週刊ねこまみれ

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肥大型心筋症(2) ~治療と薬について~

2007-10-31 | 肥大型心筋症



☆2009年11月27日追記☆
「記事を書いた当時の私の考えであり、
現在とは異なる箇所もあります」




1.肥大型心筋症(HCM)の治療法

残念なことに現在、HCMを完治させる治療法はありません。

心筋が肥大すると、心臓の機能が阻害されるため、
心臓発作の危険を減らし、心機能を助ける薬が処方されることがあります。
どのような治療をおこなうかは、患者の臨床症状や
心筋肥大による機能障害の種類と程度によって異なります。

心臓発作や脚の麻痺といった重篤な症状がある場合は、
すぐに受診しなければいけません。まずは緊急事態を回避することが一番大切で、
その後、症状が落ち着いてから治療方針の検討を行います。

HCMの治療では、治療中の患者の反応や経過をを診るために、
定期的な獣医師の診察が必要となります。
心電図、心臓エコー、レントゲン検査などが再度行われることがあります。
患者の状態によっては薬の調節や追加がおこなわれることもあります。

☆テンは2006年9月末に元気がなくなり受診した際に
胸水が溜まっていることがわかり、
すぐに利尿剤による治療を始めました(緊急事態回避)
胸水の発覚が遅れると呼吸困難になっていた可能性があります。

胸水の溜まっている間はレントゲンで心臓付近が白く濁って写り、
状態を把握することができません。
テンの場合は、利尿剤で効果がありましたが、
それでも胸水が回復しない場合には
針を使って水を抜く手術になることもあるそうです。

2週間ほどの胸水治療の後、テンはHCMの診断を受けました。



2.処方される薬

HCMの猫に処方される薬は
①利尿薬
  (体に溜まった水分を流す=心臓の負担を減らす)
②強心薬
  (心筋に作用して心臓の収縮機能を高める=心臓の働きを高める)
③血管拡張薬
  (血管の内径を広げ血液を流れやすくする=心臓の負担を減らす) の3種類です。

以下に、それぞれの作用についてまとめます。

①利尿薬
尿を出して、血管や心臓を流れる血液の量を減らし、心臓への負担を減らします。

☆先述の通り、テンは最初の診察で胸水があったので
まずはじめに利尿剤の投薬を始めました。
レントゲンで確認して胸水が完全になくなるまで投薬を続けました。

②強心薬
強心薬は弱った心臓を働かせ、全身に血液がうまく循環するようにする薬です。
ジギタリスをはじめとする強心薬により心臓の機能は著しく改善されますが、
長く続けると心臓の消費する酸素の量は増加し、
心筋の障害は逆に促進されることになります。
したがってこの薬は長期にわたる治療には適しません。

☆テンは利尿剤での胸水をとる治療のあと、
しばらくの間、強心薬の投薬を続けました。
投薬を始めてみるみる元気になったと感じました。
上記の通り、強心薬は使用が難しく副作用もあるので
長期の治療には向いていません。
獣医師との相談で治療を進めていく必要があります。

③血管拡張薬
あらゆる原因で収縮してしまう血管を拡張させ、心臓の負担を軽くする薬です。
血管拡張薬で代表的なものは2種類あります。

1.アンギオテンシン変換酵素を阻害する薬(代表的な薬品:エナラプリル)
 
 アンギオテンシン変換酵素とは、腎臓が血圧が低いと察知した時に
 血圧を上げるために出す酵素で、これは動脈硬化や
 心筋肥大の促進の原因にもなります。
 アンギオテンシン変換酵素阻害薬は名前の通り、
 この血管収縮作用のある酵素を止める事で血管を拡張させるという効果があります。

2.血管平滑筋に直接作用する薬(代表的な薬品:ベラパミル、ジルチアゼム)

