Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

野仏に花を手向ける

2017-09-22 | Walk on

 

彼岸の入りである。

そろそろ墓参の心づもりをしておかなければならない。

盂蘭盆の墓参から間が空いていないので、秋彼岸の墓掃除は手間がかからない。

いっその事、秋の墓参はすっ飛ばして、年末に繰り越そうかなどと算段してみる…

そうすると年4回の墓守も、いい案配で廻せるので墓所が荒れることもない。

墓所が近場にあれば問題ないのだが、バスを乗り継ぐ遠方なために一日仕事となる。

う~ん、思案の為所だ…

七年間ずっと続けて来たことを辞めるのは落ち着かない…それに夢見の枕元に立たれるのも寝覚めが悪い(笑)

まぁ身体が元気な内は、今まで通り続けてみようか。

歳時記に沿って暮らしを立てる。

このことに得心する年齢になってきた。

自然のサイクルに身体のリズムを合わせ、日々の営みを送ることが、

とても心身共に健やかに過ごせることに気づき始めた。

日本的気候風土に合わせた先人たちの暮らしの知恵だ。

すべての価値をお金と数字に置き換えて、効率化に追われる新自由主義(グローバル)経済は、身体に悪い(笑)

 

彼岸の入りに合わせて今年も律儀に咲き始めた彼岸花。

昨年も云っていたように、どうもこの花が苦手だった。

でも彼岸の頃になると、厭でも、この燃えるような緋色の花を目にするようになる。

父母を亡くし墓守をするようになると、

「早く墓参へ行け」と、この異界の花が告げるようだ。

やっぱり、この花は、この世ならざる冥府の花だ。

アルカロイド系の毒を有するということでは、

麝香揚羽蝶(ジャコウアゲハ)も、特異な蝶だ。

彼岸花の群れ咲く川沿いの土手に優雅に舞う、淡いベージュ色のシックな色合いの蝶と会った。

分布範囲は広いのだが、幼虫の食草であるウマノスズクサの生育する限られた場所でしか見られない。

という翅を持って自由に移動できる蝶としては珍しい生態。

食草であるウマノスズクサがアルカロイド系の有毒植物なので、

それを食べるこの蝶は、その身体に同様の毒を有するらしい。

天敵に狙われ難いということで、アゲハモドキやクロアゲハは、このジャコウアゲハに擬態していると云われている。

♀はシックな色合いのベージュだが♂は漆黒の翅と赤い縁取りの蝶。

彼岸花の原色にジャコウアゲハの黒やベージュが絡む絵柄を期待した。

でも、まったく彼岸花に止まろうとしない。

吸蜜しない種類の蝶ではないようだが、どうも彼岸花の蜜は嫌いなようだ?

そして、この季節になると蝶たちの翅は、歳月の経過で傷んでいる。

ジャコウアゲハもナガサキアゲハも、ほとんどの個体が傷だらけだった。

 

彼岸花から、少し話が横道に逸れたようだ。

彼岸花として連想したのが、今年ずっと通い続ける八ツ塚群集古墳だ。

この古代の墓所に咲き誇る異界の花を夢見た。

春先、あんなに次々と多様な花が咲き乱れた野の花の楽園だったのに、

どうも夏以降は、花々の新陳代謝が途絶えてしまった。

期待した彼岸花も数輪を数えるだけだった(残念)

仕様がないので、その数輪を手折って草叢の野仏の花挿しに手向けた。

風化した石の仏に、この原色の花の取り合わせは、意外と合うようだ。

野仏という、野趣で素朴な民間信仰の形に惹かれる。

長いお遍路の道中でも、草叢に埋もれる野仏に手を合わせていた。

私は有名寺社を詣でることよりも、こういう路傍に息づく土地に根差した信仰の形に惹かれる。

価値観の揺らぐ混乱の時代には、その物事の成り立ち、原点回帰に還ることが望ましいように思う。

(歴史にしても近視眼的な視点でなく民族の成り立ちや生物学的な視野を持たないと見えてこないものがある)

 

 この日は晴天が長続きせず曇りがちの一日だった。

夕陽による燃える彼岸花の風景は望めそうもない。

淡い光の淡彩画の風景を工夫してみた。

葛や芒も、それなりの淡彩世界に落し込んでみた。

 


コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 嵐の夜が明けて | トップ | 秋彼岸 »

