そんな優良顧客はABC分析でいうところのAランク客という事になる。
価格という奴はその対価として有形無形のもの合わせて何れだけ受け取るか(価値として感じるか?)によって高いとも安いともなる。
そんな優良顧客が大勢居る訳もなくB,C客と下位になるほどその人数は多くなる。
圧倒的なボリュームを占めるB,C客と共に提供側のショップの多くもまた『価値基準』はおいおい……プライスそのもので判断しがちである。
有形価値の一番大きい要素が価格そのものなのである。
店も顧客も『自分が何を求めているのか?』をハッキリしなきゃ価値基準が曖昧模糊となってしまう。
かなり前にイタリアリストランテでちょっとしたトラブルがあって議論になった。
注文が『それだけ?』っていう問題である。
この場合顧客は、お腹を満たしたり料理を味わう事より、『談笑する場所』に価値があったと見なされる。
ならば……ファミレスか?カフェにすれば良かったね?という話。
一方の店側の運営はそんなお客が『入りづらい構え』を作ってなかったという不完全さがあったのかもね?……見るからにファミレス代わりに使うには気が引ける?位の内外装と調度品当たりが未完成だったかも?……。
どちらにも自分に正義(価値観)があり良し悪しと判定は下せない。お互いのミスマッチから起きた軋轢なのである。
自分を自己評価以下に扱われたら誰でも腹を立てる。お店はバカにすんなよ!となっただろう。一方サラダとか他を勧められたら自分の注文が大きく外してる事に気付けない顧客側も哀しい。だって自分の見識のなさを自ら実証してるのだから。
おカネは誰にとっても大事です。
しかしそのカネを巡って自分のもっと大切な何かをスポイルしてる事が多い。
若い頃……高級フレンチとか懐石料理は大の苦手……雰囲気に気圧されて何食ったか?分からなかった。
しかしソコに居る客達の『何か』が違っていた。彼等にあって自分に無いもの?って何だろう?……と思った。
カッコ付けの為の高額メニューじゃない、彼等はそれを本当に楽しみ堪能していた。
それからは『自分の分からない』を徹底的にお店の人に聞いた。そうするとお店の人達は僕を見下さなかった。それどころか恐ろしく親切に教えてくれたのだった。
その貧乏で若造の僕の態度は自然だったのかも知れない。
『自分が知らないことを知っている』事が僕を救ってくれたんだと思う。その当たり前に従った時……良い店ほど親切だったのである。
自分のその時の浅はかな価値観に閉じ籠って
理解できない事を軒並み嫌悪し罵倒してたら
……野蛮人のオッサンとなっていたに違いないと思うのである。
成金趣味でコケ脅して来る様な店には、むきになって対抗したこともあった。三十万と足りなきゃ200万まで払えるカード用意してブッてるレストランへ赴き……メニュー片っ端からオーダーした。酒は弱いから呑める奴三人を頼って、勧めてくるもの全て空けてやった。
次第にその店の従業員達は僕達のテーブルを絶えずチラチラと見ては落ち着きを失っていった。そんな店にお似合いのコケ脅しの客達のテーブルの会話は小さくなっていく。
大き過ぎる声でワインのウンチク喋ってたオヤジを黙らせるのにそんなに時間は掛からなかった。
覚悟だと思った。自分のコンプレックス解消は覚悟なんだと。良い店にたまに行っては聞きまくってるとそんな覚悟が出来た。
一生成金コケ脅しに気圧されびくびく生きるのは御免だったから……。
そんなコケ脅しを克服するのにそこまでカネは使わずに済んだ。なぁーんだ?と思った。
たったこれだけで平身低頭してびくびくしてる人間達をみてそんな輩の正体というか本質が分かった。ちやほやされてもちっとも嬉しくなかった。
僕はこんな人種にコケ脅されてた?……帰りのタクシーの中で散々自分を笑ってやったのでした……。