 血管の太さを調節するのは血管平滑筋という筋肉です。
 この筋肉の収縮は細胞内Ca濃度が上昇することにより起こります。
 この薬ではCaの通り道をふさいで血管平滑筋を弛緩させることができます。
 また、不整脈を抑えたり心臓自身に血液を供給する冠状血管を広げる作用があります。
 これによって、心筋に対する酸素や栄養の供給が改善されます。
 ベラパミルとジルチアゼムは比較的心臓に特異性が高いとされています。

血管拡張薬は心臓への負荷を軽減し、弱った心臓を休ませる薬で、
心不全の原因を取り除く薬ではありません。
つまり症状が回復したといって薬の投与をやめると、
すぐに元へ戻ってしまうことを意味します。
飼い主の勝手な判断で薬を飲む回数や量を加減することは厳禁です。

☆現在テンが続けているのはこの血管拡張薬2種類です。
マレイン酸エナラプリル(アンギオテンシン変換酵素阻害剤)
ジルチアゼム塩酸塩(血管平滑筋に直接作用する薬)
現在は通院はせず、毎回30日分の薬を病院で頂くだけにして経過をみています。


<投薬について>
毎日、朝晩の投薬は最初はとても苦労しました。
ブログを通じてたくさんの情報を頂き、
教えて頂いた投薬器とカプセルを使うようになりました
            (→こちらの記事をご覧下さい
☆☆☆)
さらに今ではテンのあくびの瞬間に合わせて
薬を投入するようになったことで
無理矢理口を抉じ開ける必要もなくなり
ストレスフリーで投薬できるようになりました。



3.血栓塞栓症の予防のために

動脈血栓塞栓症は、猫の心臓疾患のもっとも深刻で管理が難しい合併症の1つです。
血栓症は激痛を伴う場合が多く、鬱血性心不全を起している場合があります。
脚の麻痺を見つけたら、直ちに獣医師に受診しなければいけません。



<動脈血栓塞栓症とは>
左心室の筋肉が硬化し心房から十分に血液を受取れなくなるために、
左心房内の圧力が上昇し、その結果として心房が拡大することがあります。
左心房が拡大すると、血流が遅くなるため、心房内で血栓ができる恐れがあります。
典型的な症状である後脚の麻痺は、
後脚へと分かれて降りてくる動脈に血栓ができた場合に起こります。

<治療法>
後肢麻痺などで血栓塞栓症が発覚した場合は
直ちに外科的な血栓摘出または血栓溶解療法を行います。
しかし治療に成功した場合も、再発率がかなり高いため、
残念ながら長生きは期待できません。

☆HCMについて調べていて、私が一番恐怖を感じたのは
この血栓塞栓症についてです。
激しい痛みを伴うということと、
治療後の生存率がとても低いということが悲しい現実です。

テンは血栓の予防として、獣医の先生にルンワン粒という
サプリメント(健康保護食品)を勧められました。
これはルンブルクスルベルスという欧米原産の赤ミミズの
内臓にある酵素「ルンブル」を加工したものです。
医薬品の血栓溶解剤は使用量を誤ると血栓だけでなく
血管までも溶かしてしまう危険性がありますが、
このルンブルクスルベルスの内臓にある酵素「ルンブル」は
血栓の元になるフィブリンだけを溶かすため安全なのだそうです。



4.アドレナリンと血管の関係

人間でもよくイライラしたり興奮すると
「アドレナリンが出ている」だとか「プッツンする」と言われますが
それはアドレナリンが持つ作用からそう言われているのです。

血管の太さは血管平滑筋という筋肉で調節されています。
アドレナリンにはこの筋肉を収縮される作用があります。
つまり、興奮してアドレナリンが分泌されると血管が
ギュッと細くなってしまうのです。