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
四季の営み (鬼城)
2017-09-23 08:16:04
この季節、毎年忘れることも無く彼岸花が咲く。
春夏秋冬、四季の営みを知らせるか如く・・・
野仏の柔らかな顔立ちと里山の風景はすばらしい。
たとえ毒草であっても群がる蝶はいるようですね。
ちょっと体調不良で出かけることが出来ない。
空も曇天・・・
ブログ記述の見直 (ランスケ)
2017-09-23 14:09:23
季節の端境期なので気温の変化や天候が安定しません。
奥様の療養生活に見通しが立ったことで、気を張っていた生活にゆるみが出たのでしょうか?
体調不良…山の紅葉シーズンも間近です。御自愛ください。
昨夕の天気予報では28日過ぎから低温異常注意報で出ていました。
待望の寒気到来で山の紅葉は一気に進みます。
鬼城さん、風邪なんかひいてる場合じゃないですよ(笑)

ブログというメディア(媒体)の形態を、もう一度考え直しています。
web上のlog(記録)は、日記や備忘録の形態が親和性が高いようです。

日記は思春期の10年間くらい書き続けたことがあります。
これを外の世界に向けて公開することを前提として書くこと。
改めて自分の書く文章を点検してみて、その時によってお座なりで無意味な記述に流される傾向があります。
写真は天候や被写体を選別できる観察力に左右されるので、
可能な限り、言葉による表現は丁寧でありたいですね。
よく観察して、その時その場の空気感を写生して言葉に置き換える。
そして、ささやかでも、そこに物語が立ち上がるような場を提供したい。

かなり高いハードルを設定してしまいました(汗)
無理は承知で、とりあえず頑張ってみます。
モチベーションを上げるには、これが一番(笑)
Unknown (Unknown)
2017-09-23 21:25:13
淡い光の淡彩画の風景を工夫してみた。

葛や芒も、それなりの淡彩世界に落し込んでみた。


やっぱり上手いなあと夜勤明けのぼんやりした脳みそに響きました

カメラマンたるものどのような条件でも受け入れるのは当たり前
少し秋風に吹かれようかなと思い始めたところ
先ずはいつものhomegroundから

常にハードルを高くは私のモットーでもあります
達成することよりもその過程が大事なのだと言い聞かせてますけど(笑)
言葉の素描 (ランスケ)
2017-09-23 23:02:38
Unknownさん、少しは気持ちが前向きに向かい始めましたか?
しばらく音信不通だったので心配していました。

日曜美術館でA・ワイエスを観て、NHKで葛飾応為を取り上げる番組が続きました。
どちらも大好きな絵描きなので、改めてその作品に触れ、また沸々と何かと真剣に向き合いたくなりました。

私の写真は、絵画や文学からの影響の方が強いようです。
表現するという事では、遥かに洗練されていて学ぶべき素材も桁違いに豊富ですからね。
対象物と向き合うという観察と写生をカメラではなく、言葉で再構成してみると、
また被写体を見る視点が変わってくると思います。

ぼちぼち夏から秋へと被写体が目移りする時候、素描をするように感触を確かめています。
堂ヶ森あたりから少し形になり始めたでしょうか?
台風、彼岸花と続いて、次は何を素材にしましょうか?
望ましい選挙結果 (ランスケ)
2017-09-25 14:28:35
共同通信の最新世論調査の結果です。
望ましい選挙結果という設問に、与党と野党の勢力が伯仲する49.3%という数字は、とても健全な世論の流れですね。
議会制民主主義の仕組みをことごとく破壊する現状を変えるには現実的な対応だと思います。

関西市民連合‏ @shiminrengo_ksi ·

「望ましい選挙結果に関しては「与党と野党の勢力が伯仲する」が49.3%、「与党が野党を上回る」は32.4%、「与党と野党が逆転する」が8.4%」

現選挙制度のもとで与野党伯仲を達成するには、「1対1」の構図に持ち込むことが必要不可欠。立憲野党には、世論に応えた選択を期待します。

もう一点、NFLの選手が人種差別発言のトランプに抗議。

https://www.cnn.co.jp/showbiz/35107691.html

アメリカという国は、メディアもそうですが、必ずこういう権力の暴走に対する揺り戻しという
健全な民主主義のシステムが働きますよね…羨ましい。

さて、降って湧いたような衆議院選挙です。
日本人の健全な民主主義への揺り戻しは働くのでしょうか?
都議選のような大きな民意のうねりを期待しています。

コメントを投稿

Walk on」カテゴリの最新記事