人も楽しめる作品を目指したような事を書かれているが、やはりコレはゲーム、それも『蘇生編』のザッピングシステムを経験している人の方が読めると思う。

と言いますか、何も知らない人が読むと、大抵こう思うはず。
「何で、やたらカタカナつかって書いてるの?」
「何で、同じ場面をそのまま2回繰り返して書いてるの?」と。

念のため説明すると、『弟切草』はスーパーファミコンで読む作品であり、画面表示能力の低かった当時は、漢字よりカナが多用されていた。

また、PS版の『蘇生編』では、謎の屋敷を探索する公平の視点と、一緒にいる奈美の視点とで、異なる描写を読める機能があり、奈美視点が公平視点を補完するような形を取っている。
小説版は、それらの要素を忠実に再現しているわけだ。

ただし、小説版は、ゲーム版と内容がモチロン異なる。
公平は『弟切草』本編を制作したシナリオライターという設定。
『かまいたちの夜2』の状況に近い。
新キャラも出てくるし、直樹やナオミの設定も違う。
いかにもなホラーで始まって、途中で一気にミステリになって、またホラーに戻る。
世界観の変化が忙しい。

ところでこの作品、実は全3部作らしい。
全部読んだらまた違う感想になるだろうか。

それでは。また次回。

アニメ映画のテンションに振り落とされる。

2023-12-30 | 物語全般
映画『プロメア』のDVDを見る。
(私には合わない作品でした)

実はこれが、地元のTSUT○YAで借りた最後の作品。
アニメ好きを名乗るなら見ておいた方が良いだろうと、予備知識ほぼゼロで鑑賞。

一言で言えば、「勢い全振り」の作品だった。

今まで見るのを敬遠した理由の一つは、(専門声優でない)俳優中心のキャストだったが、その懸念は杞憂。
松山ケンイチ氏の自然な喋りは、とりわけ素晴らしかった。

ただ、その他の面については、あまり自分の好みに合わなかった点が多い。
淡いパステルカラー中心の色彩が、目まぐるしく動き回る画面が、まずどうにも落ち着かない。
リアリスティックな炎だったら恐ろしすぎて別の意味で見れないと思うが。

また、設定や脚本の細かい粗にしばしば引っ掛かった。
・この世界、主だった町は1個しかないの?
・前半の同僚キャラたち、出す意味あった?
・消防と警察の軋轢って入れる意味あった?
・火災現場で上裸って危険すぎない?
・平行宇宙とか機械化された人格とか、そういうのがアリならもう何でもアリだろ。
・人工呼吸に性的なニュアンス入れないで頼むから。
・社会差別されてる先天的体質が、余所からもたらされた異常性でした→それが消えたからハッピーエンドって安直すぎん?

……いやまあ、そういう「こまけぇことはいいんだよ!」の精神で没入して見るべきなんだと思う。
単に、私がこの作品のテンションに付いていけなかっただけです。

それでは。また次回。