血管が細くなっても血液量は変わらないので、
心臓はより強い力で血液を押し出すことになり
心臓の負担が増えてしまうのです。

HCMの猫を遊ばせすぎて興奮させない方がいい、
ストレスを与えない方がいい、とされる理由のひとつが
このアドレナリンのもつ作用に関係しているのです。

☆テンを診て頂いている先生は
「なるべくなら走らせたり遊ばせたりしない方がいいですが
でも若い猫に遊ばないように!って言っても無理でしょうから…」と
おっしゃっていました。
私もテンが楽しそうに嬉しそうに遊んでいるのを
無理矢理止めることはできません。
それよりもできるだけたくさん「ゴロゴロ」という音を聞きたい、
リラックスできる時間をたくさん作ってあげたいと思っています。


                    
                           ~つづく


次回はペット相談所についてまとめます。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
肥大型心筋症について、独自に調べたことや
感じたことなどをまとめて記しています。
それぞれの猫さんによって症状も対応も異なってきますので
ここに書いてあるテンの病状の経過は
あくまでひとつのケースとして参考にして下さい。
もしも記述で何か間違っている点などお気付きのことがございましたら
ぜひ教えて頂けたらと思います。
長文、最後まで読んで下さってありがとうございました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



<参考にさせて頂いた治療と薬に関するサイト>

HCMの猫さんをもつ飼い主さん以外の方でも役に立つサイトがたくさんあります。
薬について調べたい方はぜひご覧下さい。


 ・「分かりやすい?犬猫の薬」 から 「循環器の薬

 ・農林水産省動物用医薬品データベース

 ・東京大学大学院 農学生命科学研究科 獣医薬理学教室
  「動物のくすり」 から 「循環器・炎症系の薬
 
 




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2 Comments

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知ることは大事ですね! (rinko)
2007-11-30 11:15:11
気を付けなければいけないことがたくさんありますねぇ…。
全部を完璧にはムリでも、知っているから注意できることは
きっとたくさんありますね♪
テンちゃんは本当に運の良いコです!
パステル子さんのところのコメントを読んでふと思ったのですが…
テンちゃんのこの病気は持って産まれたものなのかもしれませんね。
ワクチンは健康でなければやっぱり危険が伴うと聞きました。
ワクチンを打って具合の悪くなったテンちゃんは
もしかしたら、何らかの影響が出てしまっていたのかもしれませんね。
実際はどうなのかわかりませんがその時、何事も起きなくて本当に良かった!!
パルボウィルスだけは、感染すると処置を施すヒマもないらしいので
ワクチンの接種は一生に一度は必ずした方が良いそうです。
でも、どこかで誰かも書かれていましたが
人間だって、ワクチンは1回しか打ちませんよね…
身体の小さい猫に毎年はやっぱり多すぎるのかな?って思いました。
テンちゃんの身体のことを考えると、今後のワクチンは
むしろ打たない方が良いのかなぁ… なんて思いましたよ~
病院の先生と相談して決めるのが一番良いとは思いますが…
病気のコに7種のワクチンを打っちゃうような先生もいるらしいから…
やっぱり自分でも納得できるような答えを出来る限り探した方が良さそうね~
本当に難しいわ…(苦笑)
rinkoさん☆ (supiten)
2007-12-06 16:45:09
rinkoさん、お返事遅くなってゴメンナサイ!!

今までうりもくりもすずらんもぴっちも
外猫からうちの子になった時には
必ずワクチンを受けるようにしていました。
テンも同じように受けましたが、ワクチンを打って
元気がなくなったことがあるのはテンだけです。
心筋症はほぼ100%が先天性の病気なので
ワクチンを打った時点では気付くことができませんでしたが
やはりこの病気も調子が悪くなった原因に
関係していたのかもしれませんね。
実はテンのワクチンも他の子達も家猫になって
2、3回受けた後、もうずっと打ってないんですよ。
みなさんのお話や本で読んで、風邪やウイルスに感染した時に
ワクチンを受けていたほうが酷くならずにすむというのもあるし、
やっぱり受けに行った方がいいかなぁと
迷っていましたが、毎年の接種もやっぱり
もう少し考えてみた方が良さそうですね(苦笑)

病気の予防としては、
日々あの子達の体調の変化に目を光らせて
定期的な健診を受けるようにすることが
まずは一番大事な気がします。

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