江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

検定新中学校道徳教科書を閲覧して

2018-06-01 | 随想

                                                 
各地区の展示に先駆けて行われている文科省の教科書検定結果公開事業(教科書研究センター5F会議室・江東区)で検定新中学校道徳教科書を閲覧してきた。
 
検定合格した8社中、「つくる会」系の教科書は、日本教科書
と教育出版の2社。
 
「愛国心」などの徳目を数値や記号を使って、段階的に子どもに自己評価させる欄を掲載したのは、8社中5社。
 
数値による段階別自己評価は、文科省の「徳目」に向けて子どもたちを誘導する手段となり、教員による記述式評価と子どもたち自身による自己評価で子どもたちの内心に大きな統制力が働くことは明らかだ。
 
 
まず自己評価欄を中心に各社の教科書を見ることにした。
数値による段階別自己評価欄をつけたのは日本教科書、教育出版、廣済堂あかつき、日本文教出版、東京書籍の5社。
 
 
廣済堂あかつき~教材ごとに、かつ22の徳目ごとに5段階
で自己評価させている。
日本文教出版~教材別に5段階自己評価。
東京書籍~学期ごとに4段階自己評価させ、評価欄に切り取
り線をつけた。教員に提出させるためか?
教育出版~教材ごとに心のかがやきを3段階で自己評価。
 
 
とりわけ大きな問題を感じたのが、日本教科書。
「心の成長を振り返りましょう」と題した頁を巻末に作り、
文科省の22の徳目を「中学生で身につけたい22の心」
として列挙している。
 
例えば、「国を愛し、伝統や文化を受け継ぎ、国を発展させようとする心」について、
1レベル:意味はわかるけれど、大切さを感じない
2レベル:大切さや意味は分かるけど、態度や行動にすることができない
3レベル:大切さや意味は理解していても、態度や行動にでき
る時とできない時がある
4レベル:大切さや意味は理解していて、多くの場面で態度や行動にできている
「自分のレベルを判断して〇をつけましょう」と子どもたち
に呼びかけている。
 
徳目への「理解」だけでなく「態度や行動」にまで自己評価を
させるのは日本教科書だ
態度や行動にまで子どもたちを統制していくものとなっている。
 
 
数値による評価ではなく、記述式等の自己評価を取り入れたの
は3社。
 
学校図書~教材ごとに学びの記録を書き、学期ごとに記述式
ふりかえり。
光村図書~学びの記録。教材ごとに学びのテーマで「私の気づき」を記述
学研教育みらい~「心の四季」のコーナーに自由記述。一番シンプル。
 
 
一つ一つの教材を吟味するゆとりはなかったが、今回の中
学校道徳教科書は全体に、各社ともに国家主義的な傾向が
強化されたように感じた。
 
とくに突出して問題を感じたのは日本教科書。
安倍首相の政策ブレーン八木秀次日本教育再生機構理事長が
設立し、ヘイト本などを出版する晋游舎の子会社であるという出自もさることながら、以下の点から最も子どもたちに手渡したくない内容を多く含んでいる教科書と思う。
 
①徳目順で教材を配列、学びづらい。
道徳科学習指導要領の4項目(自己・他者・集団や社会・超自然や国家)が順に配列されている。たとえば1学期は自分にかかわる問題だけになる。
他の教科書は4項目をおり混ぜて編集されている。
 
②教材に愛国心や伝統文化を強調する国家主義的内容が多く
問題。
〇3年「白菊」に無関係な安倍首相のパールハーバー演説を掲載。 
〇 台湾支配に触れずに八田與一(育鵬社教科書に掲載)の
ダム建設の美談を掲載。
 
③文科省・文部省提供教材を最も多く使用している。
 
 
「戦争をする国」に向けて9条改憲発議までねらっている安
倍政権にとって、道徳の教科化の目的は「子どもたちを国家
と社会(大企業)に貢献する人材に育成すること」(俵義文
さん)にある。
道徳が教科化されたことそのものに大きな問題があることは
否めない……。
 
 
6月1日からは各地区での教科書展示会が開催される。
多くの方が道徳教科書を実際に手にとって、感じた意見を各
地区の教育委員会によせてほしい。
教材を読んで気づいたことなどを出し合って、中学校道徳教
科書採択に向けて、さらに検討を深め声をあげていきたい。
 
 

★江戸川区の予定 

<「特別の教科道徳」採択見本本の展示>
6月1日(金)~14日(木)午前9時00分~午後9時30分
中央図書館【2階】小岩図書館【3階】小松川図書館【3階】
葛西図書館【1階】西葛西図書館【1階】東部図書館【1階】篠崎図書館【3階】
 
<法定展示会日程>
中央図書館【2階】6月15日(金)~29日(金)
※6月25日は除く 午前9時00分から午後9時30分
 

 
<K>


 

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