わくわくさせてくれる入口
直島(なおしま)は、瀬戸内海の小さな島で、岡山と高松の間に浮かぶ。船で岡山の海の玄関口の宇野港からは20分、高松港からは60分で結ばれている。
1980年代から福武書店(現ベネッセ)創業者が現代アートの拠点として育てるべく活動を始め、建築家の安藤忠雄も協力して少しずつ展示施設や作品を増やしていった。2010年からはトリエンナーレ(3年に1回)で「瀬戸内国際芸術祭」が周辺の島々を巻き込んで行われており、日本国内の大型芸術祭としてすっかり定着している。
島には多くのアート施設が存在する。年代もの建築の保存・修復に現代美術のインスタレーション(空間を芸術作品として表現)を組み合わせた「家プロジェクト」は、見ると古民家というモチーフと現代アートの相性が良いことがわかる。安藤忠雄設計で地下に自然光を取り入れて作品を鑑賞する「地中美術館」は、季節や時間によって光の色が変化するため幻想的な空間が魅力だ。
瀬戸内の明るい空にピッタリの外観
直島銭湯「I♥湯」もアート作品の一つで、大竹伸朗によるタイル絵やモザイク画が活気にあふれる明るい空間を作っている。銭湯なのでもちろん「入浴する」こともできる。
直島の玄関口の家浦(いえうら)港からは歩いて3分ほど。高いヤシの木と、ひらかなの「ゆ」の看板が目印で、いかにも南の島というファザードだ。
ワクワクさせてくれる入口のドアを開けると正面にはド派手な番台。オリジナルグッズがたくさん売られており、ミュージアムショップのようで楽しい。中でも目を引くのは「オリジナル・タオル」。ロゴをプリントしたタオルが7色から選べ、その場で使うにも土産にも買いやすい。
浴槽では象のオブジェが出迎えてくれる。湯船につかっていると壁や浴槽の底のモザイク画を見ていると、元気が出てくる。島民の利用者も多いようで、観光客とこの銭湯のオブジェの話で話が弾んでいた。よい交流の場になっている。
脱衣場にタブレット端末があったので驚いた。飲食店やエンタメ施設を中心に最近よく見かけるようになった「満足度アンケート」だった。私も「ご満悦!」と回答した。
港では草間彌生のカボチャがお出迎え・お見送り
島全体では「レストランやカフェが少ない」という印象を受けたが、家浦港近くにセブン・イレブンができており、観光地の利便性の指標となる「コンビニ」がクリアされた。家浦港のターミナルビルのデザインは斬新で、夏の直射日光を避けられるよう大きな屋根の配置が工夫されている。船を待つ間のドリンクやスナックにも、地元産品を活かした製品づくりのアピールを忘れてはいない。
瀬戸内の海は限りなく穏やか。
島からは瀬戸大橋も見える。
穏やかで明るくて島がいっぱいある海は、日本ではやはり瀬戸内だ。
日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。
「ここにしかない」名作に会いに行こう。
銭湯のアーティストがおもいを表現したビジュアルブック、ファンにはたまらない一冊
(青幻舎)
直島銭湯「I♥湯」
http://benesse-artsite.jp/art/naoshimasento.html(ベネッセアートサイト)
原則休館日:月曜日