江戸川教育文化センター

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PISA学力テストに翻弄されるフランス(1)

2024-01-02 | 随想
今、フランスの教育界が揺れている。
ニース在住の娘の話によると、今回の「揺れ」のきっかけは例のPISA学力テスト(2022年)の結果ではないかと言う。

今回のテストはOECD参加81ヶ国69万人が参加して行われ、日本では高校や高専の一年生の生徒約6千人が受けたものだ。
その結果、日本では読解力が過去最高の3位になり、数学が5位、科学が2位と好成績を残したと評価されている。
(この件については、別途あらためて考察)
しかし、フランスは読解力が29位、数学と科学は共に26位という結果だった。

このフランスの成績の傾向は今に始まったものではなく、2000年代前半から見え始め特に数学の低学力は当時から問題視されていたものだ。
ところが今回、数学だけでなく総合的にもEU参加国中の下位に落ち込んだ。

これに対し教育相は学力増進を目的とする諸措置を学校関係者らに示したのである。
これによると、今年の9月の新学年から幼稚園・小学校に新たなカリキュラムを導入し、中学校では国語・数学の能力別授業を実施する予定だという。
これはにPISAで1位だったシンガポールのメソッドを取り入れたもののようだ。

こうした動きは未だPISAの結果が出る前の昨年6月頃から顕著になってきたようだ。
6月、マルセイユを訪れたマクロン大統領が学校休暇の見直し、特に夏休みの短縮を提案した。
さらに、「長いこと学校を離れる夏休みに、生徒間に不平等が生じる」と長期の夏休みを否定的に評価した。
これは、経済格差が教育格差に繋がる可能性に言及したものだが、これに対して教育心理学のクレール・ルコント名誉教授は、夏休みよりも秋休みの短縮と、週4日制(水、土、日休み)の廃止を要請したという。

たしかにフランスの学校はバカンスが多い。
年4回2週間ずつの休みが設定されており、約2ヶ月の夏休み明け6週間後にはまた2週間の秋休みがあるのだ。

クレール・ルコント氏が言及しているのは、こうした多くの節目のバカンスと水曜日休みの見直しこそ必要としており、夏休みは貴重な大切な休暇だとしている。
即ち、「夏休みは家族と過ごす時間。子供たちにとって、学校ではできない発見をするよい機会。日頃忙しい保護者は、この機会に子どもたちと森を歩いたり、創作活動をして欲しい」と述べている。

ところが現実はマクロン大統領が言うように経済格差が進行して、夏休みに子どもたちと共に過ごすことのできない家庭も存在するのは事実ではある。

娘によると、夏休み短縮の方法として今言われているのが8月終盤からの新学期(新学年)開始のようだが、9月新学年という長年の習慣を崩すものであるだけに果たしてどれだけ信憑性のあるものかは分からない。
それより、夏休み開始時期を遅らせる方へシフトする方が現実的なような気もする。
何れにしても、夏休み短縮は大統領提案がそのまま実施されるか紆余曲折が予想される。

(つづく)



<すばる>

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