安倍晋三首相は1/31の参議院予算委員会で、アメリカのトランプ大統領がイスラム圏7ヶ国からの入国禁止した件について「各国の入国管理政策は基本的には内政事項だ。どのように行なっていくかは、その国の判断だ」と述べた。
また、「移民政策に関する大統領令の実施状況を政府としても関心をもって見守りたい。」
「 難民が出る状況を根絶するために世界が協力しなければいけない。日本も大きな役割を担っていかなければならない」とも述べた。
これだけ聞いていると、とりたてて間違ったことを言っていない様にも聞こえるが、質問した福山議員は、入国禁止策を講じたトランプの大統領令について、自由・民主主義・人権や法の支配等の価値観を共有している日米両国としてどう考えるのか?という趣旨の質問をしたのだ。
同様な質問は、前日にも蓮舫議員が首相に対して行ったが同様な回答であった。
因みに、この蓮舫質問をとらえて一斉にネトウヨたちが反応(蓮舫氏に対する差別を煽る誹謗中傷の類)したのもこの問題の本質を表している様で象徴的ではあった。
要するに、安倍晋三の認識はこれらのネトウヨと同根同程度のものでしかないのだが…。
トランプのこうした言動に対しては、同じく同盟国であるイギリスやドイツ等の首脳も苦言や批判をしているし、隣国カナダのトルドー首相は「迫害や恐怖、戦火から逃れて来た人々をカナダ人は信仰に関係なく受け入れている。多様性が私たちの強みだ」とfacebookに書き込んでいる。
民主主義を旗印にする国々は、例え他国であってもそれを否定する様な発言や行動にはきちんと批判なり苦言を呈するのだ。
いや、外国ばかりではない。
ニューヨーク等アメリカ15州の司法長官は29日、「大統領令は危険で憲法違反だ」と非難する共同声明を出している。
さらに、アメリカ国内の主なIT業界や自動車メーカー等の企業からも一斉に反発の声が上がっている。
アップルのクックCEOは社員向けメッセージで「アップルは移民なしに存在できない」とし、今回の大統領令に「深い懸念」を表明した。
グーグルのピチャイCEOは社員に「もし米国外にいて、助けが必要なら社内担当部署に連絡して」と呼びかけた。
フォード・モーターのマーク・フィールズCEOとビル・フォード会長は連盟で「企業としての価値に反する政策は支持しない」と従業員向け声明に書き込んだ。
身内企業である金融大手、ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOでさえ、「支持できない。」「多様性こそ成功の源」と批判した。
もちろん、企業は成長の基盤である安価な労働力の源を失いたくないという思惑があるかもしれないが、多様性を認める価値観こそ世界のスタンダードであるという認識に立っている。
こうした世界的状況の中での安倍晋三の発言であることを考えると、もはやトランプ同様と世界から認識されても仕方あるまい。
既に英字新聞The Japan Timesは一面トップで安倍首相の「コメントする立場にない」という発言をとらえて、「日本が米国(トランプ氏)に沈黙」と紹介している。
トランプ氏との対談で、仮に安倍首相が「入国禁止策はマズイよ」と意見したらどんな答が返ってくるのか大いに興味がある。
もしかしたら、他のことと同様にトランプ氏は日本の移民・難民政策の中身を知らないかもしれない。
「共通の敵、テロとの戦い」のために巨額を支出してISを怒らせ、日本人人質が殺されたことを忘れてはならない。
安倍首相が言うところの、「難民が出る状況を根絶する」やり方は一体どうすることなのか?
「テロとの戦い」の結果、難民を生み出している事実には目をつぶろうと言うことなのか…?
「日本も大きな役割を担う」とは、南スーダンに自衛隊を派遣して平和の名の下に殺し合いの危険に晒すことなのか…。
ある意味ではトランプの先取りをしているとも言える安倍晋三が、従来の対米追随政策は捨てられないためにあくまでもアメリカ大統領のご機嫌を伺っているとしたら、実に滑稽であるばかりか私たち日本の民衆にとっては不幸なことである。
トランプの支持率が低いのは、アメリカのメディアが真実を追求する志が高いから。
安倍の支持率が高いのは、日本のメディアがその逆で志が低いから…、という言われるのも納得できる。
しかし、ここは日本。
大手メディアばかりを頼っても仕方ない。
私たち自身が声を上げ続けるしかないだろう。
<すばる>