臨済宗南禅寺派圓通寺

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夏目漱石と修行僧 

2025-03-10 | Zazen

漱石は最晩年、大正三年から五年にかけて神戸の祥福寺僧堂の雲水(修行僧)二人と付き合いがありました。そのきっかけは鬼村元成が漱石に『吾輩は猫である』を読んで手紙を書いたことからでした。そのときの漱石の返事にこのようにあります。
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あなたが私の本をよんで下さるのは私にとって有難いことです。私はお礼を申し上げます。薮の中で猫をよんだという事は可笑しいです。あなた方の修行の方から見たら余計な小説などをよむと定めて叱られるでしょう。まあ叱られない程度で御やめなさい。私はあなたの手紙を下さるのを読みたいと思います。夫れから私はあなたが将来座禅を勉強して立派な師家になられん事を希望します。
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 漱石は修行僧鬼村元成に俳句の指導をしました。「まきを割るかはた祖を割るか秋の空」でこのように手紙を書きました。
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 禅が鼻についているでしょう。禅を振り回したくなるものです。悪い癖ですね。
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これは漱石のいい指導です。「味噌くさい味噌は上味噌にあらず」です。
漱石は漢詩の指導もしたようです。修行僧富沢敬道にこのように手紙を書きました。
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 作務の間に試作をするのは風流です。然しあなたの詩は、まだ旨い所へ行っていませんね。昔の人の作例を読んで深い感興(かんきょう)が湧きさえすればもっと好い詩ができる筈だと思います。
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大正五年八月十四日の鬼村に宛てた手紙に久留米梅林寺僧堂の三生軒猷禅老師の書が欲しいと書いています。その努力をして貰ったけれど手に入らなかったようです。
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あなたは久留米の猷禅さんを知りませんか。あの人は墨梅と書がうまいと聞きました。書いて貰おうとおもうがツテがありませんので・・
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大正五年十月に二人の修行僧鬼村と富沢は神戸から東京見物に来ました。漱石は自宅に彼らを泊まらせ世話をしたようです。朝日新聞社印刷工場の見学を世話しました。彼らから禅の話を聴くのが楽しかったようです。漱石は修行僧たちの身のこなし、態度の爽やかさに感心したようです。大正五年十一月十五日の手紙に正直な気持ちを書きました。漱石の「禅」へのあこがれといえるでしょう。
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変な事をいいますが、私は五十になって始めて道に志す事に気がついた愚物です。其道がいつ手に入るだろうかと考えると大変な距離があるように思われて吃驚しています。あなた方は私には能く解らない禅の専門家ですが、道の修行に於いて骨を折っているのだから五十迄愚図愚図していた私よりどんなに幸福かしれません。又どんなに特勝な心掛けか知れません。私は貴方方の奇特な心得を礼拝しています。
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坐禅会 毎週土曜日午前6:25~8:00 
久留米市宮の陣町大杜1577-1 圓通寺 
初心者歓迎 参加費無料 詳細は電話でお問い合わせください。
℡0942-34-0350
初回参加のみ千円。二回目以降つづけていただければ無料です。
●学校やクラブなど団体研修 坐禅申し込み随時うけたまわります。

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