別れの季節
どんな小説もかなわない とてつもなく濃い時間がながれる 見慣れた顔が滲んでみえる 会うは別れのはじめとは言え これほど切なく愛しいとは・・ ...
稀な存在
「老人たち」 ある家で作業をしていたところ 一台の車がとまり 数名の老人が出てきた 外は梅の蕾を窄めるような小雪が舞っている ...
写真
愛犬を連れての散歩道 いつもの簡素な庭のある家の 沈丁花の芳しい香りに足がとまる 色もきれいである 写真をとろうか?一瞬迷うが その匂いを嗅ぐことに夢中で 結局は写さな...
妹
いつも流行の先を行ってたなあ 髪を染め 無線つけたターボ車 乗り回し ロックをやったり ...
帳(とばり)で
昼間 あれほど 輝いていたものの 夕暮れには いろどりも 帳の中で あやふやになった 風がふくたび かすかに頬にふれるが 明日には止むであろう ...
救い
己の非力に 遭遇すると 昔 押し殺したことばが蘇る 「おとうさん おかあさん」 「どうして守ってくれなかったの」 ...
ボーナス
しなびたもの ふるい根株を 取り分けると 新しい株や種を植え付けたりと 黙々と畑にむかう 足がわるいのか 時々膝をさすっている 「人生いいこと無いねえ、 貧乏、貧乏で」 ...
原風景
なぜ拘るのだろう 己を突き動かすもの それはどこから来るのか 時間の経過は 心の迷路となり 世界は滞ってし...
瞳
ふとしたことで娘が不機嫌になった 「父さん、こっちにこないで」 孫まで 「ジイジ、こっちにこないで」 である じっとみつめると 目を伏せる 親への義理立てである そこ...
巡り会い
それは 小さな国の近海でのこと もう一息のところで 風に阻まれ 寒さに凍り 荒波に落ちかける燕たちがありました そのとき だれかのよぶ声で もう一度舞い上がると 大き...