江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

雰囲気に従う未熟な国民性

2021-08-12 | 随想
コロナ・パンディミックの収束が見えない中で、世界各国では様々な動きが見られる。
野次馬感覚で新聞を眺めてみると、いかにもその国らしいというか気質の特徴を見せつけられた気がする。



まずはヨーロッパの自由を標榜する国フランス。

数年前には「黄色いベスト運動」と言われる大規模なデモが継続した。
燃料税削減、最低賃金引き上げ、富裕層への連帯税等を求めてマクロン政権に立ち向かった。
この時のデモ参加者は労働者から中間層まで幅広い人々が参加した。
因みに、この蛍光色の黄色いベストは2008年以降に自動車運転者は車内に携行するのを義務付けられたもので、一旦事故等が発生した時はこれを着用して車外に立たなければならないのだ。

今、デモで主張していることは「衛生パス」と言われる新型コロナウイルスの接種証明書の提示義務に対する反対運動だ。
飛行機や長距離列車に乗る際や劇場や飲食店等に入る際に提示しなければならないという。
不携帯が発覚すると135ユーロ(約17,000円)の罰金が請求される。
都合によるワクチン接種が不可能な者は陰性証明書の提示が求められるそうだ。

フランス在住の私の孫っ子の祖母は強いアレルギー体質で接種はできない。
特例によって陰性証明を取れば良いのだが、この「衛生パス」携帯義務を宣告されたことに強く反発、地方都市オルレアンのデモに参加したという。
彼女は普段から特に政治や社会運動には参加するようなタイプではないが、今回の義務化には相当に怒っているようだ。

先の「黄色いベスト運動」程の広がりは見せていないものの、連日各地でデモ行進が行われているようだ。
現在、娘たちが住んでいるニースの大通りでもデモがあり、並走する多くの自家用車からも連隊を示すクラクションが鳴り続けていたという。




次は日本と同じアジアの一国であるタイのデモだ。
コロナがなくてもここタイの政情は不安定な局面が続いている。
軍事政権の流れをくむ現政権の退陣や、王室改革を求めて青年層を中心とした反政府運動が続いている。
ところが、ここに来てコロナ感染が急速に拡大して人々は恐怖感を募らせている。

しかし、政権は富裕層に手厚い感染予防対策をしているのに対し、広く一般国民にはワクチン接種さえままならない状況である。
まして政府は、コロナ感染を理由に5人以上の集会を禁止する措置をとった。
これに対して、民衆は一層の怒りを募らせ、プラユット首相の退陣を求めてデモを強化するに及んだ。
フランスとは異なり、コロナワクチン接種等のコロナ対策の強化を求めたものだ。

因みに、首都バンコクではロックダウンが継続するも感染者や死者の数が減少していない状態だという。
人々はまさに生きるか死ぬかを賭けた闘いを始めている。

さて、最後は極東アジア日本国の様子だが、ここを象徴する新聞記事が上記の記事と同日に東京新聞に掲載されていた。
「こちら特報部」の記事中の小見出しには「雰囲気に従う未熟な国民性」と書かれていた。



同じコロナ禍にあっても、日本の少なからぬ人々は先の二国のような表現をすることはない。
オリンピックも当初は大部分の国民が否定していたにも関わらず、国によって開催が強行された後は反対を唱える人々はごく少数派に転じるのである。
まさにスガ首相の思惑通りと言うべきか、コロナよりもアスリートの動きに注目が集まる。
いや、実際のところはそれほどでもなくメディアがひたすら煽っている部分もあるが、野党第一党までもが敢えて始まってしまったオリンピックに中止を求めることはしなかった。

そもそも誘致の段階から嘘と疑惑紛れの2020TOKYO大会だ。
日本では最も過酷な季節であるこの時期に、誰が快適なコンデションでスポーツできると思うであろうか⁉︎
3.11大災害からの復興のシンボルとなった⁉︎
なんて、誰一人として思う人はいない。

強行開催の醜悪なる事態は開会式直前にも集中して表れた。
オリンピック憲章には「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」とある。
残念ながら今回の大会は、この言葉とは真逆の経過を辿ったと言うしかない。

そして今、安全を担保する意味で実効性のない「緊急事態宣言」は人々を苦境に陥れるだけでコロナ感染には全くの無策の政府がのうのうとして継続している。
医療機関は既に崩壊し始めているにも関わらずだ…。

二期に及ぶ安倍政権によって、この国の人々は物事をしっかり見つめ自分の頭で考える能力を奪われてしまったのだろうか?
官僚から主権者の国民までが忖度し同調し、善悪の判断さえ自分では出来ないような国民になってしまったのだろうか?


<すばる>

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