江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

汚染水の海洋放出を許すな~2度目の原水禁大会in福島~

2022-08-19 | 随想
7月30日31日に、原水禁大会福島大会に参加した。
昨年に続いて2度目の参加である。

30日にパルセいいざかで開催された全体集会では、大阪府立大学名誉教授の長沢啓行さんによる「国と東電が進めるALPS処理水海洋放出の問題点と反対する根拠」と題した基調講演と、
「トリチウム汚染水海洋放出問題について」のシンポジウムが行われた。今回の福島大会のメインテーマが「ALPS処理水の海洋放出」問題ということだ。

長沢教授は、経産省と原子力規制庁が明らかにしている資料をもとに、政府と東電が進めている「トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出」には、科学的合理性も正義もないと話されました。
国と東電は、海洋放出の理由を次のように説明しています。

1 処理水をためているタンクが満杯になり、増設もできない。
2 タンクが敷地をふさいでいるので廃炉のための、敷地利用の妨げとなる。
3 汚染水の発生が止められない。(今後も増えてしまう)

これについて長沢教授は、すべて否定されます。

①については、福島第一原発には12万㎡の増設余地があり、タンクの増設は可能である。
②については、廃炉作業に伴う放射性廃棄物の「乾式貯蔵施設」は、使用済み核燃料プールなどの既存施設を活用すれば新設を急ぐ必要がなく、
燃料デブリの取り出しに至っては、全くめどが立っていないのが現状であり、これも汚染水の海洋放出をしてまで施設を作る必然性がない。
③については、1号機の屋根を完成させれば、降雨による新たな汚染水の発生を止めることができ、地下水の流入を止めれば新たな汚染水の発生を抑えることは可能。

これだけでも、いかに政府と東電の海洋放出決定がいかがわしいものかよくわかると思いますが、話を聞いて最もひどいと思ったのは、政府と東電が福島県漁連に対して行った約束をほごにしたことです。
政府は、平成27年に「地下水バイパスとサブドレン水の排出」を漁民に認めさせた時に「ALPS処理水は関係者の理解なしにはいかなる処分も(=海洋放出は)しない」ことを約束していたのです。
(当時の経産相は高市早苗:漁連への回答文書は高市早苗氏のホームページにある)
さらに、東電も、同年8月25日付の福島県漁連への回答で「建屋内の水は、多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任をもって厳重に保管管理を行い、
漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わないこと」と回答しているのです。

また、昨年の国による「海洋放出決定」以来、原子力規制庁による準備工事の許可などがあっという間に行われ、すでに放出のためのトンネル工事に着工するなど、
初めから「海洋放出ありき」でことを進めてきたことがよくわかります。
これも、県民・漁業者を馬鹿にした話ではありませんか。

残念ながら、マスコミはこうした無責任な態度を追及せず「風評被害」の問題ととらえ、問題の本質から国民の目をそらしています。
シンポジウムで語られた、漁民の海に対する思いに寄り添うことなく、ただ「金」=金銭で保証すればいいという政府の姿勢は、厳しく糾弾されなくてはなりません。

先日開催された全国知事会では、汚染水の海洋放出について「理解が進んでいない」とはしたものの、「風評被害対策などで理解が進むよう求める」と、
「風評被害」の問題に矮小化し、根本的な問題に切り込んでいません。


翌31日には、被災地訪問のフィールドワークが行われました。
フィールドワークの参加者約60名は、2台のバスに分乗して被災地に向かいます。
去年は実施されなかったので、自分で「原子力災害伝承館」を訪ねてみたが、今回は原水禁現地スタッフのガイド付きで、途中の帰還困難地域などを車窓から見学することができました。

帰還困難地域では、主要な道路の周辺だけが除染されているのみで、山林は手つかずのままなので、道路から林に入る枝道にはバリケードが設置され、立ち入り禁止となっている。
昨年も原ノ町までのバスに乗っていて、福島県の広さ=失われた故郷の大きさを実感したのだが、バリケードを見ると、まき散らされた放射性物質に対して、人間の無力さを感じざるを得ません。

双葉町の請戸港を見た後、高台にある慰霊碑の前で震災当時町がどのような被害にあったかの説明を受けました。
住民の犠牲者は182名。海岸のそばに立つ請戸小学校に残っていた児童は、奇跡的に全員無事に高台に避難できたそうです。
請戸小学校の校舎は、震災遺構として保存されています。

港(漁港)は、復興予算で整備されているにもかかわらず、汚染水の海洋放出をしようというのは、理屈に合わない話ではないでしょうか。

二度目の訪問となった伝承館では、原発立地の双葉町に掲げられたあの「原子力明るい未来のエネルギー」の看板(レプリカとのこと)を見ることができました。
実は昨年すでに展示されていたらしいのですが、順路とは別の建物の奥にあったために見損ねていたのです。
自分の子どものころを考えると、この看板の通り、原子力の未来には何の疑いも持たず安全神話にどっぷりつかっていたのだと思い知らされます。
伝承館の展示内容には国の責任があいまいなど様々な問題がありますが、一度は訪れてみてほしいと思います。



↓バリケード 山林は除染できず放射線量が高い





2022/8/17

-K.H-

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