ワシー!
「!!!はぁっ???どうしたこりゃあっ???痛いだろうっ???!!!」
ヤサぐれている。
今日はあたしの誕生日。
あまりにいい天気だから鼻歌まじりに一人で釣りに行った。
サビキしてー、アジでも釣ってー、泳がせしてー、と一人で
目論んでいた。
風が強いけど気持ちいいなぁ、と幸せな気分。
二度目の堤防に行き、鱒レンジャーは青虫つけて落として、ビュービュー吹き荒ぶ風の中、手が冷たいなぁ……と思いながらサビキしてた。
してたの。
そしたらサビキが風に煽られて針が刺さったの。
そしたらエサかごがスンって落ちてプチってゆったの。
プチっは皮膚の音だった……。
かごの重さで針ブッスリ刺さったの。
痛い……。
手で外そうとしても全く取れない。
何度やっても取れない。
魚の針外し用のペンチでやっても上手いこと刺さり、全く取れない。
暫し考えてライン切った。
そして一瞬の痛みをこらえて何回も何回も角度変えてみたりしながらペンチで引っ張ってみた。
でも自分の向きからは全く取れない……。
どうしようかなー?
病院行くことではないよなぁ……。
家に帰ってお父さんに取ってもらうかなぁ……。
散歩に行っていない時間だなぁ……。
ツレの店に行って取ってもらうかなぁ……。
忙しいだろうなぁ……。
トロい!って怒られるかなぁ……。
仕方ないのでサビキしながら考えた。
そう、釣りながら。
そうこうしてると556から誕生日おめでとうLINE。
写真付きで現状説明。
2センチくらいのヒイラギが何回か釣れたけど、喜べるサイズでもないわ、針は刺さってるわ、情けなくなってきた。
帰ろうかなぁ……どうしようかなぁ……と考えながら釣ってると近くのお船のおじちゃんが来た。
用事が終わったところで
「何か釣れるかねー?」
と話し掛けてきてくれた。
釣りの状況を話し、
「まぁ、頑張ってー!」
とにこやかに帰ろうとするおじちゃんに勇気出して言った。
「すみません!こんな事、初めてお会いした方に言うのおかしいですけどっ!これを外してはもらえませんかっ?」
指見せる。
「!!!はぁっ???どうしたこりゃあっ???痛いだろうっ???!!!」
「いや、痛くはないんですけど全然取れなくて……」
「かわいそうに!痛いなぁ!」
「いや、痛くは……」
「そりゃ痺れて分からなくなってるんだ!」
「……いや……そんなには……」
あたしのペンチでおじちゃん挑戦。
「痛いよっ?一瞬ガマンしろ?そりゃっ!」
……外れない……。
「ごめんなぁ!痛いなぁ!」
「大丈夫ですっ!」
「そりゃっ!……あ……外れんなぁ……。向きがなぁ……。船から取ってくる!」
わざわざ船から違うペンチ持ってきてくれ、更にやってみて、三度目でやっと外れた!!!
「よっしゃっ!外れたぞっ!」
「やったぁっ!!!ありがとうございますっ!!!」
「痛かったなぁ……。大丈夫かぁ?」
「全然大丈夫です!」
「……針つけたまま釣りしてたのか……???よっぽど好きなんだなぁ……」
「はぁ……まぁ好きですけど、どうしようか考えながら……」
「針つけたまま……ねぇ……」
「ハハ……」
「まぁ、気を付けてねぇ!」
「はいー……本当にありがとうございましたっ!!!」
その港の漁師仲間に回るであろう、「イタイ子がいた。」という針ブッ刺したまま釣りしてた女。
恥ずかしくてもう行けない。
いや、菓子折でも持ってお礼をしに行きたい。本気で。
口止め料……?
いや、もう回ってるハズだ。
それは諦めるけど、本当に有り難かったもん。
今日の釣果はテメェです!
あたしの一年、幸せでありますようにっ!!!
そう……
とじっくり見詰めておりました……