着流し
梅雨が終わるのを今か今かと 待ち構えていた若い衆らは 祭りを求め、花火のように弾けたものだ。 その多くは徒党を組み、 同じ色の着流しで横一文字、 道路を占拠しながら練り歩...
岩垂草
庭の雑草対策にイワダレソウを植えたのが3年前。 ところが雑草に紛れ見分けがつかなくなり、 やむなく雑草共々引き抜いた。 そこで化粧砂利を敷くと草が殆ど生えず 昨年以来、随分...
なげきの1日
わたしが学校へ行っているあいだに赤紙が来たのか となりのパン屋のお兄ちゃんはもういない 何の気なしに近所のデパートに行ったわたしは 大きな写真になっているお兄ちゃんをみた ...
黄昏の顔
太く短く生きた親父は 郷愁のうちに 子供がなく趣味に生きた伯父は 悔しさを滲ませ 情に厚く信条を貫いた知人には 恐れがなく 本心よりも義務を重んじた知人は 疑念のうち...
百日紅
手ぬぐいで汗を拭くが 背中までびっしょりである 雑草をひき 砂利を敷き ひと段落したところで ゴロゴロと鳴り始め ポロリと雫が落ちてきた わたしは玄関ポーチに入り ...
挽歌
建設業を営む親父は 用心棒を雇っていた。 侠客くずれに 耳のつぶれた元ボクサー 柔道の猛者もいれば 大男で怪力の持ち主や 小太刀の使い手・・・ いづれも その界隈で...
備えあれば
乾季に雨季に備え、 雨季に乾季に備える。 これは現実的で 賢い投資であり、 一見 無駄に思えるこ...
挽歌
(続き) 当初、車の運転手として 雇われた男は プロレスラー並みの体と 威勢の良い声で 周りを威圧していた。 大きく張った胸元を見せびらかすように シャツの前を常に肌...
挽歌
あれ以来、Tの横暴さは影をひそめ 職場の雰囲気も変わった。 今度はNたち数人のグループが 現場を仕切るようになった。 バブル初期の当時、飲み屋街も繁盛しており N氏も御多...
連想
孫と遊ぶのが これほど楽しみになるとは 夢にも想わなかった。 責任が軽くなったからなのか? 良くわからない。 ボールと滑り台で遊んでいる最中、 わたしを見ながら思い出し...