ネコヤナギ
ちいさな子猫が
お腹をすかせて
冬の雪野原を
ひとりぼっちで
歩いていた
一時間歩いても
歩いても
その小さな足では
野原を出ることは できずに
ポツンと立つ木が
子猫を呼んだ
「君の名前は?」
「あなたのお名前は?」
「ぼくには 名前がないんだ」
「わたしもよ」
シンシンと降る雪の中
みつめ合っていた二人は
ちょっと可笑しくなって
ふふふと 笑いあった
「今日だけ あなたのところで
休んでいいかしら?」
「いいよいいよ・・ずっといてほしいくらいだよ」
嬉しくて 頬を赤くして
名前のない木は
手を差し伸べた
子猫は 木の腕に抱かれた
寂しかった二人は
名前のない二人は
ずっと 抱き合った
それから何年か経った
いつのまにか 子猫の姿はなく
名前のない木の指先に
子猫のツメの様な
フワフワした 優しい芽が生えた
あの雪の中 慈しみあった
二人の心のように
名前のない二人の子
ネコヤナギが 生まれたんだ・・・
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ずいぶん前に書いた詩ですが、わたしはこの詩が好きです。
きっと前世で、孤独な時代があったからだと思います。
親がいてくれたから、わたしは産まれることが出来て、
主人が出会ってくれたから、わたしは子供を産むことが出来ました。
色んなことはあるけれど、
子供の存在が、独りでいるといつの間にか思考として上がってくる
雑多な思いや忘れていい過去のことを、手の甲で払いのけるようにしてくれます。
それより今を生きようよ お母さん。
自分のつまらぬつぶやきにも、耳を傾けてくれる存在。
本当に求めれば、貴方にふさわしい幸せは、必ず手に入ると思います。
それは、一人でも良いのです。
この木と猫のように・・・。