まなざし、壱
若いときから 飲む打つ買うがそろった 土木建設関係の 営業一筋の初老の男 今日も漂々と契約をとる 独特の 敬ったような言い回しが 特徴である 「・・そうでございます...
まなざし、弐
信条の違いで 分かたれる小さな町 大きな権威や 利権が絡むと わたしたちは脆い 今は静けさを取り戻したが いつかまた 分かたれるのだろうか そんな思案をしながら...
問いかけ
*朝日新聞「戦争を語りつぐ」より抜粋 1945年3月、沖縄に米軍上陸・・・ 現地の石嶺眞勇さん一家の父親は防衛隊にとられ 自決用の手榴弾を渡され、避難場所を求めました...
子
Ⅰ 「いいよ無理せんでも」 「だいじょうぶ」 おや 何時の間に 随分 しっかりしたもので・・ そうとなれば 好物の暖かいものを 予告なしに差し出す 「あ あり...
街
「街」 街は 年の瀬の慌しさに染まり 愛や自由が歌われ 灯りの奥には 繋がれた者たちが息づく そこに飾られた 華やかなウインドウに 一瞬...
ライバル登場
彼女といえば 先ずはわたしを観察 気になる何かをたずね わたしの冗談で盛り上がり それで遊びタイムに入る ところが今 状況が激変 玄関ドアを開けると いつものように...
森をぬけて
明日は雪山を降り 幾つか森をぬけ あのなつかしい所 陽の射す小道をたどります あなたは何時ものように しずかにそこを歩いています わたし...
万象をつきぬける
木々を揺らし 枯葉を舞わせ 今日も 風は 全存在を 突き抜けている 影にすぎない子は 実体となり 実体は影となった そうして 今日が来て 梅の花が ほんの少...
変な癖
いいなぁ・・ と思ったとき わたしは一秒ぐらい瞼をとじる いつからなのか 覚えてないが 弟をなくし 近所の友を亡くして以来 時が過ぎるのを ...
心配できる幸せ
小さな街では 雪が少し続くと 人通りも少なく 店は早仕舞である わたしも日が暮れる前に 帰路に付く ...